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テクニカルレポート
2015.03.16
実装不良の原因と対策
(株)クオルテック

 

  また、炉中の風量や風向きに影響される可能性があることから、リフロー機種を変更した場合や風量を変えた場合も確認しておく必要がある。
 大型部品などが数多く搭載されリフローに時間を要する製品は、リフロー装置(N2の導入、VPSの使用)や耐熱性を向上させたソルダペーストの利用を考える必要もあろう。

②はんだ溶融温度付近の昇温速度を考慮する
 プリヒート時間、温度、コンベア速度、最高温度、はんだの溶融している時間などが、プロファイル条件で注目されるが、溶融温度付近の昇温速度に着目して条件設定されることは少ない。紹介できる事例は少ないが、昇温速度を遅くすることでチップ立ちの減少(チップ電極へのぬれ上がりを遅らせているためと推測)ボイドの減少は確認している。
 Sn3Ag0.5Cuは220℃付近で、はんだ粉から溶融はんだに変化する。短時間で固体から液体に変化し、拡散、接合、フラックス流出、ぬれ上がりなど多くの現象がほぼ同時に発生するため、このポイントは重要と考える。
 意図的に変更できるパラメータは昇温速度なので、これに着目して試験することが大切であると考える。昇温速度を変更し、ボイド発生状態を確認した試験結果を図18に示す。この結果では、昇温速度を下げるとボイドの減少が認められた。
 リフロー条件は、メーカー推奨や社内で決められたプロファイルに合わせることが目的ではない。自社製品の特徴、問題点、歩留まり向上などを考慮し、最適な方法を考えることが必要となる。

③無電解Ni/Auめっきでのはんだ付け不良
 リフロー問題とはいえないが、無電解Ni/Auめっき基板での、はんだ付け不良について記す。この現象は20年近く前から指摘され、多くの研究もされてきたが4)、現在も当社で扱う不具合の上位を占める。発生原因を以下に示す。

 •P濃化層の過剰形成(図19)5)
 •Auめっき浸食(図20)6)
 •マイクロボイドの形成

図19 P濃化層の過剰形成

図20 Auめっき浸食

  図21に無電解Ni/AuとCuのはんだ広がり状態を示す。Ni/Auは、はんだ付け性に優れた表面処理方法であるが、はんだ付け不良が突発的に発生することが大きな問題である。中国の基板メーカーへの依存が強まっていることも、この問題を長引かせている一因であろう。原因が判明しても対策できないことが多く、改善のためには、実際のめっき工程を見て、材料、水、工程、条件、管理方法などを細かく確認し、各基板メーカーに指導することが必要となっている。また、対策後に同じことが繰り返されることも多く、定期検査も必要となっている。基板のロット不良が発生すると大問題になるため、当社では、セットメーカの依頼を受け、多数の中国基板メーカーで改善や工程管理の活動を続けている。

図21 無電解Ni/AuとCuパッドのはんだ広がり状態比較

5.洗浄

  多くの製品でフラックス洗浄が行われていないため、洗浄の良悪を議論されることは少なくなっている。

 フラックス残渣は、ロジンを主成分として活性剤とチキソ剤を含む7)。したがって、洗浄液には、ロジン溶解性にすぐれる溶剤と親水性の活性剤の溶解性にすぐれるアルコールの混合液が良かろう。また、ロジンの軟化温度は80?90℃のため、洗浄温度は、それ以上もしくはできるだけ高い方が望ましい。その上で、搖動、超音波、スプレーなどの洗浄方法を取り入れる。

 以下にフラックス洗浄工程の選定フローを示す。

①洗浄可能なフラックスを選定する(メーカー確認で可)
②リフロープロファイル設定
 長時間加熱によりフラックスが洗浄しにくくなることを 考慮すること。
③洗浄液及び洗浄方法の選定、最適化

 表面実装を中心に不具合とその対策について概要を述べた。次回以降、各不具合の詳細について記す。

<参 考 文 献>

1)濱田正和、マイクロソルダリング技術、初版、日刊工業新聞社、p83、2002
2)高橋政典、ペースト印刷時の経時劣化解析とその試験方法、エレクトロニクス実装技術No.5、p34、2011
3)ジェニー・ウォング:エレクトロニクス・パッケージング用ハンダペースト、初版、工業調査会、p188、1992
4)山本、他、“無電解めっきを用いたBGAはんだ接合部の衝撃信頼 性の検討”など、MES2004、pp.77-80、2004
5)苅谷、他、“無電解Ni-P/Sn-Agはんだ接合部の界面組織と機械的 信頼性”、Mate2000、pp.217-222、2000
6)菅沼克昭、はじめての鉛フリーはんだ付けの信頼性、初版、工業調 査会、42、2007
7)高橋政典、はんだ付け用フラックスとは何か、エレクトロニクス 実装技術No.10,p41,2011

 

 

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