年に約4,000万トンの下水が流れ込み、その下水汚泥の処理に頭を痛めていたという。
処理場の沈殿池で水と分離した下水汚泥は濃縮、脱水されてケーキ状のものに変わる。これが年間13,500トンの量になる。脱水したケーキに空気を送って適度にかき混ぜると発酵して堆肥にも生まれ変えることもできる。 下水道で発生する汚泥を1,000℃以上の高温で焼却すると、焼却灰が年約900トン発生し、1997年度まで管理型最終処分場に埋め立てていたが、処分場の確保が困難な状況となり、処分方法を見直した結果、1998年8月から溶融結晶化炉の稼動により焼却灰を溶融処理して人工骨材化し、建設資材として利用することができるようになった。
問題は、
①焼却灰を溶融結晶化する過程で発生するばいじんの『溶融飛灰』
②年1回の定期修繕に伴う溶融結晶化炉停止時の『焼却灰』
③溶融過程で発生する『不良スラグ』などの処理に頭を痛めていたのである。
これらの廃棄物のさらなる用途がないかと模索している時、『溶融飛灰』『不良スラグ』『焼却灰』などを日本下水道事業団に分析調査を依頼したことから意外な事実が判明したのである。
分析した結果、1トンあたりの溶融飛灰から約1.7?2.1kg、不良スラグから約1.9kg、焼却灰から29?35gの金が、それぞれ含有することが判明したのである。高品質の金鉱脈の1トンあたりの金含有量は50gからすれば、この含有量は驚きの結果である。
溶融飛灰などの金の含有量試験により、一定の含有が認められる場合には有価物として金属製錬会社へ売却することが可能となり、廃棄物扱いから貴重な資源を含有した有価物として売却できる道ができたのである。
『金』が含まれている焼却灰などは売却が可能であることから、2008年10月から売却を始め、すでに売却収入として年間約4,000万円ともなっているという。
全国にあるすべての下水処理場から金が高濃度で出てくれれば、まさに下水汚泥は『都市鉱山』となり、全国の下水処理場関係者に注目され、ひょっとしたら『クリーンレイク諏訪』と同じように『金』の回収ができるのではないか、と期待したものの、他の地区からも同様な話はまだ確認されていない。
そうすると、なぜクリーンレイク諏訪の汚泥に多くの『金』が含まれているかとする疑問が出てくる。下水道汚泥に含有する『金』がどこに由来するのかはっきりとしたことは解明されていないものの、可能性としては以下が推測されている。
(1)諏訪地域は精密機械工場が多いため、金メッキを含む排水に『金』が含まれている
(2)金鉱山が多くある『黒鉱ベルト地帯』に諏訪地域が位置しているため、地中の金属鉱脈から『金』が温泉水に溶け出している
(3)諏訪湖周辺の歯医者や旅館・料理屋(金粉料理)などの排水に『金』が含まれている
一方、ハイテクの電子機器には多くの『金』などレアメタルが使用されて、今や地下に眠る資源が、徐々に地上で蓄積されるようになってきた。つまり『都市鉱山』の出現である。
地下資源だけではなく地上資源も参入すれば、日本は『金』『銀』は世界一の資源大国となるのである。
下水道処理場に思わぬ『金』という『都市鉱山』が発見された。肥料に必要なリンも下水道処理場から回収方法も検討されている。意外な所に『都市鉱山』があることも再認識が必要で、まだまだ、思わぬ所に『都市鉱山』が眠っているのではないだろうか?
都市鉱山の鉱脈を下水道処理場以外でも探す必要があるだろう。
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