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テクニカルレポート
2025.09.25
IPC規格導入と「7-31BV-JP はんだ付けされる電子組立品の要求事項および電子組立品の許容基準〜車載用途向け追加基準 日本委員会タスクグループ」の活動状況
(株)東海理化 生技開発部 接合生技室
鈴木 貴人

4. 車載向け追加規格委員会 日本地区(名称 : 7-31BV-JP )の立ち上げ

日本国内唯一のIPC総合代理店であり、IPCスタッフでもある(株)ジャパンユニックスの河野友作氏がIPCとのリエゾン(仲介役)として車載向け追加規格日本委員会(7-31BV-JP)を2022年6月に立ち上げ、委員長は小職、副委員長はトヨタ自動車(株)の西森久雄氏が就任した。

この車載向け追加規格委員会とは、IPC-A-610「電子組立品の許容基準」とIPC-J-STD-001「はんだ付けされる電気および電子組立品に関する要求事項」はアミューズメント、民生機器、車載、産業機器、航空宇宙など全分野をカバーしているが、規格の変更には各業界の賛成多数が必要であり、審議に膨大な時間を要する。そこで、車載関連企業が委員となり、車載向けの追加規格を制定する。日本委員会は25年7月時点で23社49名、アドバイザリーボードには大阪大学の菅沼克昭特任教授で構成している(図4)。

図4 7-31BV-JPの組織票(作成:(株)ジャパンユニックス)

 

日本委員会は年間4回の会合(Web、直接各2回)を実施している。最大の特色は「各委員が顧客やサプライヤーの立場に関係なく討議できる」ことであり、顧客とサプライヤーが忌憚なく意見を交わしている。一方で従来採用していた規格の問題は、制定する委員が多くの場合メーカーから選ばれており、顧客側の意向が反映されにくいことであった。今回のIPC規格の改定は概ね3〜4年毎である。

各地域委員会の意見は毎年春にアメリカで開かれるAPEXのカンファレンスで全体委員会(7-31BV)が開かれ、その中で討議と採択をする。全体の委員長はRobert Bosch GmbH Udo Welzel氏である。Udo氏は毎年秋に来日し、(株)ジャパンユニックス主催の最新技術セミナー講師と日本委員会(7-31BV-JP)へ参加し、我々と討議する(図5)。

図5 IPC委員会の様子

 

なお、委員会への参加はIPCへの登録が必要であるが、全て無料である。

 

5. 日本委員会の活動

主に車載向けはんだ付けの外観基準について議論する。IPC-A-610とJ-STD-001の車載向け追加規格は25年末内に最新版のIPC-A-610JAおよびJ-STD-001JAがリリースされ、その中には日本委員会からの提案も採用される。サフィックスの“J”は改訂(revision)、“A”は車載(Automotive)を示す。日本委員会からの提案は表面実装コネクタで電気的導通を目的とせず、プリント配線板と表面実装コネクタを固定する端子部のはんだ付け部の規格が無く、外観基準見本の作成や工程監査時に課題となっていたが、今回の改定で解決される。

現在の委員会は2028年頃発行される次期revision KAについて、スルーホールリフローはんだ充填、SOICパッケージのはんだ接触、セラミックコンデンサの欠けや割れの定義などを議論している。委員会ははんだ付けに限定せず、電子回路基板全般の意見交換や提案も受け付けている。例えば、基板の洗浄度、基板反り量の決定経緯、プレスフィット端子など、過去にIPCで議論や評価した内容の確認も可能である。

 

6. 最後に

IPC規格の導入により、特に海外の顧客やサプライヤーとビジネスが円滑になった。また、車載向け追加規格日本委員会が立ち上がり、実質的な国際規格であるIPCへ参画した。

IPCへの積極的な参画は、日系企業の国際的なプレゼンス向上とビジネス拡大に直結する。ぜひ本委員会へのご参加をご検討いただけましたら幸いです。

 

<参考資料>

1)(株)ジャパンユニックス : IPCと標準規格

https://www.japanunix.com/ipc/

2)藤原 隆史 : EBSD 解析による鉛フリーはんだ疲労の定量化、

第52回 全豊田研究発表会、No.40、2017

3)西森 久雄 : 車載電子部品の品質確保の取り組み、

第34回 マイクロエレクトロニクスシンポジウム、2024

<連絡先>

(株)東海理化 生技開発部 鈴木 貴人(のりひと)

norihito.suzuki@exc.tokai-rika.co.jp