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スペシャルインタビュー
2022.06.20
長寿命/高トルク化を目指した超音波モータ
〜ロボットアームを含めた自律移動型ロボットにも展開〜
株式会社 Piezo Sonic
代表取締役 多田 興平 氏

超音波モータの開発/製造/販売などを中心に事業を展開する株式会社Piezo Sonic。長寿命化と高トルク化といった、超音波モータの有する相反した2つの課題にチャレンジする同社の概要と取り組み、技術/製品などについて、代表取締役 多田 興平 氏にお話を伺った。

 

■御社の概要と起業された経緯などについてお聞かせください

 

多田 : 当社は2017年12月に設立した会社で、将来的には人と協働できるようなロボット開発を目指しており、現状はロボットに向くと考えている「超音波モータ」と、自律移動型ロボットを含めた「ロボット/IoTデバイス」との2本柱で事業を展開しています。

私自身、超音波モータの研究開発に20年以上携っており、最初のきっかけは大学時代の研究室で行われていたJAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究になります。それは月面探査ロボットの開発プロジェクトで、どのような月面探査ロボットをつくるのかということはある程度決まっていましたが、肝となる搭載するモータがなかなか決まらず、まずはモータ探しからスタートしました。

そして、最も適するであろうと見つけたものが、原理もすべて日本のエンジニアが研究開発した超音波モータでした。ただ、標準品のままでは真空や低/高温状態が存在する宇宙環境に耐えることが難しいので、その超音波モータを開発したメーカーと共同で宇宙仕様化の研究開発を約8年間行い、月面探査ロボットに搭載可能な超音波モータを開発しました。

研究開発中は、実際に世界初の超音波モータを開発されたエンジニアであり、超音波モータ開発の私の師でもあるそのメーカーの社長に色々と指導して頂き、それがご縁で社会人として最初のスタートはそのメーカーでお世話になりました。超音波モータについては、大学時代にある程度の実績があったため、入社して1年後には技術開発部長を任され、モータや駆動回路の開発に携わりました。そして10年間、そのメーカーで色々と学ばせて頂きましたが、お世話になった社長も他界されて社内の雰囲気が大きく変化したことと、大学時代からものづくりを進めるにあたり協力メーカーと一緒に行っていくスタイルが身に付いていたこともあり、独立を考えるようになりました。

元々私は、子供の頃からロボットが大好きで、アニメの世界のロボット博士に憧れていました。すばらしいご縁で超音波モータの開発に携わることができ、この超音波モータは小型/軽量/高トルク、非通電/非制御で姿勢維持が可能という特徴をもつため、まさにロボット用アクチュエータに最適なモータです。これまでの経験と今後の市場性から、独立後の事業としては人の生活を支えることができるロボット、特に介助ロボットに力を入れたいと考えました。

それを手掛けるにあたっては、技術的な鮮度を見極める必要がありました。例えば、今から10年前はスマホなども普及していませんし、さらに遡ればテレビも液晶やプラズマではなくブラウン管でした。超音波モータは、主に位置決め精度を求める製品や静音性を要求される場所での利用に適しています。また、駆動原理にマグネットやコイルを用いていないため、動作中に磁界を発生させず、磁場の影響を受けない非磁性モータを構築することができます。この特徴から、MRI内などの高磁場環境や磁場をきらう環境などで多くの需要がありますが、この先10年後はどのような変化があるかわかりません。

ただ、自分で研究開発を進めていくことにより、もっとより良いものがつくれると思いますし、チャレンジするならこのタイミングだと判断したことが起業するきっかけになっています。

設立当初は、製品の試作以外のコストをできるだけ抑えたいと考えたため、自宅1階を改装し、超音波モータをはじめとする製品開発ができるスペースを確保しました。それ以外に、加工や組み立てができ、お客様との打合せに適した場所として、以前から個人で契約していた秋葉原のDMM.makeAKIBA(シェアオフィス)を利用しています。

このDMM.makeAKIBAは、サービス開始時から利用しており、建物内には色々な工作機械などが設置されてレンタルできるので、試作品の部品などの製作も行っています。また、スタッフの方とも個人的に親しくさせて頂き、その中で大田区が推進している産業サポートやビジネスサポートを紹介され、大田区との繋がりが生まれていきました。

そして、大田区にあるテクノFRONT森ヶ崎(工場アパート)に空きが出たことを知り、エントリーして書類選考と面接などを経て、数社の中から運良く選ばれました。そこに、当社の中央事業所を設置しており、現在はメインの拠点となっています。今のところ従業員は、私を含めて3名とアルバイト/パートさん数名、外部のオンラインアシスタント1名の小規模体制ですが、最近ではエンジニアの求人を開始し、徐々に会社の規模も大きくなっています。

さらに、取り引きしている協力メーカーも30社ほどになり、個人的につながりがある数社以外、ほとんどが当社を設立してから新規にお付き合いさせて頂いている企業です。協力メーカーとは、それぞれの専門分野をお任せして当社の従業員と同等の立場で設計/開発、試作/量産などを行っていただく、「共創」関係を築いており、それが当社のビジネススタイルにもなっています。

会社名
株式会社 Piezo Sonic
所在地
東京都大田区(中央事業所)