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テクニカルレポート
2024.09.04
実装技術初心者のための『パスポート』 〜知のインプット/アウトプットのこつ〜
第26回 情報収集のための海外調査
特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 横浜支部
青木 正光

情報収集するのに日本国内だけではなく、広く海外にも目を向けての調査も必要である。今回、情報収集のための海外調査方法について紹介する。

先ず、筆者の体験談を紹介しつつ参考となる点を解説する。

 

①素朴な疑問

筆者の最初の業務は、カラーテレビに使用される紙フェノール銅張積層板の開発であった。当時、日本はカラーテレビや音響製品などの民生機器に使用されるプリント配線板の生産が主流であった。そのため紙フェノール銅張積層板を使った片面プリント配線板が大量に生産されていた。カラーテレビを作れば売れる時代で、当時は生産が間に合わない程の需要があった。

1970年代当時、市場を引っ張る電気製品はカラーテレビで、大量に生産されていた。そして如何に大量にタイムリーに生産するかであった。生産性向上のために、当時注目されたのは低温打抜き性に優れる紙フェノール銅張積層板の開発であった。

しかも、当時のカラーテレビはブラウン管式のカラーテレビであったので奥行きもあり、比較的大きなサイズの片面プリント配線板が使用されていた。

カラーテレビ1台にだいたい1/12m2前後のサイズが使用されていた。ブラウン管のため奥行きがあり、テレビは据え置き型で十分なスペースがあったため大きいプリント配線板を搭載することができ、高密度配線板にしてサイズを縮小する必要はなかった。

カラーテレビは米国のRCAなどで生産しており、1960年代に綺麗なRCAのカラーテレビの画像を見たことがあった。日本では各社がRCAに負けないカラーテレビを競って商品化する時代でもあった。

このような時、米国の技術雑誌、例えば “Insulation Circuits”、“Printed Circuit Fabrication”などを毎月、読んでいても紙フェノール銅張積層板などの記事を読んだことがなかったので、どうも日本と異なる動きを米国ではしているのでは? ・ ・・ と疑問をもった。

米国の月刊誌で、どうも米国の産業構造が変わってきているのでは?とも思うようになり、米国に訪問して1度、自分の目で確かめないといけないなと思うようになっていた1)

 

②初めての海外調査

筆者が初めて出張で海外に出かけたのは、入社して10年経過した頃に理解のある技師長から「日本だけを見るのではなく、広く世界を見なさい。そろそろ海外に自分で計画して出かけて色々と見聞してくることも大事である」とアドバイスして頂け、一人、米国に出張することを計画した。

プリント配線板関係では多くの技術が米国から当時入ってきていたので、調査対象として「米国」を選んだ。

初めての海外調査で、人脈も構築したいし、米国の産業動向をこの目で確かめたいしと思っていた。幸いにもIPCの活動状況は既に調べていたので、そこで選んだのがIPCサンフランシスコ大会への参加であった。参加してできるだけ多くの人脈を構築しつつ米国の産業動向を調べるのに好都合ではないかと思った。

一人で西海岸から東海岸まで2週間の海外出張を不安交じりで計画した。この初めての海外出張がきっかけで、以降の海外出張では自分ながら工夫して出張するようになった。

そこで、今回、海外取材で役に立つ方法をいくつか紹介したいと思う。

 

③調査で必要となった州地図

切符・ホテルの手配などは筆者の所属した企業の関連会社に旅行専門を取り扱う関連会社があったので、出張計画書を作成すればそれに基づいて、航空券、ホテルなどの予約を事前に準備してくれて、発券してパスポート入れ、名札、簡単な観光地図なども用意してくれていた。

簡単な観光地図は、例えばサンフランシスコの都市の地図が提供され、空港から中心街の道路地図が紹介され、ホテル、レストラン、銀行なども紹介されており、それなりに便利なものであった。しかも日本語で解説されていたので重宝に使っていた地図であった。

