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テクニカルレポート
2019.05.24
シリーズ さまざまな研究所を巡る(第6回)
鉄道総合技術研究所(その1)
厚木エレクトロニクス

 

3.空気抵抗ブレーキ

 地震などの緊急時における高速で走行中の新幹線の停止距離を短縮することは非常に重要なので、図4のような空気抵抗を利用した小型のブレーキ装置を研究している。

 試作機を用いた風洞試験により、従来よりも装置の大幅な小型化と、最適配置による編成全体でのブレーキ力向上が可能になり、抵抗板からの渦励振が小さく、走行安定性や地上設備への影響が抑えられている。

 本装置が既存の電気ブレーキやディスクブレーキの高速時におけるブレーキ力を補完することで、車輪・レール間の摩擦力によらず、安定したブレーキ力が得られ地震などの緊急時における高速からの停止距離の短縮を目指している。


図4 空気抵抗を利用したブレーキ(図は鉄道総合研究所の提供によるもの)


4.回生ブレーキ

 走行中の列車は車輪や車軸は回転しているので、その回転を利用して発電するもので、電力が取り出されるだけでなく、ブレーキとしての作用も利用されている。

 ただし、この技術は以前から実用されていて鉄道総研で開発したわけではない。

 筆者の極端な意見であるが、列車が駅を出発してある速度に達しモータへの電力を切ったまま次の駅まで走った場合、線路との摩擦や向かい風の抵抗がなく、回生の効率が100%なら、列車を駆動した時のエネルギーをほとんどすべて回収できて電力ゼロで走行できることになる。

 自動車業界で注目されている電気自動車でも航続距離を伸ばすため必須の技術となっている。

 


3. パンダグラフ

 

 現在の電気鉄道は、電気のエネルギーでモータを回し、車輪を回転させている。

 新幹線は交流2.5万V、在来線は交流2万Vもしくは直流1500V、750Vであり、地上を走行する電気鉄道では図5のように上方に張られたトロリー線にパンダグラフが接することにより得ているのはごぞんじの通りである。

 パンダグラフの大きな問題点の一つとしては、200㎞/h以上の高速鉄道では主要な騒音発生源の一つになっていることである。

 このため、新幹線用パンダグラフは空力騒音が発生しにくい形状となっており、さらに16両の長い列車でもパンダグラフはたったの2台となっている。


図5 トロリー線とすり板(図は鉄道総合研究所の提供によるもの)

 


4. トロリー線

 

 トロリー線にはパンタグラフ通過のたび曲げひずみが発生し、列車の速度向上などに伴ってトロリー線が疲労する恐れがある。

 その対策として、トロリー線の断面形状を変更してひずみを低減することを検討した。

 図6に断面を示すように、円に対して金具でつかむための溝を設けたものが一般的であるが、パンダグラフが通る度に曲がりが生じてひずみが発生する。

 下面(摺動面)は、疲労き裂が生じても摩耗で除去されるので破断に至る懸念は小さい。

 ちなみに、パンダグラフが1万回通過して摩耗は0.01mm程度である。

 上面に発生するひずみが問題になり、風洞試験も交えて検討されている。

 現在は同図のような断面形状のトロリー線が用いられている。


図6 トロリー線の断面(図は鉄道総合研究所の提供によるもの)

 

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厚木エレクトロニクス
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