『導入実績がない』という欠点を克服
「大阪の会社が、24時間稼働の自動車部品のラインに対し、アフターサービスができますか」と、三河にある車載用センサの生産技術課長から真剣な眼差しで問いかけられた。これに対して、「問題ありません、ご心配でしたら携帯電話を24時間オープンにしておきます」と私は答えた。
2010年6月に導入を決意していただき、以来生産数80万台、不良『0』を続けていたその記録が、1年経った先月、ついに『1』を記録してしまった。担当主務から「残念です」という一報が入る。
2009年1月28日?1月30日の3日間にわたって、東京ビッグサイトで開催された第38回インターネプコンジャパンでメジャー初デビューした定量スポットはんだ付け機『アクエリアス』は、はんだ付け個所1点1点を最適な条件ではんだ付けし、セラミックスの筒中ではんだ付けするので、はんだボール、フラックスの飛散を封じ込める。また、壁際や狭小空間でもノズルが入りこむ、『アクエリアス』しかできないはんだ付けも反響を呼んだ。しかし、3日間で423人もの方にご来場をいただいたのだが売れない。売れるのはカタログだけだった。
ただそんな中、車載部品メーカーだけは有償評価サービスをご利用いただき、1つ1つの本工法の見きわめて、科学的な評価を実施してくれた。評価の過程で様々な問答を繰り返したが、結果的に定量スポットはんだ付け機の工程能力を高めることとなった。
「おもしろい製品だが、怖くて手が出せない」という、後付け異形部品のはんだ付けで苦労してきた技術者たちの本音も耳にした。そこで「おもしろい」というだけで買っていただいたイノベータたちからの生の声を装置に反映した。
「掃除の際にノズルを折ってしまって」と、パートタイマーの女性から真っ青な顔で訴えられた。「それじゃ売れんで」と、装置内でのオートクリーニングを開発した。また「オートクリーニングとブラシ清掃だけでは残渣が取れないんです」と、フラックス含有量を間違って4%の物を選定したお客さんは、維持管理インターバルが短く不良が多発した。そこで、「理由はともかく、簡単に清掃できる、誰でも同じ品質で清掃できる物を開発しよう」という理念から、セラミックスノズルを新品同様に復活させることができる『よみがえり君Turbo』を世に出すことにした。
ノズルの材質も当初90W/(m・K)、今は170W/(m・K)を標準とし、210W/(m・K)もラインナップしており、ヒータユニットも熱引き要因であった箇所を改善し、30%パワーアップを実現した。ユーザーからの「ヒータユニット交換の際にねじを下から外すのはいただけないですね」という一言でツールレス化を実現するなど、ただのアイデア商品で終わらせないための改善を積み重ねた。
2009年デビュー以来3年で、各工場に60台弱が納入され、日々24時間稼働中である。販売先の80%が車載向けである。
この製品については、本誌2010年8月号で、『最大の欠点は実績がないこと』と書いたが、勇気あるお客様の熱い情熱によって、その高いハードルを越えて実用化に成功したのである。
定量スポットはんだ付け機『アクエリアス』とは?
図1 セラミックスノズル内ではんだ付けをする
図2 上面をみれば基板裏のはんだ付け状態が判明
1. 工法説明
本製品は、1点1点温めたセラミックスの筒の中で母材を予熱し、定量はんだを溶融させる工法で、糸はんだ及びフラックスは母材に到達するまで溶けない。
2.簡単な工法だがメリットが大きい
(1)高品質はんだ付けが可能
1点1点の熱引きに応じてはんだ付け条件が変更でき、a.熱伝導b.輻射熱c.対流熱という熱伝導の三原則をすべて利用しているトリプル加熱(図1)によって効率のいい予熱・加熱が可能となり、パワフルなはんだ付けを実現。また、定量供給により、上部のはんだの品質をチェックすることで裏面のはんだ品質をもチェックすることが可能となっている(図2)。
(2)はんだボールを封じ込めている
筒の中でのはんだ付けを実現。ヒートショックによるはんだボールやフラックスの飛散は筒の中に封じ込められている。また、必要量の糸はんだを切断していることや事前供給される際に適度に予熱されていることで、ヒートショックが発生しにくいメカニズムとなっている。はんだボールによる2次不良、フラックス飛散による汚れは未然に防ぐ。
(3)簡単操作
職人技を共有し、スピーディーなはんだ付けを可能している。
①マージンが大きくはんだ条件出しが簡単
2年間3万ショットにも及ぶはんだ付け評価結 果や評価作成したプロセスウインドウが他の工法より大きいことで、条件が比較的求めやすいという評価をいただいている。
②維持管理が簡単
ロングライフの消耗品、ノズルは1,000万ショット、切断刃具は1,000万回、ヒータは実負荷時間1万時間以上の実績がある。また、ヒータユニットやノズル交換時の再現性にすぐれている。
③機構が簡単
はんだ送り、切断、供給部の機構が単純で部品点数も少ない。装置の心臓部であるはんだ付けヘッドの機構はシンプルで、重大な故障が発生したとしてもヘッド交換ですぐに生産を再開できる。
④操作が簡単
対話式ではんだ条件(座標:X/Y/Z・はんだ長さ・ノズル温度・予熱時間・加熱時間)を入力、すべてデジタル化しているので変更が簡単に行える。
- 会社名
- (株)PARAT
- 所在地
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