③材料、基板、装置が実装技術を支える
実装技術は、特定の一つの技術によって成り立つものではない。そこには、多種多様な材料、部品、基板、製造装置、検査装置が関係している。
例えば、電子部品を基板へ接続するはんだには、電気を通すだけでなく、温度変化や振動に耐えることが求められる。自動車では、走行中の振動や寒暖差に長期間さらされる。パワー半導体の周辺では高温になることも多く、接合材料には従来以上の耐熱性と信頼性が必要になる。
半導体や電子部品を保護する封止樹脂にも、多くの役割がある。外部の湿気やほこりから守るだけでなく、温度変化による膨張と収縮、材料同士の熱膨張率の違いにも対応しなければならない。放熱性を高めるため、樹脂の中に熱を伝えやすいセラミック粒子などを配合することも行われている。
プリント配線板や半導体パッケージ基板に使われる絶縁材料には、微細な配線を形成できる加工性、高い絶縁性、低い誘電損失、耐熱性、寸法安定性などが求められる。高速信号を扱う機器では、材料中で信号が失われにくいことが重要である。
一方、AI用半導体などの大型パッケージでは、基板の反りや熱膨張が大きな課題となる。そのため、従来の有機材料だけでなく、ガラスをコア材料として使用する基板も検討されている。ガラスは寸法安定性に優れ、微細配線や高速信号への対応が期待されるが、穴あけ、配線形成、割れへの対策など、製造面で解決すべき課題も多い。
実装を支える製造装置も重要である。はんだペーストを印刷する装置、電子部品を高速で搭載するマウンタ、加熱によって接合するリフロー炉、外観を確認する自動光学検査装置、内部の接合状態を調べるX線検査装置など、多数の装置が一つの生産ラインを構成している。
部品が小さくなり、接合部が部品の下に隠れるようになると、人の目だけで良否を判定することは難しい。そのため、三次元計測、X線CT、AIを利用した画像判定など、検査技術も高度化している。
ここで注目したいのが、日本企業の存在である。日本は、スマートフォンやパソコンなどの完成品分野では、かつてほど大きな存在感を示していない。しかし、積層セラミックコンデンサをはじめとする電子部品、半導体用材料、基板材料、実装装置、検査装置、精密加工技術などでは、今も高い技術力を持つ企業が数多く存在する。
これらの企業の多くは、一般消費者には名前を知られていないかもしれない。しかし、その技術がなければ、世界の半導体や電子機器を安定して大量生産することは難しい。
完成品の表面には現れなくても、内部の材料や部品、製造工程を通じて世界の電子産業を支えている。まさに「見えない技術」である。
今後、日本の電子産業を考えるときには、完成品の市場占有率だけで評価するのではなく、材料、部品、装置、加工技術を含めた産業全体のつながりを見ることが重要である。
④実装技術が描く電子産業の未来
これからの実装技術には、さらに多くの課題が待っている。
・第一は、発熱への対応である。
半導体の性能が高くなるほど、一般に消費電力と発熱も増加する。特にAI用半導体やデータセンターでは、半導体チップだけでなく、パッケージ、基板、電源、冷却装置まで含めた熱設計が不可欠である。熱を効率よく外部へ移動させるため、放熱シート、金属材料、セラミックス、ダイヤモンドなど、新しい熱対策材料の研究も進められている。
・第二は、高速信号への対応である。
信号速度が高くなると、電気配線で遠くまで信号を送ることが難しくなる。配線抵抗や誘電損失のほか、配線間の干渉や電磁ノイズも問題になる。このため、将来は半導体の近くまで光信号を導き、電気信号と光信号を使い分ける光電融合技術が重要になると考えられる。
しかし、光を使えばすべてが簡単になるわけではない。光源、光導波路、半導体、光ファイバを、極めて高い精度で位置合わせし、安定して接続しなければならない。ここでも実装技術が中心的な役割を担う。
・第三は、信頼性と環境への対応である。
自動車、医療、航空・宇宙などの分野では、電子機器が故障した場合、人命や社会インフラに大きな影響を与える可能性がある。高温、低温、湿気、振動、放射線など、厳しい環境でも長期間動作する実装構造が必要になる。
同時に、電子機器の生産量が増えるほど、資源消費や廃棄物の問題も大きくなる。材料を減らす、小型化する、長寿命化する、修理しやすくする、回収した材料を再利用するといった考え方も、今後の実装設計に求められる。
このように考えると、将来の実装技術者には、はんだ付けや部品搭載だけでなく、材料、電気、機械、熱、光、化学、品質、製造など、幅広い知識が必要とされる。個々の技術を深く理解すると同時に、それらをシステムとしてまとめる視点が重要である。
実装技術は、部品を基板に載せる技術から、電子システム全体を設計する技術へと変わりつつある(表1参照)。

表1 将来の課題と実装技術
⑤おわりに
半導体は、現代の電子機器に欠かせない重要な存在である。しかし、半導体だけで社会を動かすことはできない。
電子部品、プリント配線板、半導体パッケージ、接合材料、封止材料、放熱材料、製造装置、検査装置など、多くの技術が互いに結び付き、一つのシステムとして機能して初めて、高性能で信頼性の高い電子機器が完成する。
実装技術は、これらの技術をつなぐ役割を担っている。
これまで電子産業の発展は、半導体の微細化や電子部品の小型化によって語られることが多かった。しかし、これからは、異なる半導体や部品、材料をどのように組み合わせ、システム全体としての性能を高めるかが、ますます重要になる。
その意味で、実装技術は電子産業の最後の工程ではない。製品の性能、信頼性、消費電力、価格、さらには環境負荷まで左右する、製品開発の中心的な技術である。
そして日本には、電子部品、材料、基板、製造装置、検査技術、精密加工など、実装を支える多くの優れた企業が存在する。その中には、一般にはあまり知られていなくても、世界市場で重要な役割を果たしている企業も少なくない。
表からは見えにくい技術が、世界の電子産業を支えている。
これからの日本のものづくりに必要なのは、個々の優れた技術を守るだけではなく、それらを結び付け、新しい用途や市場へ展開することである。材料メーカー、電子部品メーカー、基板メーカー、装置メーカー、大学や研究機関、そして製品を使用する企業が互いに連携することで、日本の「見えない技術」はさらに大きな価値を生み出すことができる。
実装技術の未来を考えることは、電子産業の未来を考えることにほかならない。
- 会社名
- 特定非営利活動法人 サーキットネットワーク
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