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テクニカルレポート
2025.05.26
手軽にプラズマ処理を評価 『PLAZMARK』大気圧プラズマ用マーカータイプ
(株)サクラクレパス
津村 清子、 大城 盛作

①はじめに

1-1. 大気圧プラズマと評価

近年、大気圧プラズマ技術は、その簡便性からエレクトロニクス、自動車、医療など、様々な産業分野で活用が進んでいる。特に、部品の表面改質、洗浄、滅菌、接着性向上といった用途において顕著である。例えば、エレクトロニクス業界においては、半導体デバイスの接合 ・ 封止前洗浄やプリント配線板の表面処理、各種工業部品の接着強度向上のための下地処理、レンズのコーティング前処理などに大気圧プラズマが用いられる。自動車業界においては、車体軽量化のため樹脂材料が多用されるようになり、表面改質や下地処理のための表面処理方法として重要性が増している。大気圧プラズマ処理の効果は、処理条件や装置、被処理物の材質との組み合わせによって大きく変動するため、その効果を的確に評価することは容易ではなかった。

従来、大気圧プラズマ処理の効果を評価する方法は、接触角測定、ダインペン(濡れ試薬)評価、接着強度試験などが主であり、目的に応じてXPS(X線光電子分光法)やSEM(走査型電子顕微鏡)観察などの分析装置が利用されていた。これらは、操作に熟練や専門知識が必要とされ、詳細な情報を得られる反面、測定に時間とコストがかかり、簡便な現場での評価には適さないという課題があった。また、処理条件の最適化やトラブルシューティングを行う際、迅速なフィードバックを得ることが難しいという問題もあった。

 

1-2. 『PLAZMARK』

当社のプラズマインジケータ『PLAZMARK』は、プラズマ処理の効果を「色」の変化によって可視化する画期的なツールである。『PLAZMARK』は、プラズマ照射によって変色する特殊な試験紙であり、プラズマの照射状態や処理効果を簡便かつ迅速に評価することができる。その原理は、プラズマに対する有機色素の耐久性の違いを利用するタイプと、無機酸化物の酸化還元による変色を利用するタイプに大別される(図1)。

図1 『PLAZMARK』ラインアップ

 

本稿で解説する『PLAZMARK』大気圧プラズマ用の変色原理は前者であり、高耐久性の赤色色素と、ラジカルとの反応性が高く、分解や構造変化により消色する青色色素を組み合わせることで、プラズマ照射により青色からピンク色へと変色する(図2)。

図2 変色原理

 

『PLAZMARK』は2014年に真空プラズマ向け試験紙タイプの販売を開始、2016年に大気圧プラズマ用試験紙タイプと半導体前工程向けにシリコンウエハ上に直接成膜したタイプを販売、徐々にラインアップを増やしてきた。そして、2024年10月に当社の本業である筆記具の技術を活かした大気圧プラズマ用マーカータイプを発売した。

本稿では、大気圧プラズマ用インジケータの試験紙タイプとマーカータイプの特徴と利点、ダインペン(濡れ試薬)との違いにフォーカスして解説し、真空プラズマ装置向けのラインアップは説明を割愛する。

 

②大気圧プラズマ用試験紙タイプの特徴と利点

従来の試験紙タイプの『PLAZMARK』大気圧プラズマ用は、感度3段階、形状2種類の計6銘柄展開している。具体的なサイズは35×300mmで、貼り付け可能なロングラベル形状と210×300mmのシート形状がある。感度は、比較的強いプラズマ処理用の低感度(型式No.42)、一般的な処理用の高感度(型式No.41)、高速またはソフトな処理用の超高感度(型式No.40)をラインアップしている。

試験紙タイプは、評価したい場所に貼り付けたり置いたりして使用し、主にプラズマの分布を面で確認する。処理時間やプラズマの強度に応じて青色からピンク色へ連続的に色調変化するように設計されており、処理後のインジケータの色を目視確認することでプラズマの効果を定性的に評価できる。さらに、印刷物や成型物の色管理用に市販されている色差計を用いることで変色の度合いを数値化し、より定量的な評価を行うことも可能である。

試験紙タイプは、印刷物のため塗布ばらつきが無く、色差計を用いた数値管理に適している。色差計で測定した変色色差⊿E*abは、処理時間や出力、照射距離などのプラズマ処理強度に応じて大きくなる(図3)。この変色色差⊿E*abによる数値管理では、あらかじめ接触角やエッチング量との相関を確認しておくことで、色差⊿E*abから接触角やエッチング量を推定できる(図4)。 

図3 処理時間に対する試験紙タイプ(No.40、41、42)の変色色差⊿E*ab

図4試験紙タイプ(No.41)の変色色差と接触角の相関

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(株)サクラクレパス
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