展示映像システムの製作販売/科学展示製作/開発受託、また最近では、太陽光採光照明や直流給電等の自然エネルギー利用製品の開発/製作などを展開される有限会社石川光学造形研究所。ホログラフィとの出会いが、ある意味会社設立のきっかけとなった同社の概要と、最近展開されているユニークで独自性のある製品について、代表取締役 石川 洵 氏にお話しを伺った。
■御社の概要と起業したきっかけなどについてお聞かせください
石川 : 当社は、1984年にホログラフィをビジネス化するために個人で設立した会社になります。一口で私の仕事を説明するなら、“カスタム製品開発職人”といった表現が分かりやすいと思います。
私の経歴としては、1969年に大学を卒業後、大手自動車メーカーに就職しました。なぜ、自動車メーカーに就職したかというと、シンプルに自動車が好きだったことが大きな要因になっています。
そして、その自動車メーカーでは資材購買部門に所属し、部品担当を7年、設備担当を7年の計14年間勤務しました。そのおかけで、メーカーとして製品をつくるということについて、またとない勉強ができ、特に後半の設備を担当した7年間は、自動車製造設備や動力設備、環境設備などについて深い知識が得られました。また、ものづくりに対しても多くのことを学ぶことができ、充実した仕事であったと感じています。
その中で、1979年頃に広まり始めた究極の3次元写真技術であるホログラフィに出会い、今の方はあまり驚かないと思いますが当時は非常に驚いて、これを自分の仕事にしたいと思うようになりました。
ただ、そうは言っても当時そのような職種で社員を募集している会社はなく、仮にあったとしても中途採用は困難な状況でした。また、方向性を変えて大学教員になろうとしても、学位をもっていない私では採用してもらえません。結局は、すべて一から自分でスタートしなければならず、休日などを利用して独学で勉強していき、4年ほどかけてホログラフィカメラのプロトタイプを製作するまでに成長し、関係する会社に見てもらっていました。
そして、その試作品がある光学機器メーカーの目に留まり、円筒型ホログラム撮影装置の設計、トライアルの依頼をいただきました。ホログラフィへの情熱をもつだけで、エンジニアでもなく光学の専門家でもない駆け出しの私に、仕事を依頼してくれたその会社の社長には深く感謝しており、独立を躊躇していた私の背中を押してくれました。
それがきっかけとなり、当社を起業し、共同で円筒型ホログラム撮影装置の完成を目指しました。その後、半年ほどかけてその装置の完成が見えてきた頃に、次のビジネスチャンスが舞い込んできました。
それは、1985年に開催された「国際科学技術博覧会(つくばExpo’85)」の関連施設としてオープンした科学館のエントランスに設置される、直径2m、高さ1.5mの今まで誰も手掛けたことのないような大型円筒ホログラムの製作依頼でした。ただ、依頼を受けたものの、ほとんど経験のない難しい仕事となり、試作を繰り返しても画像のノイズが消えないといった現象が続きました。
結局、困り果てて所属していた光学関連の学会で、一番詳しそうな先生にサンプルを持参してアドバイスをお願いすると、いくら考えても分からなかった問題が一発で解決しました。その時のことは、今でも感謝しており、その後半年頑張って、何とか無事納期内に納められた時の解放感は忘れられません。
しかし、このようなイベント物の受注は、コンスタントには続きませんでした。そこで、独立前から徐々に開発を進めていたホログラフィカメラの製造をメインに、ビジネス展開を行っていきました(写真1)。ホログラフィカメラの製造、ホログラムの制作、科学館展示制作、大学/企業向け研究装置の試作などを行い、2000年頃まではほぼホログラフィ一色で展開していました。また、ホログラフィの知識を活かして、美大での講師の依頼も舞い込んできました。
ところが2000年を過ぎた頃から、主力であるホログラフィ市場の衰退が始まり、それは日本だけでなくワールドワイドで進んでいきました。今思えば、写真の世界はどんどんデジタル化が進む中で、ホログラフィに関してはデジタル化が上手く進まなかったことや、動画の普及なども影響していたのではと感じています。それでも、完成していた1つの技術が、音を立てて崩れていったことはショックでした。
そのため、ホログラフィ以外の仕事を増やすことと、ホログラフィに代わる製品を見つけることが急務となりました。そこで、展示用ホログラムの代替製品として目を付けたのが空間映像装置でした(写真2)。この装置は、その名前の通り空間に映像を表示することで、主に眼のピント調節作用を利用して立体感を得るもので、空間に映像が浮かぶ不思議感覚はインパクトのあるアイキャッチとして働きます。
そして、この空間映像装置を約5年間で、15アイテムほどラインアップしました。開発では、ホログラフィで培った「人は立体映像の何に興味をもつか」といった知見が大いに役立ちました。
また、ホログラフィカメラの代替製品としては、ホログラフィカメラのポジションを維持することは難しいのですが、技術的な共通性をもつレーザ光学実験装置とレーザ干渉計で技術を繋ぐことで現在に至っています。
それから、文化施設予算の減少といった流れも2000年頃から始まり、科学館からの受注を期待していた当社には、厳しい現実を突きつけられることになりました。そのため新たな顧客は、メーカーや大学の研究用途に変化し、1件当たりの予算額は減少するので件数で補っていきました。ただ、内容のバラエティー性に富む点では、仕事として興味が尽きませんでした。
さらに、再生可能エネルギーの重要性に気付いたのも2000年頃でした。太陽エネルギーの利用には、もともと関心が高かったこともありますが、かつては自動車メーカーの一員として、石油の消費を増やし、それにより二酸化炭素などの温室効果ガスを増加させてしまったことに後ろめたさを感じていました。
そのため、「再生可能エネルギー利用に多少なりとも貢献したい」と考え、太陽光配光プリズム『天窓気分』といった製品を開発しました。しかし、建材というまったく経験のない分野の製品だったので、展示会などでは高い評価をいただきましたが、販売には苦戦しました。現在は、ノウハウだけを提供する形で製造は中止しています。
最近では、工科系大学との共同研究で「太陽電池を用いた電動アシスト自転車の充電の実用化」を進めており、引き続き再生可能エネルギーを利用した環境関連製品への取り組みを行っています。
- 会社名
- 有限会社 石川光学造形研究所
- 所在地
- 東京都品川区
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