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テクニカルレポート
2025.08.01
後回しにしないノイズ対策 ~システム全体のEMC検証ツールの最新動向~
(株) 図研
野村 政司、 武田 宏明、 小枝 孝也、 佐部利 亮輔、 古川 和樹

④エレキとメカを融合したEMC設計検証ツール 

前項でも述べたように、EMC設計は基板単体では完結せず、製品全体での検証が必要となる。

一般的に知られているEMC検証ツールは基板単体での評価には対応しているが、筐体を含めたセット全体での検証には対応していないことが多い。そのような課題を解決するために開発されたEMC設計検証ツール「3D EMC Adviser」は、CAD上でエレキとメカを組み合わせた製品全体でのEMC検証が可能である。

今回は、3D EMC Adviserに搭載されているルールのうち、特にイミュニティ対策に活用できるチェックルールを紹介する。

 

4-1.外来ノイズ干渉

本ルールは図5に示すように、コネクタから侵入した外来ノイズの経路に近接する誤動作リスクの高い回路を検証する。つまり、外来ノイズが通過する経路上に近い電子部品や配線パターンにノイズがどのように干渉するかを確認できる。

図6は、3D EMC Adviser「外来ノイズ干渉」で検出した表示例である。基板のコネクタから侵入した外来ノイズが、基板上の誤動作要因となる電子部品との干渉度合いを示しており、対象となる電子部品や配線パターンが干渉していればハイライト表示する。

このように、ノイズ経路に干渉する電子部品や配線パターンを視覚的に確認できる。そのため、ノイズ経路の見直しや部品配置の検討が容易となる

図5 「外来ノイズ干渉」チェックイメージ

図6 「外来ノイズ干渉」チェック

 

4-2. 安定GND接続

本ルールは、図7に示すようにICやコネクタの端子から安定GND(アース)までの経路長をインピーダンスに見立てて、ノイズを安定GNDへ逃がす経路を可視化し検証する。つまり経路が長いほど、ノイズのリスクが高まるため、この検証によりGNDパターンの安定性を評価することができる。

図8は、基板と金属シャーシを組み合わせたシステム設計データにて、3D EMC Adviser「安定GND接続」で検出した表示例である。

図7 「安定GND接続」チェックイメージ

図8 「安定GND接続」チェック

 

コネクタから侵入した外来ノイズがGNDパターンを通過し、金属シャーシとの接続部(ねじ止め個所)を介し、金属シャーシのアースまでの経路を示している。

このように、ノイズ源から筐体部分を含めたアースまでの経路が可視化されることにより、外来ノイズの経路が迂回しているかを直感的に判断することができる。そのため、基板のGNDと筐体のアースの関係を最適化するための設計改善が容易となる。

また、本ルールはイミュニティだけではなく、エミッションの改善にも効果が見込める。たとえば、ノイズ源であるICのGNDピンから安定GND(ベタGND面または筐体のアース)に接続する経路のインピーダンスが高ければ、放射ノイズ発生の要因となりうる。

経路長が長くなっている(インピーダンスの高い)個所を抽出することで、部品配置やビアの位置を検討する際に役立てることができる。

 

4-3. ハーネスノイズ干渉(仮称)

図9で示しているのは、現在開発企画中である、ハーネスからのノイズ干渉の検出を目的としたチェックルールである。

たとえば、電子部品の近傍にハーネスを配策すると、EMCの問題を起こすことがある。それは、電子部品とハーネスがノイズ結合することで様々なノイズ問題を起こすためである。そのため、ハーネスはノイズを発する電子部品から遠ざけて配策する必要がある。

この機能を実現すれば、基板設計の途中でハーネスの引き回しを考慮しながら部品配置を検討することができるようになる。つまり、設計のフロントローディング化に大きく貢献できるのではないかと考えられる。

図9 「ハーネスノイズ干渉」プロト版イメージ

 

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