①はじめに
新型コロナウイルスの収束が進み、社会はニューノーマルな時代に移行しつつある中、ChatGPTやAIの進化、そして5Gの普及などの技術革新が急速に進展しており、これによりあらゆる分野で新たな可能性が生まれている。同時に、地政学的リスクの影響や、市場・顧客ニーズの複雑化、多様化するニーズへの対応といった課題も製造業を取り巻く環境に大きな影響を与えつつある。
生産現場においては、製造ラインや工場全体の効率を向上させ、迅速かつ柔軟な生産体制の構築が重要となっている。こうした課題に対処するためには、デジタル技術を活用したマシンの導入や各種基幹システムの融合など、従来の単一のマシンやラインでの管理から、より包括的なデータの収集と分析を通じて、生産プロセスを最適化し、生産性を向上させる「生産プロセスのデジタルトランスフォーメーション(DX)によるスマートファクトリの構築」が必要ではないかと考える。
具体的には、生産状況、稼動状況をデータ化し、リアルタイムにモニタリングすること、装置の連携・自律的な最適化による生産プロセスを再構築することなどである。こうしたアプローチによって、省人化や自動化、効率化が促進され、人的ミスの削減や生産効率の向上が期待される。
当社は1938年の会社創立以来、コーポレートスローガンである「Mind&Technology」のもと、本社のある日本を中心に、世界100個所以上に拠点を構え、製品をお使いいただいている185カ国以上のお客様をサポートしてきた。工業用ミシン事業を中心に家庭用ミシン、グループ事業を展開している。
1987年より、マウンタの開発・製造・販売を手掛ける産業装置事業に参入。以来、マウンタの他にも印刷機、検査機とラインアップを充実させ、近年では実装工程ラインの前後工程の自動化にも領域を拡大している。前工程では部品供給管理の効率化を実現する「ISMシリーズ」や、実装機の技術を活用した挿入工程の自動化を実現する「JMシリーズ」、さらにJMシリーズで培われた技術を進化させ、実装基板上のすべての部品の組み立てを自動化するマシンを生み出している。
本記事においては、実装工程の変革を実現すべく、高速ヘッドモデル「プラネットヘッドP20S」をラインナップに加え進化した「高速フレキシブルマウンタLX-8」を紹介する。
②LX-8の概要
本機は高速性、汎用性を同時に実現し、お客様の生産性を極限まで高める次世代マウンタというコンセプトのもと企画開発された。クラス最高の超高速搭載と、面積生産性、幅広い部品対応力、段取り性の高さを特徴とするマシンである(写真1)。
主要機構の搭載ヘッドは、「高速搭載を実現するロータリ型“プラネットヘッドP20S”」と「汎用力の高いインライン型“匠ヘッド”」を、単体機の中でフレキシブルに入れ替えることができる。
また、使いやすさを追求したUIなど、今回のマシンから導入された新機能をはじめ、フィーダは160本装備可能とし高い段取り性を有している。さらに部品対応力においては、極小部品から大型部品まで幅広くカバーする。お客様の使いやすさを意識しつつ、市場ニーズを捉え、お客様の要望に応える新型マウンタである。
③特徴
3-1 クラス最高水準の超高速搭載、高い面積生産性による高効率生産
実装機において求められる、もっとも重要な要素である高速及び面積生産性において、LX-8は、2ヘッドクラス最高水準の105,000CPH※を誇る超高速搭載を実現(※プラネットヘッドP20S×2の場合)。大型部品など汎用力の高い匠ヘッドでも、クラス最高水準の94,000CPHの超高速搭載を実現した。
搭載ヘッドを基板搬送方向に2基並べて配置したことにより、2基のヘッドが完全独立可動可能で高生産性を有し、ヘッドの交換性やメンテナンス性も確保した。また、マウンタの外観サイズをほぼ変更せずにヘッドやフィーダを最適配置することで、高い面積生産性による高効率生産を実現した。
3-2 2種類のヘッド構成
LX-8は、20本のノズルで単軸ずつ連続吸着するロータリ構造の「プラネットヘッドP20S」と、8本のノズルで同期吸着するインライン構造の「匠ヘッド」の2種類から、それぞれの特徴に合わせた選択が可能である。
