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テクニカルレポート
2016.02.23
モジュール型高速多機能装着機『NXT Ⅱc』
富士機械製造(株)

 

変種変量生産への対応

  前節までは、高品質生産を実現し継続させる機能・ソリューションを紹介したが、『NXTⅡc』には、様々な生産形態に対応することができる機能・ソリューションも多分に搭載されている。

 近年、消費者が求める製品の多様化により、商品サイクルが非常に短くなっている。特に国内生産においては、かつての大量生産ではなく、臨機応変に生産品種を変えられる『変種変量生産』が必須である。しかし、変種変量生産におけるもっとも大きな課題は、生産品目の切替品質(正確な生産品目の切り替え作業・すばやい切り替え作業)である。この作業をいかに効率的に行うかが、経営を左右する重要な課題となっている。

1.段取り替えの自動化

 段取り替え作業は、生産品目の切り替えのたびに必要であり、たとえ数枚の生産しか行わないような小ロット生産の場合であっても、その例外ではない。段取り替え作業の課題は、時間がかかること、オペレータに一定のスキルを必要とすること、そして、オペレータが介在することによるヒューマンエラーがあることが挙げられる。一方、常に正確さが求められる上に、段取り替え作業中には生産活動が行えないことから、すばやく作業を終える必要がある。

 段取り替え作業における様々な情報は、生産プログラム自身に記述されており、それに応じて、装置自身の状態を変更する必要があるが、これらの作業は、装置自身が自分で認識をし、自動実行できるものが多い。『NXTⅡc』では、その段取り替えの自動化を実現している。

 まず、生産品種の切り替えは、基板搬入時に基板に刻まれた基板ID(2次元コード)読み取り、自動的に生産プログラムを切り替えるシステムを提供している。ランダムな生産計画に容易に対応でき、オペレータによる生産プログラムの選択ミスも発生しない。『NXTⅡc』では、自動的に前基板の生産が終了したステージから、逐次生産プログラムを切り替えるシームレス段取り替え機能や、バックアップピンの配置を自動的に行う、パックアップピン自動配置機能を用意しており、生産品種の切り替えやバックアップピンの配置作業など、オペレータが介在することなく行える。バックアップピンの配置は、オペレータレベルで30分程度(6本配置:当社調査データより)かかる作業であるが、『NXTⅡc』ではXYロボットによりピン配置をし、配置された位置も画像処理にて確認を行うため、オペレータの作業時間が『0』で、かつ、正確にピン配置を行うことができる。さらに、『NXTⅡc』ではノズルに2Dコード(図5)が刻まれており、装置自身がどの位置にどのようなノズルが置かれているか、自動的に認識することができる。そのため、ノズルを装置から指示された通りに置く必要もなく、どの位置に置いても、ミスなく、自動的にノズルを実装ヘッドに装填することができる。作業時間と確認時間が大幅に削減されることになる。

図5 ノズルに2Dコードが刻まれている

2.段取りレス

 段取り替え作業の内、部品のセットアップ作業は、それぞれの生産において使用する部品に応じて準備をする必要があり、その配置も正確に行わなければならない。当社では、共通の部品を使用する複数の生産プログラムをまとめ、複数の生産基板に対応することができる共通の生産プログラム(部品配置)を作成できるアプリケーションを用意している。この生産プログラムを使用すれば、生産基板の切り替えのたびに部品セットアップをする必要がなく、最低限の段取り替え回数で生産活動を継続することができる。また、試作や多品種少量生産を行っている現場においては、突発的に数枚のみ生産をして欲しいなどの要求もある。『NXTⅡc』では装置にフィーダをセットしたと同時に、自動的にどのような部品が装填されたか、データベースに照合を行なうため、生産に必要な部品が装置(モジュール)の任意の位置にセットされていれば、そのまま生産を行うことができる。わざわざ数枚の生産のために、大掛かりな部品のセットアップ作業を行う必要がない。

止めない・止まらない生産の継続

  前節では、生産準備の効率的なソリューションを紹介したが、生産中にむだ・むらがあっては意味がない。ここまで紹介した効率的な準備を殺すことなく、生産活動に活かすことができるかが重要になってくる。

 特に、生産ライン稼働中における生産稼働率低下の要因の一つに、部品切れによる『チョコ停』が挙げられる。その対策として、当社ではいくつかのソリューションを用意している。

1.無停止供給

 生産性を大きくスポイルする要素の一つに生産途中の部品補給がある。特に高速実装が主体の小チップ部品ではいかに効率よく正しく部品補給をするかが重要である。一般に、テープ部品の補給ではフィーダの掛け替えによる補給と、テープの繋ぎ合わせる(スプライシング)2通りがある。部品切れが発生してからフィーダの掛け替えるのでは、部品切れの間生産ラインが止まり、稼働率が低下する。また、スプライシングは繋ぎ目の良し悪しがオペレータによって異なり、ジャミングや吸着不良の原因になりやすいことや、部品の繋ぎ間違い対策が万全でないなど問題がある。

 稼働中にフィーダの挿抜が可能である『NXTⅡc』では、その特徴を生かした効果的な供給方法がある。ダイナミックネクストデバイスと呼ばれている機能で、フィーダのインテリジェント機能と稼働中の挿抜機能を利用して、同一ステージ上ならどの空きスロットにでも補給部品をセットしたフィーダを取り付けられるという機能である。装置は部品切れになると自動的に新しいフィーダに吸着点を変更する。オペレータは空になったフィーダを取り外し、適当なタイミングですでに吸着の始まっている新しいフィーダをオリジナルのスロットに差し替える。こうすることで、吸着位置が最適な位置に戻るため、効率の低下が最小限に抑えられる。部品の掛け間違いもリール単位で確認できるのでバーコードによる通常の確認作業で対応できる。

 無停止の部品補給はトレイ部品においても対応している。着脱可能なトレイ部品の供給ユニットを用意しており、段取り替えレベルでトレイ部品を取り扱えるように変更でき、汎用性が高い。トレイユニットには、複数種類のトレイを蓄えることができるトレイマガジンが2つ搭載しており、装置が生産状態であっても、部品を供給していないトレイマガジンに対して、トレイ部品の供給作業が行えるような構造になっており、トレイ部品の無停止供給が難なく行える。

2.部品切れ予告

 無停止供給をするシステムがあったとしても、部品を消費してしまう前に的確に部品を補給しなければ意味がない。当社では、部品の消費量を常に監視し、部品ある一定時間内に消費してしまう状況になったら、部品補給を促すアプリケーションを用意している。オペレータは、このアプリケーションによる予告指示に従い部品補給を行えばよい。一方、短時間により多くの部品種の補給をしなければならない状況もあり得るが、このような部品切れラッシュがいつごろ発生するのかを知らせることも可能である。オペレータは部品切れラッシュが発生するまでに、あらかじめ補充部品を用意することや、他のラインで作業をしているオペレータを呼び、一時的に集中して部品補給作業にあてるなど、部品切れによるライン停止を防ぐことができる。

まとめ

  本稿では、『NXTⅡc』を例に挙げ、高品質・高生産性を継続的に維持することができる当社独自の機能・システムを紹介した。

 時代の変化と共に、生産に求められる品質的な要求は、常に高くなっている。それと同時に、幅広い生産形態に対応し、不良を排除し、より生産効率が向上するようなソリューションが求められている。今後も当社は、変化するユーザーニーズ・求められる生産形態を的確に捉えた、機能開発を進め、技術を提供していく。

 

会社名
富士機械製造(株)
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