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スペシャルインタビュー
2022.06.10
IoTを簡単/高品質に実現できる 省電力マルチホップ無線通信技術
〜センシングソリューションを含めた提供で事業展開〜
ソナス株式会社
代表取締役/CEO 大原 壮太郎 氏  取締役/CTO 鈴木 誠 氏

■御社のコアとなる無線通信技術についてお聞かせください

 

鈴木 : 当社のコア技術は、“誰でも本格IoT”をコンセプトにした省電力マルチホップ無線通信技術『UNISONet(ユニゾネット)』になります。

産業用IoT向けの無線通信はたくさんあり、最近ではLPWA(省電力広域無線)が流行っています。LPWAは親機と子機が直接つながっているスター型と呼ばれる形態で無線通信を行いますが、通信範囲と通信速度がトレードオフになってしまうという課題を抱えています。例えば、LPWAはWi-Fi等と比べて100倍程度飛びますが、スピードは100万分の1程度です。これでは送れるデータの制約が非常に強くなってしまいます。そのような中で、通信範囲と通信速度を両立させるマルチホップという技術があり、1つ1つの無線機の通信範囲は狭いのですが、それをバケツリレー的に運ぶことで通信範囲を広くしていき、通信速度もそれなりに維持していくことができるものです(図表1)。

図表1 マルチホップの概要

 

このマルチホップは、昔から研究が続けられている技術ですが、現状ではそれほど普及しておらず、その理由としては安定化が難しいことが理由として挙げられます。今までの一般的なマルチホップは、バケツリレーするルートを決めるのですが、電波状況の変動などによりデータロスが発生するなど制御の難しさがあり、「ルーティングすること自体がネックになっているのでは」というのが我々の考えでした。

当社の『UNISONet』は、課題となるルーティングをまったく行わない形式になっており、まずデータ発信元が宛先を決めずにデータを送信し、電波の到達範囲にあるノードが受信します。ここからがユニークで、ルーティングを決めている場合はルート上にあるノードのみが転送を行いますが、『UNISONet』の場合はデータを受信したノードがすべて即座に転送を行い、この繰り返しで最終目的の宛先にデータを送ります(図表2)。

図表2 『UNISONet』のしくみ

 

実は今まで、このような形式は一般的な無線の常識ではありえませんでした。それは、1つのノードに複数のノードから同じ時間で同じ周波数から送られると、普通は干渉を起こして受け取れないと考えられていたからです。しかし、2011年に海外の論文で、複数ノードが同時に送信しても、「電波を同時に発生させてキレイに重ね合わせる」ことで、特定の条件下であれば干渉せず受信できること、またこの技術をフラッディングという通信パターンに適用することで、フラッディングを大幅に高速化できることが発表されました。フラッディングとは、1つのノードからネットワーク全体にパケットを転送する通信パターンです。

我々はこの発見はフラッディングだけにとどまらず、マルチホップ技術全体に大きな変革をもたらすと予見し、研究開発を開始しました。

そして、「どのような条件であれば干渉せずに動くのか」という解析まで実施するとともに、本現象を踏まえてセンサネットワーク技術全体を一から再構築しました。

『UNISONet』は、今ご説明した同時送信型のフラッディング技術と、このフラッディングをどのタイミングで行うかを決める『細粒度スケジューリング』とを融合することで、省エネや速度/上下トラフィックに対応/時刻同期などの要求を同時に満たすことを可能としています。この技術は、単にネットワークを構築できるだけでなく、単純な仕組みで効率的かつ高機能なネットワークを実現できることがポイントになっています。最新の無線チップでこのネットワークを提供しているのは当社のみと認識しています。

会社名
ソナス株式会社
所在地
東京都文京区