ビジネスコミュニケーションを加速する
BtoB ニュース専門サイト | ビジコムポスト

テクニカルレポート
2016.01.19
デカップリング用コンデンサ容量設計と電源ライン実装設計
(有)イー・コンポーネンツ

 

はじめに

   電源供給ラインにおいて重要な役割をもつデカップリングコンデンサをプリント基板上に配置する場合には、いくつか問題点が生じてくる。そこで今回は、この問題点について、設計面から検討をしていくことにする。

 電源供給ラインにおけるデカップリング用コンデンサの基本的な働きは二つある。1つは負荷回路動作の急激な電流変化に伴う電源電圧変動を抑える点であり、1つは電源源供給ラインを通して回路間の干渉防止を行なう点である。ここでは前者に付いて取り上げる。

 なお、私はかつて(株)福井村田製作所セラミックコンデンサ商品技術(設計/販売/標準化技術)に携わり、現在では(有)イー・コンポーネンツにおいて受動電子部品技術教育/技術相談に従事している。本稿が読者諸氏のご参考となれば幸いである。

図1 電源回路部から負荷回路部までの等価回路

デカップリング用コンデンサの役割と基本動作

  デカップリング用コンデンサは、電源側及び負荷のIC側に配置され、それぞれ電源側デカップリング用コンデンサ、IC側デカップリング用コンデンサと呼称される。図1に電源回路部から負荷回路部までの等価回路を示す。

 電源の出力側に配置する電源側デカップリング用コンデンサは、全ICに伴う急激な電圧変動を低減させる働きをもっている。一方、負荷側ICの直下に配置するIC側デカップリングコンデンサは、個々のIC動作電圧変動を低減させる働きをもっている。したがって、IC側デカップリング用コンデンサの特徴は、個々のICの電源のようにふるまう点である。

電源電圧変動を抑える電源供給ラインの基本設計

1.トータル電源電圧変動の構成

 負荷がオフからオンに立ち上がったとき、オンからオフに立ち下がったときの電源回路出力部から負荷となるICまでのトータル電源電圧変動は次式のようになる。

  トータル電源電圧変動 ΔV =

  電源側デカップリング用コンデンサの充電または放電による電圧変動 ΔVCDB  +

  電源出力部からIC入力部までのプリントパターンインダクタンスによる電圧変動 ΔVPL

■備考
 1:電源側デカップリング用コンデンサとIC側デカップリ ング用コンデンサのESR(等価直列抵抗)による電圧降下はない。同じ値の充電電流と放電電流によって打ち消 されるためである。
 2:電源出力部からIC入力部までのプリントパターン抵抗 による電圧降下は、抵抗値が極めて低いためにゼロとみなせる。

2.各構成要素の算出条件
 トータル電源電圧変動の算出にあたっての各構成要素の算出条件は次のようになる。

①電源側デカップリング用コンデンサの充電と放電
 電源側デカップリング用コンデンサの充電電荷は、平滑用コンデンサの放電電荷によってまかなわれる。
 電源側デカップリング用コンデンサの放電電荷は、全IC側デカップリング用コンデンサの充電電荷に充てられる。
 電源側デカップリング用コンデンサの充電または放電電荷量は、全IC側デカップリング用コンデンサの1充電または放電時間の最大値(低周波側または低速側)の数倍(例として5倍で算出した)の時間をまかなう電荷量とする。

②IC側デカップリング用コンデンサの充電と放電
 IC側デカップリング用コンデンサの充電電荷は、電源側デカップリング用コンデンサの放電電荷によってまかなわれる。
 IC側デカップリング用コンデンサの放電電荷は、ICの充電電荷に充てられる。
 IC側デカップリング用コンデンサの充電または放電電荷量は、ICの1充電または放電時間の最大値(低周波側または低速側)をまかなう電荷量とする。

 

3.電源電圧変動の許容範囲電源電圧変動の許容範囲は次による。

 電源側デカップリング用コンデンサの許容範囲

 ΔVCDB:電源電圧の1%以内

 IC側デカップリング用コンデンサの許容範囲

 ΔVCDS:電源電圧の1%以内

 インダクタンスによるスパイクノイズの許容値

 ΔVPL:0.1V以下

 

会社名
(有)イー・コンポーネンツ
所在地