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テクニカルレポート
2024.11.06
デジタル式音響コム型AEセンサ(QDセンサ)の開発と そのインフラへの適用について
第2回 リバーエレテック社製のデジタル式音響コム型AEセンサ(QDセンサ)の開発について (その2)
(株)武藤技術研究所
武藤 一夫

3-4. QDセンサ試作第一号の開発

QDセンサの設計・製造はフォトリソグラフィで行うことは、既に述べた。

ここでは、CH1〜17のカンチレバーを有するQDセンサの試作の一例を見る。図4に示すように、 今回のQDセンサの1次試作する場合、そのセンサの構造は3層構造となる。まず第1層では表面水晶、裏面CH1〜17のハーフエッチング、つぎに第2層では表裏面で電極1、電極2、第封止パス、そして3層では表面ハーフエッチング、裏面水晶端子34pin(257×237μm)、といった工程を経て製造される。

図4 1次試作におけるQDセンサの3層構造の一例(リバーエレテック社提供)

 

このように、いくつかの施策案を考案し、試作品を作成し、検討を重ねた。その結果として、第1世代のQDセンサの基本設計仕様を下記のようにした。

 

(1) 今回のQDセンサのの検知方向は水平とした。

 

(2) 検出周波数の帯域は、可聴領域を含む4kHz(CH1)から超音波領域の300kHz(CH65)までとした。

 

(3) センサのユニットは、実装を考慮して、4kHz(CH1)から300kHz(CH65)までを3ユニットに分ける。

 

(4) 信号の配線、端子を考慮して、1ユニット22CHとし、片側11CHとする。

 

(5)1ユニットのサイズは出来るだけ小型化する。

 

(6)1CHのカンチレバー長さ、幅、厚みは目的に合わせて、最適化する。

 

図5は第1世代QDセンサR基本設計の仕様を示す。カンチレバーの共振周波数を総数65チャンネル(CH)に振り分けた。検出周波数の帯域は、4kHz(CH1)から300kHz(CH65)までとした。製作上で複数チャンネルを1つのパッケージにするために、4kHz(CH1)から80kHz(CH21)までを低周波帯域とし、そのうち1〜9CHまでを2kHzとびに、9〜64CHを5kHzとびに共振周波数を設定した。製作上で3パターンに分けて設計した。すなわち、85〜140kHzまでを中周波帯域として設定した。そして、同様に製作上で150〜300kHzまでを高周波(44〜65CH)として設定した。寸法はそれぞれを低周波数帯域は5.55×5.0mm、中周波数帯域は5.55×2.5mm、そして高周波数帯域は5.55×2.0mmに収めて1次設計図案を試作した。図5(a)はQDセンサの寸法サイズで、素子の厚さは105μm、カンチレバーの腕幅は60μm、溝幅は50μm、溝深さは45μm。また図中のマゼンダ色は溝、緑色はHOT、黄色はGNDを示す。図5(b)は各CHの周波数とそのカンチレバー長さを示す。

図5 第1世代QDセンサR基本設計の仕様(リバーエレテック社提供)

 

QDセンサ素子から得られたAE信号を信号線に送り出すためには端子が必要である。そのためのQDセンサ素子、配線、端子を一体にした基板を設計製作する。このように、QDセンサはセンサ素子、配線、端子を一体にした基板からなる。図6は、そして製作した試作第1号QDセンサの外観を示す。今回、図5(a)に示した低周波、中周波、高周波の各素子を組込んが3つのQDセンサを製作した。センサの受信面は図6に示す基板の裏側になる。

図6 試作第1号QDセンサの外観(リバーエレテック社提供)

 

次回は、その新しいデジタル式音響コム型AEセンサである、QDセンサの進化の過程について見ていく予定である。 

 

<参考文献>

1)https://www.river-ele.co.jp/ja/

2)武藤一夫、図解わかる機械加工、共立出版、2012

3)武藤一夫、図解わかる機械計測、共立出版、2016

会社名
(株)武藤技術研究所
所在地
神奈川県相模原市緑区大島2695-18