■それでは「冠水通知システム」について、開発背景や製品の概要などお聞かせください

 

岡部 ： まず、『MaBeee LTE-M型モデル』の量産をスタートした当初は、防災よりも設備監視に利用したいというニーズがありました。その案件についてはまだ未発表なのですが、電池の外側にあたる部分を設備監視の機器メーカーが開発され、電気設備の遠隔監視などで採用していただいています。

そのような設備監視での利用が先行する中で、ほかの用途展開ももっと色々とあるだろうといくつかの仮説を立てた中の1つが、防災での利用でした。災害時などでは、電源が必ず確保できるとは限りませんので、電池駆動であるという需要が非常に高いことや、設置性についても基地局を設置したりする手間があるなど、色々と課題があったようです。

当社製品の仕組みであれば、電池駆動で動作することと、通信システムは通信キャリアの回線を使用できるため、親機や子機の設置工事が不要で、設置も容易にできます。そうした背景から、防災での利用について本格的に取り組み始めました。

そのような中で、関連する展示会に出展した時に、冠水に関するソリューションを探されている企業から相談を受けたことがきっかけとなり、「冠水通知システム」の開発がスタートしています。また、昨今の集中豪雨などによる洪水被害が増加する状況も相俟って、様々な地方自治体や企業などからも問い合わせが増えていき、本格的な取り組みを開始しています。

そして、開発した製品が『MaBeee 冠水通知システム』になります（写真5）。こちらの製品は、冠水の発生を検知して自治体職員や地域住民の方々へ、リアルタイムに通知することができます。通知方法としては、マップ表示／メール配信になります（写真6）。専用コンソールでステータスをマップ表示し、登録されている方々にはリアルタイムでメールが通知されます。

 

また、冠水の検知以外にも水位の管理をはじめ、様々なシーンで活用することが可能です。さらに、優れた拡張性とメンテナンス性により、他形式のセンサもそのまま接続して利用することができます。

本製品は、静岡県浜松市の令和5年度、“Hamamatsu ORI-Project”＜地域課題解決型＞

浜松市データ連携基盤を活用した地域課題の解決策の検証分野において採択されました。“Hamamatsu ORI-Project”とは、浜松市が展開する“デジタル・スマートシティ浜松“の推進にあたり、データ利活用の基盤となる浜松市データ連携基盤の有効活用の促進のため、データ連携基盤を活用し、新しいサービスやアプリケーションの創出を目指す取り組みの支援を行うものです。

この他にも、本製品の導入は色々と進めている状況ですが、「冠水検知」以外でも防災での活用事例として、「積雪量の検知」や「熊などの出没検知」など、様々な防災に関する検知システムの開発にも取り組んでいます。

 

■今後の展開についてお聞かせください

 

岡部 ： 我々の思いとしては、様々な製造業のお客様の製品に対して、どんどんネットワークサービス化できるようなお手伝いをしていきたいということが、起業当初からの大前提にあります。色々な会社の製品をスマート化していく時に、先程お話したクラウドの基盤やスマートフォンのアプリ、通信モジュールの電池など、それら全部やまたは一部を提供することで色々な製品がネットワーク対応となり、新しいサービスが誕生する世の中というか、枠組みをつくっていきたいと思っています。

まずは、現状のラインアップ製品で対応していけるかを見極め、対応できない場合には、新たな製品の開発に取り組んでいきたいと考えています。場合によって、電池形状でない方が接続しやすいというケースには、現状でも臨機応変に対応しているので、それは引き続き継続していきます。

冒頭でお話しましたが、すでに時計業界ではスマート化の波が進み、その波には乗り遅れてしまいましたが、それ以外の業界ではまだまだ可能性は色々あると思っています。そのような中で、ものづくりの良さを活かしながら、サービスの部分を我々がお手伝いさせていただくことで、新しいモデル構築が日本中の様々な製造メーカーで勃興するような状態になっていければと思っています。

このような取り組みは、現状では国内が中心になっていますが、徐々に海外での展開も視野に入れ、少しずつ裾野を広げている状況です。

本日はお忙しい中ありがとうございました。

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