天体望遠鏡など独自のコア技術を活かした天文機器の応用から、宇宙開発／産業機器／医療機器／太陽エネルギーなど幅広い分野に事業展開している三鷹光器株式会社。現場のニーズを反映するため、創意工夫を繰り返しながら製品開発に取り組む同社の概要と製品などについて、代表取締役 中村 勝重 氏にお話を伺った。

御社の概要についてお聞かせ下さい

　　中村：当社は1966年5月に創業し、主に天体望遠鏡などの天文機器と、その応用技術から宇宙開発に関連する機器の開発を中心に事業展開してまいりました。
天体望遠鏡は、屋外の過酷な環境でも長時間にわたり“精密”を維持しなくてはならない精密光学機器です。当社は、この天体望遠鏡という精密光学機器に携わっていくことで、温度変化があっても精密を維持することのできる光学系とメカの基礎技術を培ってまいりました。
　　天文学者がロケットや衛星などで宇宙を観測し、宇宙飛行士がスペースシャトルで宇宙に出ていく時代になると、さらに過酷な宇宙環境に対応する、熱設計や振動対策の研究を進めるとともに、微弱な光を電気に変えるという新たな技術を導入していくことになりました。今までは光とメカでしたが、光高感度センサが開発されたことで研究開発の幅が広がり、様々な経験を積み重ねることができました。
この技術を宇宙開発関連だけでなく、産業分野に活かせないかと考え、その一つとして自動制御技術を応用した非接触三次元測定装置の開発に着手し、産業機器分野にも参入していきました。その後、当社の非接触三次元装置の原理が非常にユニークであると世界で評価され、“ポイントオートフォーカス法”と命名され、2010年ISO-25178（三次元形状・表面粗さの国際規格）に登録されています。装置自体は、非球面レンズや金型を百万分の1mm（1ｎm）の精度で測定できるため、半導体関連や超精密加工分野などに広く普及しており、高い評価を得ています。

 

写真1 脳神経外科手術用顕微鏡スタンド

　天体望遠鏡の技術応用は、産業機器分野のほかに医療機器分野でも行っております。医療機器分野では、ライカマイクロシステムズ社と技術提携し、脳神経外科のドクターの声を反映してオーバーヘッドタイプの手術用顕微鏡スタンドを開発しています（写真1）。同製品は、国内だけでなく世界中の脳外科医に評価され、特に米国市場では高いシェアを維持しております。また、ライカマイクロシステムズ社には技術提携だけでなく、海外での代理店業務と製品のメンテナンスなどもお願いしております。
さらに、10年ほど前から太陽エネルギー分野にも注目し、研究開発を進めてまいりました。今年の3月に発生した東日本大震災の影響による電力不足などの問題を含め、今後の電力供給に対する早期解決に貢献させて頂くためにも、力を入れていかなくてはならない分野であると位置付けております。
当社の経営理念の一つに、「設計図は現場にあり」という言葉があります。これは、当社が携わるすべての製品にいえることですが、当社にはマニュアルはなく、すべて現場において困っている声を吸い上げ、その問題を解決するために創意工夫を繰り返すことで、当社独自のノウハウを確立し、製品開発に繋げております。

 

御社の産業機器分野における製品についてお聞かせ下さい

　中村：測定精度を極めた分解能1nmの高精度モデルで、ミリからナノまでをダイレクトに測定できる非接触三次元測定装置『NH-3SP』を開発致しました（写真2）。主な仕様は、測定範囲（X、Y、Z）：150x150x10mm（オプションにて、Z：130mm）、分解能（X、Y、Z）：0.01×0.01×0.001µm、など。測定応用例として、非球面レンズ、金型、マイクロレンズ、液晶導光板などの形状、MEMS関連、表面のきず／欠陥測定などに適しており、販売当初より超精密加工分野で広く活躍しております。
　また、当社の非接触三次元測定装置『NHシリーズ』で長年培った技術を基に、ワークの全周を測定できる非接触輪郭形状測定機『MLP-2』を開発致しました（写真3）。この製品は、当社独自のレーザプローブ式オートフォーカスユニットの大幅な小型化を実現した測定機です。高精度の5軸ステージとの組み合わせにより、あらゆるワークのサブμm形状測定が可能です。完全非接触のためワークを傷つけることがなく、測定点を確認しながら測定を実行することができ、初めて使用される方でも簡単に測定／評価が行えます。輪郭形状測定機能／表面粗さ評価機能／寸法評価機能／JIS準拠の歯車評価機能（オプション）／真円度測定機能（オプション）／エンドミル寸法評価機能（オプション）など、測定機能も充実しております。

 

 写真2 非接触三次元測定装置『NH-3SP』

 

写真3 非接触輪郭形状測定機『MLP-2』

 

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