高周波と光の伝送技術で、情報・通信/放送/光伝送/電子計測/医療などの幅広い分野に事業展開しているスタック電子株式会社。地上デジタル波放送の開始など高周波帯域の利用が進む中、独創的な技術開発で事業展開する同社の概要と技術/製品などについて、常務取締役 福地 敏 氏にお話を伺った。
■御社の概要についてお聞かせ下さい
福地:当社は、高周波と光の伝送技術において独創的な技術開発を行いながら、情報・通信/放送/光伝送/電子計測/医療などの分野に事業展開している高周波伝送機器の専門メーカーです。
1971年1月に、当社代表取締役社長の田島が創業者となり、東京都小平市に事務所となるアパートを借りて事業をスタートさせました。田島は、元々コネクタメーカーに技術者として勤務しており、その会社を退社して技術者4名で創業しました。1977年4月には、東京都小平市に初めての自社社屋となる本社工場を設置し、本社を移転しました。1981年6月には、東京都昭島市に昭島工場を設置し、その後1984年5月に、昭島工場隣接地を取得して本社工場を設け、本社を移転することで拠点が現在の昭島市へと移ってきました。
同軸コネクタの開口部は世界共通でその互換性が求められます。創業当初は他メーカーとの差別化を図るため互換性に影響しないケーブル接続作業の容易なコネクタや、他メーカーとの互換性を確保しつつコスト低減が可能な新しいコンタクトピンの提案など既存メーカーとのバッティングを避ける新しい構造のコネクタを市場に提案し提供してきました。
さらに製品の付加価値を上げるため同軸コネクタを入力/出力部に用いている高周波部品に着目し、同軸コネクタ技術に高周波回路技術を組み合せた、同軸減衰器、同軸分配器、同軸切替器、といった高周波コンポーネントや、無反射終端器、インピーダンス変換器、広帯域検波器といった高周波測定器のアクセサリー類を開発して計測器メーカーや、テレビが普及しはじめた当時の工場の生産ライン設備などで受注を伸ばしていきました。
特に、当社が現在の規模まで飛躍できたのは、オシロスコープ用プローブの開発が大きな要因となっています。それは、先に述べた“ケーブル接続作業”のユニークさに関心をもたれたあるオシロスコープメーカーから「BNCコネクタを使うプローブで頻繁に発生する断線クレームを解決できる新しい構造を考案して欲しい」といった要望がきっかけとなりました。同軸コネクタ技術をベースにオシロスコープ用プローブを開発し、最初は1社へのOEM供給でしたが、次第に国内の別のオシロスコープメーカーからも注文をいただくようになり、高い評価を得ています。現在、国内シェアは100%で、海外においてもほとんどの大手メーカーにOEM供給しています。
さらに、高周波に必要となるフィルタ関連製品や同軸コンポーネントを組み合せたユニットシステムなども開発/製造/販売しており、完全デジタル化に移行したつい先日まで地上デジタル波放送の中継局を設置するメーカーに、当社の製品をOEM供給させていただきました。それから、光コネクタや光ファイバケーブルなどの加工を行っていた光伝送関連についても3年ほど前から力を入れはじめ、ケーブル間のアンプ/光送信装置/光受信装置などを開発し、高周波伝送関連とともに各分野に展開していこうとしています。
■御社のコア技術についてお聞かせ下さい
福地:当社は、FM放送などで使われる60MHz帯域の超短波(VHF)と呼ばれる周波数帯から、上は衛星通信/放送などで使われる10GHz位までのマイクロ波(SHF)と呼ばれる高周波帯域のアンプ、フィルタ、コネクタなどを開発する、高周波と光の伝送技術をコア技術にしています。
具体的な内容としては、光と高周波伝送回路のシステム設計技術、高周波回路のシミュレーション技術、高周波フィルタ回路のシミュレーション技術、高周波回路の設計/製造/調整技術、高周波回路の測定/評価技術およびノウハウ、精密部品の設計/加工/組立て技術、各種アッセンブリ加工技術、信頼性評価/分析設備と技術、といった技術をもっています。
これらの技術は、当社の製品群となる同軸コネクタ/ケーブルアッセンブリ、同軸コンポーネント、プローブ/計測用アクセサリー、フィルタ関連、光伝送関連、ユニット/システムに活かされています。
また、当社のコア技術は大手メーカーではなかなか出来ないような部分をフォローしています。放送分野などで使用するフィルタの技術を例に挙げますと、一つの放送局などで使用するフィルタは数台で、多くても10~20台程度となっています。以前は大手メーカーが市場を占めていましたが、最近では生産性の問題などから、携帯電話などで使用する同じ周波数のものを大量生産するような市場へと移り始めました。さらに、一時的にフィルタ製造を行っていた当社と競合するメーカーなども、最近では対応しきれなくなっているのが現状です。
当社は、この放送分野の市場をフォローするため、設計/製造/検査の工程を縦割りにして、すべて同じ少人数のチームが担当するという社内でも特殊な体制をとることで対応しています。海外生産という選択肢もありますが、生産台数をある程度固めなくてはいけませんし、ユーザーサイドのことや当社の次世代の技術者に受け継いでもらうためにも、やはり国内に残さなくてはいけない技術だと考えています。
- 会社名
- スタック電子株式会社
- 所在地
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