(5) 技術特性や制約
局所的ではあるが、強力な磁界を発生することで、電磁調理器(IH調理器)が登場した際にも健康リスクが話題となった。また、電子部品にIHを使用する場合には部品破壊が懸念される。
1.健康リスク
電磁波の健康リスクに関しては、ICNRP(国際非電離放射線防護委員会)からの電磁界(電磁波)に関する健康リスク評価の曝露ガイドラインが策定されている。実際に測定した結果を表2に示し、100mm以上離せば、公衆曝露の閾値以下となり安全性が確認された。また、IPHを指定された条件下以外ではOffにするため、より安全と考える。
なお、ペースメーカなど医療機器を装着されている場合は、担当医の指示に従っていただきたい。
2.電子部品への影響
電磁誘導により、各種電子部品で発生する誘導起電力による破壊や、周辺部品への影響が懸念される。代表的な受動部品や水晶振動子、ロジックICをテスト基板にはんだ付けして特性を確認した(写真5)。
たとえばコンデンサであれば、静電容量の変化をIH曝露後で部品公差内であるか、誘電正接(tanδ)の変化がないか。アルミ電解コンデンサの場合は、ボディに異常な発熱がないか、などの各部品の特性確認を行った。
コイルであれば、インダクタンスとQ値の変化に加え、誘起電圧の測定を行った。
結果としては、コイル自体の特性変化はないが、誘起電圧が大きいことがわかった。想定内ながら特に巻数や巻線径などで影響度の違いもあるが、磁気シールドのないドラムコア(写真6 ① ②)の場合が大きく、シールドのあるドラムコア(写真6 ③)は、影響がやや軽減され、トロイダルコア(写真6 ④)など閉磁路のものは影響が少ない。いずれにしてもコイルの近くをIPH-Onではんだ付けする場合は、注意を要する。
配線パターンからの誘起電圧の確認も実施した。φ20mmの1回巻きの配線では、最大で350mVピークが確認された。これは、完成基板の特性や動作チェックなどのインサーキットテスタなどで使用するレベル以下のため配線の引き回しでの影響がないと考える。
特に注意を要する部品は、コイル(インダクタ)、トランス、電磁リレー(SSR除く)、ホール素子、磁気抵抗メモリ(MRAM)など、磁気特性を利用した部品で誘起電圧や磁気飽和に対して注意する。
これらの部品やその近くをはんだ付けする場合は、次のような注意を要する。
・誘起電圧で影響を及ぼす回路に耐電圧に影響する部品が接続されていないか
・IPH機能をOnする場合は距離を置く(約20mm以上離す)
・コイルのボディ(巻線部やコア)に近づけずに周辺ランドをIPHで加熱し、はんだ付けリードに熱伝導するなどの工夫をする
・はんだ付け時に外付け磁気シールドを置く
・基板設計時に、磁気結合を避ける向きに部品を配置する
対応方法については、多種多様な部品や基板があるため継続して確認を行っている。
④おわりに
IPHによる効果が確認され、2024年1月のインターネプコンJAPANにて本技術を発表させていただき、多くの問い合わせや評価依頼が殺到している。ぜひユーザー様の基板で効果確認を体現いただければと考えている。そのほか新たな技術情報は、別の機会で提供予定である。
当社セレクティブフロー槽の噴流ノズルは、内径φ2〜φ20mmを標準でラインアップしている。これに対して、IPH加熱ヘッドは、現状1種類で最大内径φ10mmの噴流ノズルまでの対応となっている。これより大きなノズルで広範囲に一括はんだ付けしたい場合は、内径の大きなものを用意する必要がある。現在の加熱ヘッドは、従来の窒素(N2)フードより少し大きい程度に収めたが、周辺に部品がある狭い個所へのはんだ付けで、IPHで対応したいとのご意見をいただいた。現在、後者の検討を進める中で、前者も包括的に対応可能なようにヘッドの検討を進めている。
また、セレクティブフローとIH加熱の双方のメリットを活かすことを実施したが、まだまだ課題も多く、さらに改善を図っていきたい。
<参考文献>
1)ICNIRP GUIDELINES FOR LIMITING EXPOSURE TO
ELECTROMAGNETIC FIELDS(100kHz to 300GHz)
International Commission on Non-Ionizing Radiation
Protection(ICNIRP)
- 会社名
- (株)弘輝テック
- 所在地
- 埼玉県川越市芳野台2-8-40
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