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テクニカルレポート
2024.05.21
プリント配線板の将来性
特定非営利活動法人 サーキットネットワーク
梶田 栄

④PWBの技術動向

最新のPWBの技術動向には以下のようなものが考えられる。

 

(1) 高密度化と高速信号対応化

  デジタル化(DX)の進展に伴い、より高密度で高速な信号伝送が必要となる。これに応じて、PWBの設計や製造技術が進化し、高速データ通信に必要なマイクロストリップ線や低誘電材料を用いた高周波信号対応の複雑で高密度のPWBが開発されている。

PWBの高密度化は、現在の電子機器の小型化や高性能化にとって非常に重要な要素である。高密度化は、同じサイズの基板上により多くのコンポーネントや配線を配置することを意味している。これにより、電子機器の機能を向上させ、よりコンパクトで効率的なデバイスを実現できる。

以下、PWBの高密度化に関するいくつかの重要なポイントを述べる。

 

① 微細化の進展

PWBの高密度化は、主に電子部品小型化による部品間ピッチの矮小化とトレースの微細化によって実現される。現在、PWBの製造技術は微細化が進んでおり、より狭いピッチや細い配線を実現するためのプロセスや材料が開発されている。現在部品間ピッチは数十μm程度にまでなっている。

穴明け技術も重要であり、現在レーザマイクロ穴明け技術が普及している。これはPWBの微細化や高密度化に対応するための重要な技術であり、従来の機械式ドリルでは難しい、より小さな穴の作成や複雑なパターンの切削が可能となる技術である。これにより高密度の配線を実現することができる。さらに微細化が必要なところには、UVレーザマイクロ穴明け技術が開発されている。これは高精度で微細な穴の作成に適している。今後は、さらなる進化や改良が期待され、PWBの高密度化や高性能化に対応するための新たな解決策となる可能性がある。

 

② 積層技術の進化

現代のPWBは、複数の層を積み重ねた積層基板が一般的である。積層技術の進化により、同じ基板面積内でより多くの配線層をもつことが可能になり、高密度化が実現されている。

 

③ 実装技術の進歩

  表面実装技術(SMT)やボール・グリッド・アレイ(BGA)などの実装技術の進歩も、PWBの高密度化を支えている。これらの技術は、より小型の電子部品を基板上に配置することを可能にし、配線の密度を増加させている。

 

④ 設計ツールとシミュレーション技術

  高密度PWBの設計には、専用の設計ツールやシミュレーション技術が必要となる。これらのツールや技術は、配線やコンポーネント配置を最適化し、設計上の問題を事前に発見して修正するのに必須である。

 

⑤ 新素材の開発

高密度PWBの製造には、高性能な基板材料が必要である。近年より高い信号伝送速度や熱伝導性、耐久性を備えた新しい基板材料が開発されており、これらの材料の採用により高密度化が推進されている。

 

(2) 柔軟性と薄型化

携帯電話やウェアラブルデバイスなど、様々な電子機器の薄型化や曲げ可能性が求められている。これに応じて、フレキシブル基板(FPC)などの柔軟性をもつ基板が開発され、製品の薄型化やデザインの多様化が進んでいる。

 

(3) 高信頼性の確立

自動車や航空機などの厳しい環境下での使用においては、PWBの高信頼性と耐環境性が求められる。特に最新の超細密加工であるマイクロビアをもつPWBの信頼性確保などは重要な課題である。最新の技術では、高温・高湿度下での信頼性評価や、耐薬品性・耐衝撃性などの特性をもつ基板が開発されている。

 

(4) 省エネルギーと環境対応

脱炭素化の要求が強まる中、グリーンエネルギーの普及や省エネルギーの重要性が問われている。PWBの製造プロセスや材料の選定においても、エネルギー効率や環境負荷の低減が求められる。たとえば、低温焼成プロセスやリサイクル可能な材料の使用などが検討されている。製造プロセスでは、効率的な化学薬品の使用や溶剤の使用量を削減すること、リサイクル、代替物の探索などが挙げられる。

 

(5) めっき技術

PWBにおけるめっき技術は、主に次のような目的で使用される。

 

① 導電性の向上

めっきはPWB上の導体表面に均一な導電性層を形成することができる。これにより、電気信号の伝送が改善され、信号のロスやノイズが減少する。

 

② 耐食性の向上

めっきはPWB上の導体を酸化や腐食から保護し、耐食性を向上させる役割を果たす。特に、外部環境からの影響を受けやすい屋外用や産業用のPWBでは、耐食性が重要となる。

 

③ はんだ付け性の向上

めっきは、PWB上の導体表面にはんだ付けを容易にさせる。はんだ付けに適しためっき層は、はんだの流れや拡散を助け、高品質なはんだ付け接合を形成する。

 

④ 防錆処理

PWBの導体部分が金属製である場合、めっきは酸化や錆びを防ぐためにも使用される。これにより、PWBの寿命や信頼性を向上させることができる。

 

(6) AIと自動化

  PWBの設計や製造において、AIや機械学習などの技術が活用されている。これにより、設計の最適化や製造プロセスの効率化が図られている。また、自動化された検査システムやロボットによる組み立てが導入され、品質向上や生産性の向上が図られている。

 

以上のように、最新のPWB技術では多岐に渡る各種先端技術が取り入れられており、あらゆる電子機器の要求に対応できるよう進化している。

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特定非営利活動法人 サーキットネットワーク
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