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テクニカルレポート
2024.05.21
プリント配線板の将来性
特定非営利活動法人 サーキットネットワーク
梶田 栄

①はじめに

プリント配線板(PWB:print wiring board)は、電子機器の基本的な構成要素であり、現代のデジタル化された世界において不可欠な部品である。そのため、PWBの将来性は大いに高いと考えられる。ここでプリント配線板の呼称であるが、業界では電子部品を搭載していない、いわゆる生基板を「プリント配線板」(PWB)と呼び、部品搭載済みの基板を「プリント回路基板」(PCB:print circuit board)、これらを総称して「プリント基板」と呼んで使い分けしている。(図1)

図1 プリント基板の分類

 

またプリント配線板の種類を図2に示す。

図2 プリント配線板の種類

 

②期待される市場

電磁気学は18世紀に学問として始まり、20世紀には実用化が一気に拡大して私達の生活レベルが大きく向上した。アメリカのベル研究所の研究員だったW.ショックレー博士らによるトランジスタの発明が、一番の立役者であることに異論を差しはさむ人はいないであろう。そのトランジスタであるが、業界の草創期から黎明期にかけ技術開発に大きく貢献されてきた業界レジェンドである故小林正氏の言葉によると、「半導体、基板なければただの石」となってしまうくらいPWBは重要な部品である。一般的には目に触れないが、私たちの生活レベル向上に大きく寄与している部品である。以下期待されている市場について述べる。

 

(1) IoT(Internet of Things:モノのインターネット)

IoTは物流の自動化を手始めに始まった技術である。すべての物にセンサーおよび通信機能を持たせ、すべての物の状態を集中的に管理できることを目的としている。これが物流以外にも適用されるようになり、機器メンテナンスやセキュリティなど各方面に拡大中である。IoTに必須の技術はセンサー技術、通信技術および電源回路を含む制御技術などである。これらが機能するためには半導体をはじめ、各種電子部品が必須となり、それらを機能させるためのPWBの需要が増加するのは自明の理である。

 

(2) 自動車市場

自動車の電子化は運転中の快適性の追求に始まり、安全性向上、環境問題対策など自動車の電子化は急速に進んできている。CASE(Connected:通信技術、Autonomous/Automated:自動化、Shared:シェア、Electric:電動化)と呼ばれる領域で技術革新を起こし、自動車の概念が変わってきている。この実現には電子部品が欠かせないため、PWBにとって大いに期待できる市場である。

 

(3) 次世代通信市場

5G通信技術の普及にともない、移動体通信が社会インフラとなりさらなる高速で大容量のデータ伝送が求められ、Beyond5G(6G)構想が発足している。今後5G基地局や通信機器などのインフラの拡充が進み、新規の市場が生まれることで、PWBの需要が増加すると予想される。

 

(4) その他

脱炭素運動が広がり、再生可能エネルギーの利用には電子制御が欠かせない技術である。特に風力発電などは安定的に発電ができないため、蓄電が必要でありかつ商用電力網へ流すため周波数と電圧の制御が必要であり、そのためのパワー半導体を含む電子回路が必須となっている。メガソーラは直流発電のため、インバータが必要となる。またここ数年で急速に発展してきたAI技術は、高速処理可能なコンピュータおよびデータセンターが必須である。AI搭載の電子機器は拡大中であり、そのためのPWBも需要が増している。その他医療機器はほとんどが電子化されており、医療ロボットも普及が進んでいる。

 

③実装階層

半導体チップの高密度化は急速に進んでいる。この半導体を使用するには基板が必要になることは、上記「2.期待される市場」で述べた。実際に半導体チップを基板へ実装するときに配線パターンのライン幅も重要な要素となる。ライン幅が一桁小さくなると設計ルールと加工方法も変わるため、各々に適したルールが必要となる。このルールに準じたのが「実装階層」と呼ばれる分類方法である。

 

① 第一実装階層

新規開発領域でライン幅が1nmから10nm程度

② 第二実装階層

半導体チップ領域でライン幅が10nmから数μm程度

③ 第三実装階層

新規インターポーザ領域でライン幅が数μmから30μm  程度

④ 第四実装階層

MCM・インターポーザ実装領域でライン幅が30μm以上

⑤ 第五実装階層

MCMを電子機器へ組み込むときのプリント配線板レ ベルライン幅が100μm以上

と分類する(図3)。

図3 実装階層

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特定非営利活動法人 サーキットネットワーク
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