4. Metal Gate
MOSが最初に生産された1970年頃は、ゲート電極にはアルミニウムが用いられ、イオン注入が一般化されていなかったので、ソースとドレインを拡散で形成した後にゲートを作成していた。
イオン注入が使えるようになり、ゲートをマスクにしてソースとドレインを形成して相互の位置合わせがセルフアラインできるようになり、1000℃のアニールに耐えるようにゲート材はポリシリコンになった。
ところが、ポリシリコンは電極の金属として用いられてきたが、半導体でもあって、電界が掛かると図5のように空乏層が発生する。
このため、せっかくゲート絶縁膜を薄くして容量を大きくしても、ポリシリコンの空乏層が加わっては容量が減少してしまう。
これを避けるため、ゲート電極を金属にする必要がある。絶縁膜がhigh-kで、電極がMetal Gate構造を、HK-MGと呼んでおり、LSIの一般的な構造となっている。
ところが、ゲート電極をCuやAlなどの金属にすると、1000℃のアニールに耐えられないし、HfO2膜も結晶化がはじまって面白くない。
そこで、図6のようなゲートラストと呼ばれるプロセスが用いられている。
すなわち、いったんポリシリコンゲートで、ソースとドレインへのドーピングを行い、ついでポリシリコンを剥離して、HfO2膜と金属に置き換えるわけである。
金属としては、TiNが主に用いられていると思われるが、TaC、TaN、NiSiなどの名前も聞かれる。
いっぽう、このゲートラストは非常に手が込んだプロセスでコストアップになるので、従来のプロセスに近いゲートファーストも行われている。
ただし、ゲート電極の金属はMOSのVth(MOSがONになるゲート電圧)を調整するため、PMOSとNMOSで異なった金属が採用されるが、あまりに複雑な話になるので省略する。
5. 酸化膜に関する信頼性問題
1. NBTI(Negative Bias Temperature Instability)
LSIの信頼性は、一般の電子部品と同じように、使いはじめた初期不良と、長期間使用して寿命と見なされる不良があり、通常に使用している最中の不良はかなり少ない。ところがMOSのNBTIと呼ばれる不良は使用中にMOS特性が変動するという問題である。
ゲート電極に対し基板の電位が負の状態でチップの温度が上昇すると、P型トランジスタのVthの絶対値が徐々に大きくなる。負バイアスが印加されない状態では変動した特性が急速に回復する。
この現象のメカニズムは完全に解明されていないようであるが、図7のようにSi-SiO2界面にあるSi-Hの結合が切れてここに正の電荷が存在するように考えられ、MOSのVthが高くなってしまう。
2. NANDフラッシュ・メモリの寿命
薄い酸化膜に関連して少し横道に入ってしまうが、NANDフラッシュ・メモリについて一言。
NANDフラッシュは、薄膜を積み重ねる3次元化が進み、今や集積度の大きさではDRAMなどをはるかに引き離してムーアの法則を牽引する中心デバイスとなっている。
記憶するメカニズムは、周りを絶縁物(SiO2)で囲まれた浮遊ゲート(Flouting Gate)に電荷を貯めるわけで、電荷はSiO2膜に高電圧をかけて電子が通る。
このため、長年の内には、図8のようにSiO2膜に欠陥が発生して誤動作を起こすことになり、書き換え回数があまり多くは期待できない。
したがって、あまり頻繁に書き換えしなくても良いような用途に使われている。
今月は、薄い酸化膜を取り上げたが、来月は結晶に歪を与えてCMOS特性を改善する方法、再来月はFinFETを取り上げる予定である。乞うご期待。
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- 厚木エレクトロニクス
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