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テクニカルレポート
2023.06.21
エレキとメカを融合したEMC設計検証ツール
(株)図研
野村 政司、 武田 宏明、 小枝 孝也、 佐部利 亮輔、 古川 和樹

①はじめに

近年、5Gをはじめとした通信の大容量化により、回路動作が高速化されノイズの問題がますます発生しやすくなってきた。また、製品の小型化も進み、高周波回路とアンテナの距離も近接し、機器内妨害の問題も発生しやすくなっている。さらに、軽量化やコスト削減を目的として、金属筐体でのシールドやEMC対策部品の採用にも限度があり、回路/基板/メカの設計初期段階でのEMC設計の重要性が増している。

こうした背景の中、回路/基板設計段階でチェックツールなどを活用して基板単体でのEMC品質向上に取り組む企業は増えている。しかし、基板単体の品質が良くなったとしても、基板を筐体に組み込むことでノイズ問題が発生することも多いのが実状である。この場合、エレキにメカ要素が絡み問題が複雑化するため、問題発生から対策まで時間がかかる。また対策方法によっては部材コストも上昇する。よって、図1のように設計段階でメカも考慮したEMC設計が重要となる。

図1 メカを考慮したEMC設計の必要性

 

②EMC問題が発生する要因

放射エミッションに有効なノイズ対策であるシールディングを例に、電子機器における基板単位、製品単位で発生するEMC問題について述べる。

基板単位で考える場合、高速信号線などのノイズ源となる配線パターンは、安定したGNDパターンで覆うことが好ましい。もし、周辺パターンとの兼合いでノイズ源をGNDパターンで十分に覆えない場合やGNDパターンとベタ層とのビア接続が少ない場合などは、十分なノイズ低減効果を得られない(図2)。

図2 配線パターンのシールディング

 

製品単位で考える場合、製品構造内のノイズ源(基板上の電子部品や配線パターン)は、基板上のパターンによるシールドだけでなく、金属筐体でのシールドも考慮できることが好ましい。しかし、製品設計はEMCだけでなく熱対策など様々な検討事項があるため、金属筐体で隙間なくシールドすることが現実的でなく、たとえば熱対策なら通風孔などの位置を適切に検討する必要がある。また、近年は製品の小型化・軽量化により樹脂筐体が多く採用され、金属部が少なくなる傾向にあるため、ノイズ源を金属部で適切にシールドできずEMC問題を抱えやすい(図3)。

図3 メカ構造(筐体)によるシールディング

 

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(株)図研
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