(1)プラネットヘッド P20S
新開発のプラネットヘッドP20Sにおいては、搭載部品高さに合わせヘッド高さを自動可変し、生産性向上と部品対応力向上を実現する(写真2)。
0201、03015などの極小チップでも安定して吸着するために、部品は常時単軸で吸着するため、複数軸での痛み分けが発生せず部品中心を吸着可能。さらに自動吸着位置補正機能で部品の吸着位置を自動的に補正し吸着率を高めている。
プラネットヘッド P20Sのセンタリング方法は、ヘッドに搭載されたカメラでチップの下面、側面から撮影することにより、表裏反転検出、チップ立ち検査、部品有無を検出し、極小部品の高品質な搭載を実現。吸着から搭載までの間にヘッド内で部品センタリングが完了しているため、マシン本体側に配置したカメラ上を認識のために通過せず、吸着位置から搭載位置へ直接移動することにより搭載タクトを向上した。
(2)匠ヘッド
6段階にヘッド高さを自動可変する匠ヘッド(写真3)でも、生産性向上と部品対応力向上を両立する。8軸同時吸着可能なインライン型ヘッドで部品側面からレーザ認識することにより、チップ立ち検査、部品有無を検出できる。吸着から搭載までの間にヘッド内で部品センタリングが完了し、吸着位置から搭載位置へ直接移動するため、搭載タクトが向上した。また、異形部品対応として、部品の形状やリード、ボールを部品認識VCSカメラで行うことで、部品の位置決めと合わせてリードの曲がり、ボールの欠落などの接続品質に必要な検査が可能。
部品認識用VCSカメラにより、大視野角でありながら高解像度化し、小型部品でも高精度に認識することができる。さらにタクトアップに貢献したマルチ認識※(S-VCS)の選択も可能である(※詳細はお問い合わせいただきたい)。
また、部品認識用VCSカメラの照明は、部品の形状、種類により、反射照明、サイド照明、透過照明のうち、最適な照明を選択することで、安定した部品認識を実現する。
さらに、各種異形部品に対応した異形対応ノズルや、汎用ビジョンティーチングによるデータ作成が簡易に行えることも特徴である。
3-3 高い汎用性
LX-8は、極小・小型チップは「プラネットヘッドP20S」、小型・中・大型部品や異形部品は「匠ヘッド」で生産。対応部品サイズは0201から65mm角、または10×90mmまで、部品高さは最大25mmまでと幅広い部品搭載に対応する。
この2種類のヘッドを組み合わせることにより、極小部品から大型部品までカバーできる。
また、LX-8はレイアウトを変えることなく生産品目に合わせてヘッドを交換することが可能。
2種類のヘッドを最適配置することでラインバランスを調整し、変種変量生産、多品種少量生産などの生産方式でも、フレキシブルに対応する高い汎用性で最適なスループットを実現する。
3-4 業界最多のフィーダ装着数
フィーダRF08AS(8mm幅)換算で1台当たり160本のクラス最大のフィーダ装着数を誇る(図1)。複数基板分のフィーダをあらかじめ配置して、生産機種切替時のフィーダ交換時間を減らすことにより段取り替え時間の大幅短縮、生産準備の簡略化・効率化を実現した。
3-5 段取り時間の短縮
段取り時間を短縮するため、当社実装統合システムソフトウエア「JaNets」を用い、複数生産機種のクラスタ最適化を実施し、複数のプログラムに渡るフィーダの一括配置を実現した。
3-6 待機バッファステーションの設置
左右が完全に独立して可動するヘッドとそれに対応した左右搭載ステーション、及びその間の待機バッファステーションの設置により、部品切れ待ち時間などチョコ停によるタクトロスも削減した(図2)。
片側ヘッドの生産が停止しても、もう片側ヘッドは待機バッファステーションに基板を送って生産を継続することで、ライン全体が一斉に停止するリスクをデュアルレーン搬送に依存することなく回避可能である。
- 会社名
- JUKIオートメーションシステムズ(株)
- 所在地
- 東京都多摩市鶴牧2-11-1
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