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テクニカルレポート
2015.04.16
オンチップ電源
前田真一の最新実装技術あれこれ塾
(株)日本サーキット|KEI Systems

 

 基板上に電源を配置すると、基板配線やビアがもつL成分のため、LSI電源の変動を完全に抑えることはできません。このため、現在は、よりLSIに近いパッケージ上にコンデンサを載せたり、さらにはLSI内部にまでコンデンサを作り込んだりして対応しています。

 LSI内部に電源装置をもたせることができれば、配線やビアのもつL成分の影響がなくなり、電源電圧安定化のためには理想的な状態になります。

 さらに、LSI内部の小さな回路ブロックごとに電源回路をもつようにすれば、おのおのの電源回路に対する消費電力の変化は小さくなるので、さらにLSIの各回路の電源電圧は安定します(図9)。

図9 ループが小さいとレスポンスが速い

 第3の理由はLSIの消費電流低減です。今回のHaswellでも、この電源回路をLSI内部に実装して消費電力を改善しようとしています。

 現在、CPUをはじめとするLSIでは消費電力を低減するためにきめ細かい電源電圧のコントロールを行っています。

 ASICやシステムICは多くの機能ブロックが寄せ集まって一つのLSIとなっています(図10)。これらのブロックはすべて動作しているわけではありません。

図10 System ICは多くの機能ブロックをもつ(ルネサス エレクトロニクス)

図11 消費電力減少時の電圧変化

 動作していないブロックの電源電圧を低くしたり、電源をオフしたりすることによりLSIの消費電力を抑えます。

 CPUがマルチコア化したのも同じです。CPUの処理に応じて、動作させるコアだけを動かし、動作しないコアの電圧を下げます。Haswellでは、この動作しないコアの電圧をそれまでより低く抑える技術を開発し、ここでも消費電力を抑えています。

 Haswellが電源回路をチップに内蔵したのは、この電源電圧コントロールをより素早く、よりきめ細かに行うためです。

 外部の電源は電源電圧モニタをもっていて、LSIから送られてきたチップ電圧情報により、チップの電源電圧が一定になるように出力電圧をコントロールします。このLSIの電圧変動を関知してから、LSIの電圧が正しくなるまでの時間をループ特性と呼びます。

 外部電圧の応答時間では、電源装置の応答時間と、PDNの伝播遅延時間が加算されています。

 LSIがきめ細かく内部回路の省エネを行っても、実際に電源回路が動作するに移るまでには、遅延が生じます(図11)。

 このような無駄は、LSIが細かい動作コントロールを行ってきめ細かく省エネを実行しようとする努力をも無駄にしてしまいます。

図12 電源の応答が速いと効率よく消費削減できる

 LSI内部に自分で電源回路をもてば、PDNの伝播時間をなくすことができますし、小さな回路ブロックごとに小さく応答の速い電源回路を作ることができます。高速応答の電源回路であれば、高速な回路ブロックの動作ON/OFFに対応して、電源のON/OFFをコントロールできます(図12)。

 また、細かい回路ブロックごとに電源回路をもてば、小さな消費電流変化に対してもより細かい省エネが行えます。

 基板上のバイパスコンデンサ削減はコスト、基板設計、消費電力と大きな効果があります。

 Haswellではまだどの程度の電源回路がICの中に実装されるかは判明していません。しかし、これがICの消費電力やPIに対する回答の第一歩になることを期待します。

 

 

 

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(株)日本サーキット|KEI Systems
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