3.AE(音)に関連する単位としての音圧とは
ここでは、AE(音)に関連する単位としての音圧についてみてみる。
一般に、音は大気圧の微小な圧力変化であるところから物理量を音圧(sound pressure)といい、単位はパスカル[Pa]である。
音の強さは、次式(1)に示すように音圧レベル(SPL:sound pressure level)で表される。
SP==20log10(P/P0) [dB] ・・・(1)
これは基準音圧値P0に対するデシベル値[dB]で、図4に示すように l[kHz]での最小可聴音圧(ヒトが聞きうる最小の音圧)20 [µPa]が用いられる。
つまり、最小可聴値を基準値として音の大きさをデシベル値[dB]で表すと0~140 [dB]で扱うことができる。
人間の聞くことのできる音圧は20 [µPa(10-6Pa)]から200 [Pa]と1000万倍にもなる。
また、人間が感じる音の大きさは音圧の対数に比例するという法則がある。
一方、人間の耳の感度は周波数によって異なり、同じ音圧の音でも周波数が異なると大きさが違って感じられる。
ある音が1 [kHz]の音圧レベルP[dB]の音と同じ大きさに感じると、その音は音の大きさ のレベルP phon であるという。
この「音の大きさ」は、「音の高さ」と「音色(timbre)」とともに後述の「音の三要素」の一つである。
図5は純音の音の大きさのレベルと周波数の関係を示しており、この曲線を等感曲線(isosensitive curve)という。
図5から音の物理量と感覚量とは一致せず、複雑な関係をもっていることがわかる。
図4 音圧のいろいろ(リオン(株)提供)
図5 音圧レベルと周波数(リオン(株)提供)
4.音の三要素
音には、①音の大きさ、②音の高さ、そして③音色という「音の三要素」がある。
①については、図6に示すように音を振動の面で見た場合、同一の周期の条件下で、音の大きさが大きいのは振幅が大きく、逆に小さいのは振幅が小さい。
上述したように単位は[dB]で表す。
②の音の高さとは、図7に示すように同一の振幅の条件下で、1秒あたりのくり返し回数を示す周波数(振動数)で表され、高い音は周波数が高く(振動数が多い) 低い音は周波数が低く(振動数が少ない)なる。
周波数をあらわす単位はヘルツ[Hz]という単位が用いられる。
音の大きさや高さが同じであっても、例えば、ピアノとギターでは音色が違う。
これは、ピアノとギターでは音の波の形が違うからである。
このように、③の音色は音の質を表現するために用いられる用語で、音波の波形に関係するもので、音の大きさや高さに比べて複雑な属性で、定常的で周期性のある音の場合には、音色は主としてその音を構成する各部分音の周波数と音圧とによって規定される。
最後に、音は、たとえ1つの音であっても色々な周波数の音を含んでいて、それらが合成された複雑な振動となっている。
詳細は後述するが、センサで得られたAE信号も音であり、複雑な合成音になっている。
このような音の波形を分解、解析(フーリエ変換(※8))すると、音を構成している周波数成分に分けることができる。
このようにして分解したものを、音のスペクトル(※9)という。
各周波数成分のうち、最も周波数の低いものを基音、それ以外を上音という。
このうち、通常は基音の周波数がその音の「高さ」として聞こえ(例外については後述)、上音にどのような周波数の音がどのくらいの強さで含まれているか、が音色の違いとして聞こえる。
(※8)フーリエ変換は、19世紀仏国の数学者・物理学者ジョゼフ・フーリエが次元解析として創始した実変数の複素または実数値関数を別の同種の関数に写す変換で、英語でFourier transformと表記され、 FTと略される。フーリエ変換により,得られた信号の重要な特性としてその信号の周波数成分(スペクトル)を明らかにすることが可能となる。つまり、フーリエ変換でスペクトルを分析でき、AEの信号源を同定したり,その特徴的なパラメータを抽出してパターン認識が行える。
(※9)スペクトル(spectrum)とは、複雑な波形や信号をその成分に分解し,各周波数の成分ごとの大小に従って配列したもので、2次元や3次元的に図示され、その図自体のことをスペクトルともよぶ。
図6 音の大きさの説明図
図7 音の高さの説明図
- 会社名
- (株)武藤技術研究所
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