はじめに
携帯用電子機器の小型軽量化に伴い、そこで使われるフレキシブル基板にはさらなる薄型、高密度化、またコネクタについても低背化、狭ピッチ化が求められているが、従来技術の延長では限界が見え始めている。UTFコネクタシリーズは、そのような限界を越えるために、新しい接合機構を取り入れた接続技術として開発されてきている。UTFコネクタはきわめて幅広い設計自由度をもっており、今回新たに高密度フレキシブル基板同士をきわめて小さなスペースで直接接続するFTFシリーズが実用化されたので、その詳細を紹介する。
従来技術の動向
図1 BTBコネクタによるフレキシブル基板の接続
図2 フライイングコネクタによるフレキシブル基板の接続(めす側)
図3 フライイングコネクタのための端子取り付け(めす側)
前稿でも説明したように(2011年9月号)、多くの携帯機器の配線を1枚のフレキシブル基板で処理するような設計は可能であり、実際に以前のカメラなどにはそのような配線設計がなされていた。しかしながら最近のスマートフォンやタブレットPC、デジタルカメラなどでは、組み立て工程でのハンドリング性、リペア性、また全体の工程歩留まりなどを考慮して、フレキシブル基板を機能別に、いくつかのブロックに分割し、間をコネクタで接続する構成が多くなっている。最近の携帯電話などでは5~10組のコネクタが使われており、当然のことながら、電子機器の機能が多いほどコネクタの使用個所が多くなっている。
これらのフレキシブル基板の接続が、はんだ付けやACM(Anisotropic Conductive Material)のような永久接続ではなく、繰り返し脱着が可能なコネクタ方式が採用されているのには、いくつかの理由がある。もっとも大きな要因は、回路のモジュール化とその交換性をもたせることである。携帯用電子機器のディスプレイやカメラ、センサなどのデバイスはフレキシブル基板を使ってモジュール化され、専門のメーカーにおいて製造、供給される。セットメーカーでは、これらの標準化されたモジュールを組み合わせて、最終製品の構成を設計する。また実際の組み立て工程では、歩留まりの向上のため、また不具合の修理のために、モジュールの交換が必要となり、繰り返し着脱性が要求されることになる。実際にはいったん接続されたコネクタがはずされて、さらに別な部品と接続される確率は決して高いものではないが、全体の組み立てプロセスの生産性や信頼性を確保するために、10回以上の繰り返し脱着能力が要求されることになる。また最近では、使い捨てモジュールの採用が増えており、ここでも繰り返し脱着能力が要求されることになる。
このような高密度フレキシブル基板の接合への要求に対して、様々な接続方式やコネクタが提案され、実用化されている。もっとも実績が長く、現在でもよく使われているのがFFCコネクタとBTBコネクタである(図1)。これらのコネクタは薄型化に限界があり、それを越える接続技術としてUTFコネクタシリーズが開発されたことは前稿で紹介した通りである。ただし、これらのコネクタは、フレキシブル基板の端末を硬質プリント基板に接続することを前提にしており、薄くて柔らかいフレキシブル基板同士の接続には、補強板などでリジッド化しない限り対応できない。
フレキシブル基板同士を接続する技術としては、これまでフライイング・コネクタが広く使われている(図2)。ただし、このコネクタが対応できるのは、回路密度が2.54mmピッチの設計だけで、高密度回路にはそのままでは使えない。フライイング・コネクタは筐体や基板上に固定するのではなく、フレキシブル基板だけでその重量を支えることを前提としている。しかし、ハウジングの厚さは2.5mm以上あり、それなりの重量があるために、フレキシブル基板自体にある程度の強度(剛性)が必要、現実にはベースフィルムの厚さは25、ないし50ミクロンで、導体の上にはフィルムカバーレイがかけられていなければならない。また、フライイング・コネクタは、あらかじめ接続端末部に2.54mmピッチで端子を打ち込み、その上にプラスチックのハウジングを装着しておくが、この作業には専用のアプリケータが必要である。図3に示したのは、コネクタのめす側であるが、相手側のフレキシブル基板には、おす側のコネクタが装着されることになる。
フライイング・コネクタには、このような使用条件があるために、携帯用電子機器に使われる高密度で薄いフレキシブル基板同士の接続への対応は現実的ではない。しかし、UTFコネクタの場合は、保持機構を適正設計することにより、対応が可能になる。
- 会社名
- DKNリサーチLLC , 平井精密工業(株)
- 所在地
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