UTF接合方式の基本構成
前稿で紹介したようにUTFコネクタには様々な構成が可能であるが、基本的な接合機構は図4に示されたように極めて単純である。フレキシブル基板と相手側プリント基板、あるいは電子部品には同じ配列でパッドが形成されており、両者を重ね合わせた上からUTFコネクタ表面に形成されているマイクロバンプが押し込まれ、電気的接続が完了する。ここで、マイクロバンプは最終的な位置合わせと加圧の役割を果たしている。バンプ配列を効率良く設計すれば、多ピン接続を極めて小さなスペースで、高さが0.3mm未満という超低背実装が実現する(図5)。注意すべきは、マイクロバンプ自体は電気接合に寄与しておらず、機械的な強度が満足されるのであれば、電気電導性のある金属である必然性はないことである。このことは、UTFコネクタを設計製作するに際して、材料と製造方法の選択肢を広げている。
図4 UTF接続の基本構成
図5 UTFコネクタによる高密度フレキシブル基板の 硬質プリント基板への接続(半固定タイプ)
高密度フレキシブル同士を接続することを目的として設計されたFTFシリーズは、基本構成の硬質プリント基板の代わりに、相手側のフレキシブル基板と、機械的強度を確保するための補強板を入れた形になっている(図6)。二つのフレキシブル基板端末部は互いに鏡像関係にある接続パッドアレイ配列が形成されており、位置合わせ工具を使って両者のアレイパタンを合わせた上で、バンプアレイが均一な圧力を加え、接続を完了する。圧力を除去すれば、接続は容易に解除できる。
図6 FTFシリーズ接続の基本構成
図7 FTFシリーズコネクタの例(セパレートタイプ)
図8 FTFシリーズの接続キット
図9 TFTシリーズの接続完了状態(半固定タイプ)
図10 TFTシリーズコネクタの例(ヒンジ開閉タイプ)
FTFシリーズの接続プロセス
図7に示したのは、FTFシリーズの中のセパレートタイプの例である。サブストレートはステンレススチールにポリイミド被服したもので、左側の部品には金属バンプアレイが形成されている。図8はおす・めすのコネクタセットに、接続する2枚のフレキシブル基板と、位置合わせガイド治具を合わせて示したものである。このガイド治具はコネクタごとのカスタム設計になるが、この場合には、台座の隅に4本のガイドピンが立てられている。接続の手順としては、ガイド治具の上にまず、おす側のコネクタを置き、その上に2枚のフレキシブル基板を重ねて置き、最後にめす側コネクタの爪を、おすのコネクタの穴にはめ込むと接続が完了する(図9)。接続完了後には、位置合わせ治具は除去される。この例での接続厚さは約0.8mmである。従来のフライイング・コネクタに比べると3分の1の厚さに抑えられている。コネクタ自体の形状も大幅に小型化、軽量化されており、薄型フレキシブル基板で十分支えられる程度の重量になっており、積極的な固定は必要ない。
このように、FTFシリーズの接続作業は、簡単な治具を使えば、特殊な専用アプリケータは必要なく、他の一般組み立て作業の一部として処理することができる。
図7~図9に示した例では、バンプアレイは0.8mmピッチで3列になっており、フレキシブル基板としては、0.27mmピッチの配線に対応している。バンプアレイのピッチを0.6mm以下にすることはそれほど難しくはない。したがって配線密度が0.2mm以下のフレキシブル基板にも十分対応することが可能である。なお、ここで示した設計例はデモンストレーション用であるために、位置合わせガイドや固定のためのスペースを大きくとってあり、実用設計では一回り以上の小型化が可能である。
コネクタの製造方法とバリエーション
前稿で紹介したように、基本構成のUTFコネクタは、ラミネーション、フォトリソグラフィ、化学エッチングのプロセスを組み合せて形成している。したがって、バンプピッチなどの寸歩精度は、きわめて高い精度を確保できる。これらの加工プロセスでは高価で設計変更が難しい金型が必要なく、設計変更が容易である。また、汎用コネクタとしてピン数などの品揃えを行うに際しての金型を含む治具への投資を最小限度に抑えることができる。さらに、UTFコネクタの構成は、金属の多段プレスとプラスチックモールドを組み合せた形での製造も可能であり、量産低コスト化が期待できる。
図10に示したのは、同じ加工工程を使いながら、異なるコネクタ構成を実現した例である。この構成では、おす・めすのコネクタはヒンジで繋がれていて、繰り返し開閉することができるようになっている。このような構成で繰り返えされる接続の作業性が著しく改善されている。
おわりに
UTF接合方式はまったく新しい接続機構をもった高密度フレキシブル基板接続技術コンセプトであり、様々なバリエーションが期待できる。本稿で紹介したFTFシリーズはその一例であるが、これまで実用的な技術がなかった、高密度フレキシブル基板同士の繰り返し脱着を可能にし、携帯用電子機器の実装設計の自由度を大きく広げたといえる。その他にも、チップ部品の直接実装などにおいても、新しい形態の高密度接合が期待できる。
<参 考 文 献>
1)“3D Etching Process of the Hybrid Laminate of Metal Foils on Polyimide Film to Build Ultra Thin Connectors for High Density Flexible Circuits” Dominique Numakura, et al, Oct. 2011, PCMI International Conference, Boston
2)DKNリサーチホームページ http://www.dknresearchllc.com
3)“Ultra Thin Connection Systems for High Density Flexible Circuits”(高密度フレキシブル基板 用超低背コネクタシステム)、沼倉研史、第127回継電器・コンタクトテクノロジ研究会、2011年5月号
4)「高密度フレキシブル基板用超薄型コネクタ」沼倉研史、エレクトロニクス実装技術、2011年9月号
5)「高密度フレキシブル基板同士を直接接続する小型軽量のUTFコネクタ、FTFシリーズを開発」DKNリサーチニュースリリース、2012年1月号
- 会社名
- DKNリサーチLLC , 平井精密工業(株)
- 所在地
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