1.はじめに
本誌2011年10月号でアジア諸国の手はんだ付け産業の特徴をご紹介させていただいてから少し時間が空いてしまった。シリーズとして続けている『はんだこて先の最適化』について、はんだ付け作業現場で抱えている諸問題や課題、それらに安価に対応できるはんだこて先形状のご紹介の話題に戻りたいところだが、適時ご紹介しておきたい情報が入ってくるので、『はんだこて先の最適化』についてはまたの機会にさせていただきたいと思っている。
今回ご紹介する情報は、日本同様に産業先進国として世界をリードしてきた北米の手はんだ付け産業の実態である。実態、と述べると少し大袈裟な印象を与えてしまうかもしれないが、今年に入って早々に2週間ほどの北米訪問の機会を得ることができ、それまで抱いていた北米における手はんだ付け産業の認識を大きく覆された経験をしてきた部分があったので、直近の情報の一つとして興味ある方にご一読いただきたいと思う。
ただその本題に入る前に、北米からの帰国後に嬉しい体験をしたので、まずそのことを少しご案内したい。
私は2009年からの3年間で300近くのはんだ付け工場にお邪魔して、手はんだ付けのアドバイスや現場指導を行ってきている。そして本誌でも、私自身の体験から、日本の生産産業を担う各種メーカーに内在する課題として『同一会社内での真の情報共有の重要性(※本誌2011年7月号&8月号参照)』を訴えてきたが、先日これを実現している中堅の製造メーカーを訪問する貴重な機会を得られた。こちらの会社は、業界内でも製造技術の水準が高いとして上位に名前があがってくる優良企業である。 同社では様々な方法で技術情報の共有を実現させているのだが、月に一度あるオンライン会議によって、ほぼリアルタイムにその情報の共有が行われているとのことだった。と、これだけ書くと、似たような動きをなされている管理者の皆様には心外の念を与えてしまうかもしれないが、同社がもつ、他社とは異なる特徴は、それら情報の共有を、同社内の似たような立場にある現場の技術者同士でも行っている、というところに他ならないのである。出世争いや己の保身などとはまだ無縁の立場にある者同士が情報を共有できることで、同社には純粋に技術の向上に没頭できる環境が自然と生まれているのだ。
同業者からも、同社については高い評価しか聞かないのも頷けたが、この環境が同社の信頼につながり、確かなブランドを形成しているのだろう。このような素晴らしい環境に感銘を受けたことを担当者に伝えると、彼は『今まで普通にしてきていることなので褒められることが違和感を感じますが、これからも自分たちのために続けます。』と少し恥ずかしそうに答えてくれたのが印象的だった。同社代表者の意向でオンライン会議は行われているということだが、今はほとんど見かけなくなった社員の愛社精神さえ感じる環境を目の当たりにして、同社の代表者には敬服さえおぼえる。
『真の情報共有』という取り組みに対して誠実に向き合い、行動に移している製造技術の現場と、そうではない現場とでは、果たして数年後に、どのような開きが生じていくのだろうか。少し無責任な言い方かもしれないが、個人的には非常に強い興味を抱いてしまう。もし読者であるあなたが、勤めている会社に対して責任ある立場で本誌をご覧になっているのであれば、今一度、御社の代表者の意向や所属するグループ、並びにあなたご自身の立ち位置と取り組み姿勢を見直してくれることを強く願ってやまない。あなたの愛社精神は、いかほどだろうか。
2.中小企業が単独で行う海外展開の限界と対応策
はんだ付け用こて先の専門メーカーとして当社が創業を起こしたのは1971年で、実績はすでに40年を超えているのだが、はんだ付け用こて先だけを扱う専門家としては世界唯一の企業だと認識している。自分で言葉にする機会も滅多にないのだが、間違いなくはんだ付け用こて先のリーディングカンパニーであると自負している。
だがこのような当社が業界全体に目を向けはじめたのは2003年のことである。そして実際に営業活動と呼べる動きをはじめたのは、その4年後の2007年であり、海外での活動に関していえば2009年からで、現在からわずか3年間と、意外に表舞台に出てからの経験は浅い。現在の活動に繋がるきっかけとなった出来事は、2003年にメキシコから入った1本の国際電話であり、内容は当社製品に対するクレームだった。
私が直接その電話を受けたのだが、はじめは当社製品の品質に対するお叱りだったものの、詳しく話を聞いてみると、予想外の方向に起因が存在していることが確認できた。詳細な説明は省くが、たとえば当社が500円/本で国内提供している製品のメキシコでの入手価格がなんと50,000円/本である、というのだ(決して『0』のけた数を間違えているわけではない)。 特殊なレアケースなのかもしれないが、はんだ付け用こて先は消耗品になるため、購入価格の割に寿命が短くないか、という先方の話の内容に驚いた事を、昨日のように鮮明に記憶している。その場は誠実に事情を説明して、事なきを得たものの、このような状態が長期的に続けば当社や当社製品のブランドが傷つくことは明らかであり、一方で、なぜこのような状態になっているのかの本質的な原因について、当時の当社では知り得る由もなかった。当社はそれまで、日本特有の、技術力の高い下請け製造工場でしかなかったからである。あれから8年が経って、現在の当社ではそのような連絡をいただければすぐに対処できる体制が整いつつある。これと同じような立場にある企業は我が国では非常に多いのではないだろうか。手遅れにならない段階で、何らかの対応策を講じることをお勧めしたい。
2011年3月から10月までの半年、私は日本からみて産業後進国にあたる中国や東南アジア諸国を回遊した。時には産業展示会へ単独出展してそのエリアの手はんだ付け産業全体の発展度合いを調査したり、あるいは手はんだ付けの作業現場を訪問して実際の作業を拝見し、当社が協力できる領域を模索している。
だが、資金やマンパワーに乏しい中小企業が継続的にすべてを単独で行うには、情報の入手方法や現地での活動の原動力においても限界が存在する。同じような立場にある日本の中小企業が海外で単独展開するうえで躊躇する最大の要因もそこにあるのではないだろうか。
そこで一つの手段として興味ある方にご紹介したいのが、これまでの当社の海外活動や今回ご紹介する北米訪問に際して親身に支援してくれている組織が存在することである。読者の皆さんも一度は耳にされたことがあるのではないだろうか。組織の名称はJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)。世界各地に拠点があり、日本の中小企業の海外ビジネス支援や日本ブランドの発信に注力されている団体である。
当社では、新しく足を踏み入れるエリアの場合は積極的に現地のJETROまで足を運び、情報の入手や精査に活用しているほか、JETROが本年度から事業化された輸出有望案件発掘支援事業の対象に認定いただき、またこの専門家として活躍されている(株)ピンポイントマーケティングジャパンの大澤氏の助力を得て、北米での活動の浮力を得ているしだいだ。ピンポイントマーケティングジャパンは、日本の中小企業が保有する特質した技術力や製品力にフォーカスしてグローバルニッチ企業になるためのアドバイスや支援を積極的に行っている企業だ。ご興味があればそれぞれのホームページをご参照され、またぜひ一度ご相談してみることをおすすめしたい。
(JETRO 独立行政法人日本貿易振興機構……http://www.jetro.go.jp/indexj.html、 (株)ピンポイントマーケティングジャパン……http://www.ppmj.com/)
- 会社名
- セラコート工業(株)
- 所在地
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