■産学官連携で進められている研究についてお聞かせ下さい
小澤:経済産業省が推進している助成金制度で、平成22年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン:サポーティングインダストリー )の採択をうけて、現在産学官連携で研究開発を進めています。
写真5 人工股関節摺動部
この研究は医療分野に関する案件で、半永続使用に耐えられる人工股関節の開発を目指しています(写真5)。現状使用されている人工股関節は、ステンレス製骨頭と高密度ポリエチレン臼蓋の組み合わせで構成されています。
このポリエチレン臼蓋は、1年間に0.1mmほど摩耗するといわれ、摩耗したポリエチレンは体外に排出されることなく周辺組織に蓄積されて炎症性骨吸収を誘発するため、平均寿命は15~20年といわれており、交換手術も何回も行えないので使用する年齢も高年齢者の方が対象となっています。
当社が産学官連携で進めている技術は、ステンレスの変わりにチタン合金(Ti-13Nb-13Zr)を使用して、人工骨頭にもちいる際に切削加工、研削加工の精度を高めることで、ポリエチレン臼蓋の摩耗ゼロを目標にしています。それにより、平均寿命を40年ぐらいまで耐えられるように改善でき、若年層まで使用できる人工股関節を提供できると考えています。
この案件は3年事業で進めており、今年で2年目に入ります。つい先日、中間審査のためのヒヤリングを行いましたが、たぶん問題なく審査が通ると思いますので、3年目の最後まで研究が継続できると考えています。しかし事業の展開までは、医療分野ということもあり、薬事の様々な問題から当社だけでは進められないこともあるため、他社と共同で進めるなどもう少し時間が掛かると思います。今回の研究は、技術の確立と製品開発のメドを目標にしています。
また、チタンとマグネシウムの溶接自動化の開発といった案件を手掛けた実績などもあり、こちらは技術の確立までほぼ完了し、現状は風力発電や自動車関連業界での事業展開を模索しています。
その他にも他社と共同で、温泉の熱源を利用した温度差発電といった取り組みにも参画し、さらにチタンの放電用電極の開発など、現在進行中の案件をいくつか抱えている状況です。
■現状の課題と今後の展開についてお聞かせ下さい
小澤:人材の育成が一つの課題となっており、特に力を入れて取り組んでいます。社内の勉強会や社外での講習会を中心に行っていますが、産学官連携で進めている研究開発なども人材育成の一環と考えています。大学などの研究機関に当社の社員を派遣して、研究開発を進める中で社員のスキルアップにも繋げられるといった意図を含んでいます。また、仕事だけではなく、社員同士のコミュニケーションが結べるようなイベントなども行うようにしています。
社員一人一人が、仕事に対して目標や夢をもって取り組んでいってもらいたいというのが、当社の経営理念でもあり、私の夢でもあります。
それから当社は、創業当初から分社化ということを視野に入れています。すでに医療関連分野は、分社化して当社の子会社として事業展開を行っています。今後の展開としては、当社の取り扱い製品一つ一つの事業展開を少しずつ拡大して、将来的にはそれぞれ分社化していき、チタンの加工に特化した一つのグループ企業を築いていきたいと考えています。
本日はお忙しい中ありがとうございました。
- 会社名
- 株式会社東京チタニウム
- 所在地
- 埼玉県岩槻市
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