2. 注目される3D XPointメモリ
3D XPointメモリは、インテルとマイクロン・テクノロジー社が共同開発し、両社から2015年に大々的に発表された不揮発性メモリである。DRAMに比べて記憶密度が10倍、NANDフラッシュメモリに比べてアクセス速度が1000倍、書き換え寿命はNANDフラッシュメモリの1000倍といわれている。3D XPointメモリの構造は図6のように発表されているが、詳細な技術は発表されていない。業界ではある程度の推定は行われており、記憶部はカルコゲナイド材料の相変化メモリで、セル選択素子は米国の発明家オブジンスキーが1960年代に発見した「オボニック・スイッチ」といわれている。カルコゲナイド材料は、高温にすると合金(低抵抗)状態になり、徐冷するとアモルファス(高抵抗)状態のどちらかとなって不揮発性メモリとなり、電圧印加によって導通と絶縁
の2状態を検出するスイッチとなる。材料はゲルマニウム(Ge)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)の化合物(GeSbTe)である。
3D XPointメモリの用途として期待されるのは、ストレージクラスメモリである。
図6 3D X-point Memoryの構造
図7のように、現在のコンピュータのメモリ構成では、DRAMの動作速度に比べて、不揮発性のHDDは6桁近く低速で、NANDフラッシュメモリのSSDも低速で使いにくい。そこで、中間クラスのメモリが望まれており、この用途には3D XPointメモリが期待されている。筆者の勝手な想像であるが、3D XPointメモリの動作速度がもう少し速くなれば、DRAMに置き換える可能性があるし、コストが下がればHDDやSSDに置き換わる可能性もあり、用途によっては万能メモリになるかもしれない。その場合、不揮発性のメリットを生かしてパワーゲーティング回路などが導入できて省電力化も図れて画期的だと思われるが、暴論かな?
図7
3. その他の半導体
FPGA(Field Programable Gate Array)の2大メーカーの1社であるアルテアを167億ドルという巨額で買収した。FPGAは、フィールド・プログマブルすなわちLSIを買ったユーザーが自分で回路を製作できることが大きな特徴で、LSIの開発期間の短縮や多品種少量生産用に使われてきたが、今では超高性能プロセス技術で生産され、機能が充実しているので量産にも使われるようになってきている。インテルのCPUは、現在サーバー向けの分野で絶好調であるが、処理エンジンをマイクロプロセッサからFPGAに移行する動きが急速に進展している情勢である。
「インテル GO」にも、CPUとともにFPGAがボードに搭載されている。FPGAをマイクロプロセッサと電力あたりの性能を比較すると低消費電力であり、検索処理では約10倍速いといわれている。インテルは、世界最高レベルの微細化したLSIプロセス技術をもっているので、FPGAビジネスを伸ばして行くと思われる。
現在、集積度の多いことでは、3D-NANDフラッシュメモリが大きな話題で、某社は1Terabitの生産を開始すると発表した。インテルもマイクロン・テクノロジーと組んで、3D-NANDフラッシュメモリをビジネス化しており、中国に大工場を建設するらしく、大いに今後が期待される。
7. まとめ
インテルは人工知能の分野で、先日“Myriad X”を発表した。これは16個の128ビットのプロセッサで構成され、DNN(Deep Neural Network)の推論を高速かつ低電力で行うものである。人工知能は、ディープラーニングにより一大革命が起こりつつあるわけで、この分野でのインテルの活躍が今後とも期待される。
インテルは、これまで約40年間にわたって半導体業界を牽引し、エレクトロ二クス業界の発展に貢献してきたわけで、現在も超一流の技術を誇っている。今後、自動車、ロボット、バイオ/メディカルといった身近なテーマはもちろんのこと、将来を考えると世界の人口はいずれ100億人になり、しかも大部分の人が都市に住むといわれ、食料、水、電力、交通、住居など各種の社会インフラの整備が一大問題になると思われる。その時、半導体技術がどんな貢献ができるのか、将来にわたってインテルの指導的役割を期待したい。
- 会社名
- 厚木エレクトロニクス
- 所在地
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