④健全性評価と品質保証
修理の価値を最大化するには、修理後の信頼性を定量的に保証する評価体系が不可欠である。当社では、表2に示す多層的な検査手法を組み合わせ、品質保証体制を構築している。 検査結果は修理報告書としてデータ化し、顧客に対して透明性のあるトレーサビリティ情報を提供している。
さらに、修理実績データを基板種別や故障モード別に体系化したデータベースを構築し、今後はAIによる故障予兆診断や修理可否判定への応用を進めていく予定である。

表2 検査手法
⑤修理実績
当社では、創業以来培ってきた装置メンテナンスおよび改造技術を基盤に、半導体製造装置・液晶ディスプレイ製造装置をはじめ、業界を問わず多様な製造装置の回路基板修理を多数手がけている(写真2)。

写真2 当社回路基板修理
主要な修理対象は、電源制御基板、モータドライバ、I/Oボード、インバータユニット、通信インタフェース、真空制御ユニット、温調制御ユニットなど、多岐にわたる。
これらの修理では、コンデンサなどの有寿命部品や不具合部品の交換にとどまらず、回路基板パターンの焼損・断線修復、さらにはリプレース(代替設計)回路基板の作成など、再生を前提とした高度な技術対応を行っている。
これらを組み合わせることで、単なる延命ではなく「機能再生」と「信頼性向上」を同時に実現し、100%修理完動を目指す体制を確立している。
⑥サステナビリティへの貢献
循環型社会の構築が求められる今日、回路基板修理は環境負荷低減の観点からも大きな効果を発揮している。新品の回路基板製造に比べ、CO2排出量を約60〜80%削減できるとされており、特に輸入部品依存度の高い装置では、物流を含むScope3排出削減効果も大きい。ESG経営の観点からも、基板修理は有効な取り組みといえる。
また、修理技術の高度化は技能継承の面でも重要である。熟練技術者の経験やノウハウをデジタル化し、教育カリキュラムやマニュアル化を通じて次世代技術者へ伝承することで、人材育成と技術資産の持続可能性にも寄与している。
⑦今後の展望
今後の展望としては、表3に示すような取り組みが挙げられる。
回路基板修理は、延命技術・品質保証・環境配慮を三位一体で実現する、新しいものづくりの形として定着しつつある。
しかしながら、どれほど最新鋭の検査機器や解析装置を用いたとしても、最終的な判断と仕上げはエンジニアの経験と技能に依存していることは否めない。今後も、最新機器から得られるデータを継続的に蓄積・分析し、エンジニアのスキル向上と知見の体系化を進めることで、当社として回路基板修理技術のさらなる高度化と信頼性向上に貢献していく。

表3 今後の展望
⑧まとめ
回路基板修理は「コスト削減 × 品質保証 × 環境貢献」を同時に実現する、次世代型のサステナブル・メンテナンスモデルである。
AIと国際標準に裏打ちされた修理技術は、装置延命を超えて、製造業の競争力そのものを支える基盤技術となりつつある。
今後、国内製造業が脱炭素・リソース最適化を進める中で、回路基板修理は「現場を支える技術」から「経営を変革する技術」へと進化していくことが期待される。
延命は防衛であり、修理は未来への投資である。
以上、部品供給難時代における延命技術・品質保証・環境配慮の在り方について解説した。本稿が、今後のものづくり現場における持続可能な生産と価値創造の一助となれば幸いである。
<参考資料>
1) IPC-7711/7721 “電子アセンブリのトレーニングおよび認定プログラムの手直し、変更、および修理”
- 会社名
- (株)ハイテック・システムズ 東北技術センター メカトロパーツ部
- 所在地

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