ビジネスコミュニケーションを加速する
BtoB ニュース専門サイト | ビジコムポスト

テクニカルレポート
2018.09.07
半導体業界の話題(第1回)
エレクトロニクス業界を牽引するインテル(株)
厚木エレクトロニクス

 

4. 自動運転に注力

 

 自動車の自動運転の世界市場は2025年までに5兆円規模になり、2035年までに自動運転車両の販売が自動車全体の1/4になると言われており、自動運転は今後の半導体ビジネスの柱になることは間違いないと思われる。インテルはCES2017において「インテル GO」という自動運転ソリューションを発表した。5月には自動運転の研究開発拠点となる自動車研究所(Intel Advanced Vehicle Lab in Silicon Valley)を正式にオープンした。BMWらと開発中の自動運転車両を公開し、40台の自動運転車両を公道で走らせる計画を発表している。

 2017年3月には、モービルアイ社を153億ドル(1兆7500億円)という巨額の買収を行った。モービルアイ社は単眼カメラによる画像認識では事実上のデファクトスタンダードで、多くの自動車会社はモービルアイが開発したアルゴリズムと半導体のSoC(System on Chip)を採用している。イメージセンサでは、世界最高の品質を誇るソニーもモービルアイ社のシステムに対応した製品を共同開発している。

 運転をアシストするレベル3以下のADAS(運転支援システム)だけなら、カメラ、ミリ波レーダ、LIDAR、超音波などのセンサとAI(人工知能)で実現可能と思われるが、さらに高度化したレベル4以上の自動運転には、高精度な地図、路車間及び車車間通信(V2X技術と呼ばれる)は欠かせない。このためクラウドとの情報交換が必須となる。数年後には5G(第5世代の通信)が実用化され、高速で大容量のデータ通信も必須となる。自動車メーカーは、クラウドへの接続サービスについて、車載システムのプラットフォームの他、通信系のプラットフォーム、クラウドプラットフォームに関する技術を備える必要がある。「インテル GO」により、自動車、コネクティビティ、クラウドという3つのプラットフォームを統合したシステムの開発が可能になり、完全自動運転の実現を加速させることになると思われる(図2)。インテルGOは、走行中の周囲の状況把握、道路状況や規制などの関連情報の統合、それらに基づく自動運転の機能の実現を可能するための開発ツールである。

 自動運転については、GPUに強いエヌヴィデアや、通信に強いクァルコムなどが注力しており、インテルのGOとのし烈な競争となりそうである。

図2 「インテル GO」自動運転ソリューション

 

5. ワイヤレス関連のロードマップを発表

 

 インテルは昨年11月、5G(第5世代移動通信)および高度なLTEチップの発表を行い、この分野で先行するクァルコムを追撃し始めた。CDMA(Code Devision Multiple Access)とギガビット/秒(Gbps)に対応するベースバンドチップXMM7650を開発した。いっぽう、XMM7660は、データ転送速度は最大1.6Gbpsで、間もなく出荷される。アップルはクァルコムとの法廷係争があって、iPhoneのLTEベースバンドチップにインテル製を採用しはじめたといわれている。

 インテルの製品は、バイオ関係や多くの産業界に貢献しているが、紙面の都合でここまでとし、次に半導体関係の話題を取り上げる。

 

 

6. 次々に革新的な半導体素子を開発・生産

 

1. FinFETの量産を開始

 LSIの進歩はとどまるところを知らず、まだまだムーアの法則に従って集積度が向上すると思われる。インテルのこれまでの集積度向上の様子は図3に示す通りほぼ2年で2倍のペースで、①LSI微細化による集積度向上と、②回路上の工夫の成果、である。CMOSが微細化されると(正確にいえばチャンネル長が短縮されると)、ゲートの電圧がチャンネル下部を制御できなくなり、ソースからドレインに漏れ電流が流れてしまう。これをショートチャンネル効果といって、MOS微細化を阻害する大問題であった。それを解決する策としてFinFETが開発され、インテルが世界に先駆けて量産を開始した。

図3 インテルのLSI集積度の変遷

 

 図4は、ショートチャンネル効果の説明と、FinFETの構造である。インテルは昨年12月のIEDMで10nmプロセスを発表したが、ゲートの上にコンタクトを設けるCOAG(Contact over active Gate)構造で、パターニングにはSAQP(Self Align Quad Patterning)を用いている。

図4 ショートチャンネル効果の説明と、FinFETの構造

 

 SAQPについては、図5のようにCVDとエッチングを用いてパターン寸法を1/2にし、これを2回繰り返して1/4にするわけで非常に手間がかかるが、波長が13.5nmのEUVが実用になるまで10nmオーダーの微細化には必須の技術であり、各社が開発にしのぎを削っている。

図5 SAQP(Self Align Quad Patterning)

 

会社名
厚木エレクトロニクス
所在地