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スペシャルインタビュー
2023.07.15
独自の印刷技術を活かし機能性に優れた紙の可能性を追求
〜様々なビジネスをサポートする包装材料を提供〜
森紙器株式会社
代表取締役 森 勇一 氏

独自の印刷技術を確立し、段ボール箱やディスプレイ製品などの設計/開発/製造を行う森紙器株式会社。今回は、“紙”のもつ可能性を追求する同社の概要と事業内容、現在提供されている主力製品などについて、代表取締役 森 勇一 氏にお話を伺った。

 

■御社の沿革や概要などについてお聞かせください

 

: 当社は、私の父が1962年8月に、現在の本社所在地である東京都足立区において、個人事業主として森紙器加工所を開業したのが始まりになります。そして、1964年2月には法人化し、現在の森紙器株式会社に改組しています。

創業当初は、段ボール箱の設計/開発/製造を中心に事業を展開し、1972年11月には、埼玉県草加市に草加工場を設置しています。そして、1975年1月に草加工場を増築し、同年2月には、本社工場を草加工場に移転し、全工場を1個所に集約しています。

また1986年10月に、同じ敷地内に草加工場事務所等を完成させ、現在も営業本部の拠点として機能しています。

私自身は、1990年に当社へ入社し、当時社長であった父とともに少しずつ今でいうDX化を進めていき、最初にAutoCADを導入して、CAD/CAMの稼働をスタートさせました。そして1999年2月には、父に代わり私が代表取締役に就任しています。

その後、徐々に事業の幅を広げていき、今までは包装されているものを詰めたり、発送などで使用する受注生産の段ボール箱がメインでしたが、紙製の食器やテイクアウト用のボックスなど食品分野にも参入し、製品のラインアップを増やしていきました。また、そのための設備として、工場内にクリーンルームも設置しています。

さらに、ホームセンターなどで販売するS/M/Lサイズといった既製品の段ボール箱を製造し、納入を開始しています。

それから私自身、インクや紙などの消耗品を含めた印刷全般の技術を独自に色々と研究していました。その中心になっていたのがフレキソ印刷技術の研究で、当社でもフレキソ印刷を採用していました。この研究には、かなりの設備投資と様々な企業に協力をしていただくなど非常に苦労もしましたが、今までにない新たなフレキソ印刷技術を開発しています。この独自に開発した技術は、公益社団法人 日本包装技術協会が発行する月刊機関紙に、論文として掲載されました。

そして、このフレキソ印刷技術を採用したフレキソ高精細6色印刷機を開発するため、我々が技術供与する形で印刷機メーカーに協力していただき、オフセット印刷並みの仕上がりを実現する印刷機を開発し、1999年12月に導入しています(写真1)。それにより、様々な大手電機メーカーなどから、通常ではオフセットで印刷するような包装用段ボール箱の受注をいただくようになっていきました。

写真1 フレキソ高精細6色印刷機

 

このフレキソ高精細6色印刷機の導入が、当社にとって大きな転換期となり、新規開拓にも力を入れていき、同業の大手印刷企業からも下請けという位置付けではなく、パートナーとして仕事の依頼を受けるようになりました。

その後、世の中はデジタル時代に突入し、今まで印判で管理していたお客様の原稿もデータで管理するようになってきたため、当社でもインクジェットプリンタの導入を検討していきました。そして、印刷スピードの速い中国メーカーの機種を1台導入したのですが、印刷時に規則的な横すじが発生するバンディングといった現象を起こすため、インクの出るヘッド部分を国内メーカーに特注でつくっていただき、その部分だけ交換しました。

しかし今度は、染料インクを使用していたので、雨や水に触れると印刷した部分が流れてしまうという現象が発生しました。そのため、印刷した部分にニスを塗るなど色々と対策を試みましたが、結局上手く行きませんでした。

折角導入したインクジェットプリンタが無駄になると思っていた時に、偶々出展した展示会で大手化学メーカーの開発担当の方と知り合い、その大手化学メーカーと共同で、当社のインクジェットプリンタにマッチする水性インクの研究開発を行うことになりました。そして、この水性インクの開発が、当社の事業をさらに飛躍させる結果に繋がっていきました。

また、技術開発以外では2006年5月に、事業の拡大にともないアセンブリーやセットアップ部門を独立させ、新会社として株式会社モックスを開業させています。さらに、2017年10月には英語圏で設計技術にも長けたフィリピンに、当社のデザイン事業所を開設するなど会社の規模も徐々に拡大させています。

このように当社は、段ボール箱からスタートし、最近ではPOPといったディスプレイ製品など、紙製品に関する様々な提案を進めながら、それぞれの素材となる紙のもつ特性を活かした事業を展開しています。

 

■御社が展開する事業の特徴などについてお聞かせください

 

: 当社では、お客様のビジネスを最大限にサポートするため

①「地球に優しい印刷」

②「独自の手法を活かした技術力」

③「経験豊富なデザイナー」

④「短納期を実現」

といった4つの特徴を掲げています。

1つ目の「地球に優しい印刷」では、当社が採用している独自のフレキソ高精細6色印刷は、段ボールに直接写真印刷することが可能な印刷手法なので、印判など材料のコストが削減できるうえに、水性インクの使用でリサイクルが可能になります。また、インクジェットプリンタで使用しているインクも大手化学メーカーと共同で開発した水性インクなので、どちらも地球に優しい印刷を実現できます。

2つ目の「独自の手法を活かした技術力」では、まずベースになっているのは優れた設計力で、この設計力により独自の手法を生み出し、これまで紙では難しいと思われていた分野でも高い技術力で、紙の新しい可能性を追求しています。この高い技術力が、当社の製品を支え続けています。

3つ目の「経験豊富なデザイナー」では、社内には海外の事業所を含め経験豊富なデザイナーが揃っており、販売促進用POPなどアイデアやデザイン力を必要とするものにも、今まで培ってきた経験やノウハウにより的確に対応することができます。また、細かなところにも素早く対応できるのが、当社の強みにもなっています

最後に4つ目の「短納期を実現」では、当社は短納期という面でも、お客様の要望に対して最大限対応できる体制を整えています。オリジナル紙製品のオーダーについても、我々独自の経験/技術を活かし、クオリティと短納期の両立を実現できます。最近では、お客様の方が短納期に対応できることを分かっておられるので、以前のように納期を確認されるようなことは少なくなってきました。

このような4つの特徴を活かすことで、当社の事業は成り立っていると思っています。

また、2021年に草加商工会議所が主催する「草加でいちばん大切にしたい会社大賞」に受賞したのですが、この受賞が当社にとって大きな強みになったと感じています。元々は、元法政大学の教授で日本の経済学者である坂本光司氏が、経済産業省などの後援により10年程前から「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」という全国規模で実施しており、本も出版されてベストセラーにもなっていました。

その坂本光司氏が、今度は全国規模ではなく地方版として、それぞれの市町村規模で実施していこうと取り組み、いちばん最初に実施されたのが草加市でした。商工会議所や市役所を通じてエントリーするのですが、経営状況や社員の給料、福利厚生などエントリーする条件が色々と厳しく、受賞する企業は大賞1社と特別賞2社だけでした。

その大賞に選ばれたことは、会社としても強みになりますが、私や社員それぞれの自信にも繋がっていると考えています。

会社名
森紙器株式会社
所在地
埼玉県草加市