ところが企業に訪問するとなるとこのような観光地図では不十分である。サンフランシスコであれば、さらに電車やタクシーを使ってシリコンバレーまで行く必要がある。

そこで広い米国なので、詳細地図が必要である。初期の頃は訪問する企業がどこの州で空港からどのぐらいの距離があるかなどを調べる必要があり、簡単な地図では駄目で大きな詳細な地図が必要となった。まだ、インターネットなどの便利なツールがない頃の話しである。

出張で訪問する州の地図は、例えばRAND McNALLY社製の州地図(写真1)を丸善で1,500円前後の値段で購入していた。

写真1 欧米の地図類(RAND McNALLY/KOMPASS/ADAC etc)

 

④“Information”を使う

何度か一人で米国内を出張し始めて暫くして便利なことに気付いた。空港内や鉄道中央駅構内にある“Information”コーナーである。レンタカーなどのデスクが一杯あって当初は気付かなかったが、ある時、乗り継ぎで時間に余裕があり、空港内をブラブラして探索していたら「i」という字は“Information”の頭文字であることに気付いた。日本で言えば観光案内所と同類であることが分かった。

色々聞いてみると日本と同様に観光案内、ホテル案内、交通案内などがあり、情報提供してくれる場所として知ることになった。これを知って以来、初めて訪問した時は、先ず、この「i」に立ち寄って、今から宿泊するホテルまでのタクシー料金と時間などおおよそのことを確認し、そしてタクシーに乗車する時にホテルまでの料金と時間を確認するようにしていた。ほぼあえば乗車していたが、あわない場合は遠回りして高い運賃となるようにするドライバーと思って乗るのを避けた。

何度が「i」を使っていたら米国人が州地図を無料で入手しているのに気付いた。州地図が欲しいと言えば、別の見えない棚に保管している州地図(写真2)が貰えることが分かった。

この情報は貴重で、以降、「i」に立ち寄って州地図を入手して役立てた。丸善で購入すれば1,500円もする地図が無料で入手できるのだから大いに活用した。

写真2 ニューハンプシャー州の無料の州高速道路地図

 

⑤ガソリンスタンドの活用

ガソリンスタンドは和声英語で、正しい英語はガスステーションになる。地図はガソリンスタンドに行けばガソリンを入れたついでに置いてある地図を貰うことができることが判明した。

米国のマサチューセッツ州のボストンからニュージャージー州のアトランティックシティーまでの約560kmの長距離ドライブの時、ガソリンスタンドでニュージャージー州の地図を無料で貰えた。地図にはEXXONのマークが入っていたのでEXXONがサービスで提供(写真3)しているのだと思った。

写真3 ニュージャージー州の無料の地図

 

また、シリコンバレーに約2ヵ月間、長期滞在してレンタカーで通勤していた。この時、週末はヨセミテ公園やタホー湖(カリフォルニア州とネバダ州の境にある湖)などに行っていた。どこにガソリンスタンドがあってそこで給油しないとその先にはガソリンスタンドはないなどの情報も地図で確認してドライブしていた。まだ、カーナビがない時代の話である。

 

⑥レンタカーの利用

国土の広い米国は、電車がなく、車がないと身動きができない。空港に到着すればレンタカーデスクで手続きすると車を配車してくれる場所に連れて行って貰え、そこからレンターカーを借りて好きな所に行けた。

企業によっては、海外で事故を起こすと大変であることから日本からの出張でレンターカーの利用は禁止している場合もあった。

なお、カリフォルニア州やハワイ州は、国際免許証は不要で日本の自動車免許証で運転が可能であった。筆者はEUの自動車免許証を保有していたので、国際免許証は不要でどこの州でも運転が可能であった。

筆者は日本の企業を定年退職後は、米国系企業に入社したので、レンタカーで通勤していた。車があったので週末は前述のように一人で気ままに場所を選んで訪問していた。