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テクニカルレポート
2018.09.28
半導体業界の話題(第8回)
エレクトロニクス業界の発展を牽引してきた「ムーアの法則」はさらに続く⑦
厚木エレクトロニクス

 

2. DSA(Directed Self Assembly)

 

1. DSAの原理の説明

 DSAとは、日本語で「制限された自己組織化」と訳されているが、その意味は以下の説明で納得していただけると思う。

 DSAは、親水性の高分子と疎水性の高分子をつないで1本の高分子としたCopolymerを用いる。PS(Poly Stylene)とPMMA(Polymethylmethacrylate)がよく用いられ、図5のように結合してPS-b-PMMAと表記される場合が多い。

 

 このCopolymerを基板に塗布して200℃、5min程度加熱すると、図6のような整列したパターンが得られる。

 

 なぜ、図6のような指紋状の模様ができるのだろうか? 図7のように隣り合った分子のPS同士、PMMA同士が結合して整列する性質があり、その後、PSまたはPMMAをエッチングで除くと、図7右のような指紋状のパターンが得られる。

 

 この指紋状のパターンでは、半導体生産に用いることができないが、両サイドにまっすぐなガイドを設けておくと、そのガイドにならってまっすぐなLine&Spaceのパターンが得られる。

 この両サイドのガイドで制限するのをDirectedといい、すなわちこれがDSA技術である。

 

2. Grapho Epitaxy

 DSA技術でパターンを作成するには、Grapho EpitaxyとChemo Epitaxyの二通りの方法があるが、ここではGrapho Epitaxy法を説明する。

 図8はプロセス手順で、①基板にフォトレジストでガイドとなるパターンを形成し、加熱ベーキングしてレジストを硬化させる。次いで図の②、③のようにCopolymerを塗布して加熱すると、ガイド・パターンに沿って何本かの線が形成される。④PMMAを剥離すると図のようなラインが残る。

 

 このようにガイド・パターンで制限されたスペースに何本かのラインを形成するのがGrapho Epitaxy法によるDSAである。

 フォトレジストでガイド・パターンを作るのは微細パターンではない従来のリソグラフィ技術で対応できる。

 すなわち、粗いパターンをフォトリソグラフィで行い、微細なパターンはDSAで行えるわけである。

 

3. DSAの現状と問題点

 

 最大の問題点は欠陥といわれている。典型的な例を図9に示す。

 

 点状の欠陥は、材料またはプロセス中の異物が原因である可能性があり、図の右の場合はプロセス上の問題なのか、材料のCoPlymerに異常な高分子が含まれていたのか、基板上に異物が載っていたのかなど、さらに解明し対策する必要がある。

 

4. DSAのまとめ

 

 ナノインプリントの装置はステッパに比べて安価だが、DSAの装置はそれよりさらに安価だと思われる。

 DSAは、欠陥の問題が解決すれば、コストが安いためすぐに生産に用いられる可能性があるが、現状は技術の進展を見守っている状況で、いつ生産に導入されるか予測が難しい。

 DSAで得られるパターンは、Copolymerの長さ次第で微細加工が可能なのも魅力である。

 ただし、DSAは直線のLine&Spaceしかできないので、いろいろなパターンを自由に作成するRandom Layoutができない欠点もあるが、大部分のLSIには対応できる。

 

 以上、今月はフォトリソグラフィを用いない微細パターニングの方法について報告した。

 ナノインプリントとDSAは、共にまだ研究開発段階であるが、手軽なプロセスで安価に微細加工ができるので、LSIの性能向上とコストダウンに寄与すると期待される。

 

 来月は、CMOSLSIがFinFET構造で3次元化され、さらにはナノワイヤLSIが来年あたり生産に入るといわれているので、それらの技術を紹介する予定である。

 

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厚木エレクトロニクス
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