光集積回路化により小型化した量子暗号通信システムの開発・実証に成功
(株)東芝は、東芝欧州社ケンブリッジ研究所において、量子暗号通信システムの主要な機能をチップ化し、これらを用いてリアルタイムの暗号化通信を可能とする「チップベース量子暗号通信システム」を開発し、実証に成功した。
量子暗号通信は、微弱な光信号の位相で表現された量子ビットによって配送される暗号鍵を用い、データを暗号化して通信する。今般開発されたシステムは、これらの量子ビットを送信する「量子送信器」、受け取る「量子受信器」、および暗号鍵を用意するために必要な一様性の高い乱数を発生する「量子乱数発生器」をチップ化した。
試作したチップの大きさは、量子送信チップが2×6mm、量子受信チップが8×8mm、量子乱数発生チップが2×6mmと小型で、標準的な半導体製造技術を用いて1枚のウエハ上に数百のチップを一度に製造することで、量産することができる。
同社はこれらの3つのチップを用いて、50kmの光ファイバによる長距離の暗号鍵配送を実証。
また、生成した暗号鍵を市販の100 Gb/sの暗号化機器に配送することで、データを暗号化し、リアルタイムに暗号通信を行うことに成功した。
都市内通信を想定した10 kmの光ファイバを用いた実験では、暗号鍵の生成速度は5.5日間の連続動作の平均値で470 kbpsに達し、これはビデオ通話での活用が可能なレベルである。
今般試作したシステムは、標準的な通信インフラに実装できる、1Uサイズのラックマウントモジュールに収まる大きさに実装しており、光学部品で構成された従来のシステムより、小型・軽量化および低消費電力化を実現している。
プラスチックを肥料に変換するリサイクルシステムを開発
東京工業大学、JST、東京大学、京都大学は、植物を原料としたプラスチックをアンモニア水で分解することで、植物の成長を促進する肥料へと変換することに成功した。
日常生活に欠かせないプラスチックは、現在70%」以上が廃棄されている。
廃棄問題への対策が急がれる一方で、依然需要は大きく、地球環境の保全とプラスチック利用を両立させる革新的なリサイクルシステムの開発が望まれている。
研究グループは、カーボネート結合からなるプラスチック(ポリカーボネート)をアンモニアで分解する過程で生成する尿素が、実際に植物の成長促進につながることを証明することで、プラスチックを肥料に変換するリサイクルシステムを実証した。
プラスチックを出発原料まで戻して再利用するケミカルリサイクルの研究は精力的に進められているが、「分解過程で生成する化合物を植物の成長を促進する肥料として活用する」という本リサイクルシステムのアイデアは、画期的なもの。またアンモニア水を加熱するだけで反応を促進でき、簡便なプロセスで実現できるため、普及すれば産業界への波及効果も大きい。
このリサイクルプロセスは幅広い分子骨格に適用できることから、今後、サステナブルな材料創製とそのリサイクルにつながる、と期待される。
ポリマ半導体の高性能化に向けた新たな分子デザイン手法を開発
広島大学、京都大学、名古屋大学、東京大学などの研究チームは、ポリマ半導体の化学構造を少し組み替えるだけで、電荷となるπ電子が主鎖に沿って高度に非局在化し、半導体性能の一つである電荷移動度が20倍以上向上することを発見した。
ポリマ半導体は、印刷プロセスで簡便に薄膜化できる半導体で、有機トランジスタや有機薄膜太陽電池などの次世代のプリンテッドデバイスへの応用が期待されている。
しかし、これらデバイスの性能を左右する電荷移動度は、シリコン半導体などに比べて著しく低い値を示す。
そのため、高い電荷移動度を示すポリマ半導体の開発が強く求められている。
ポリマ半導体には、ポリマ主鎖に沿った「主鎖内」とポリマー主鎖同士の重なりを介した「主鎖間」の2つの電荷輸送パスがある。
従来は、律速である「主鎖間」の電荷輸送性を改善することが材料開発の指針であったが、研究の進展とともに「主鎖間」の電荷輸送性の改善だけでは電荷移動度を向上させることは難しくなっていた。
研究チームは今回、以前に開発していたポリマ半導体の化学構造を少し組み替えてやることで、電荷となるπ電子が主鎖に沿って高度に非局在化し、これまで着目されていなかった「主鎖内」の電荷輸送性が高まることを発見。
その結果、ポリマ半導体の電荷移動度を著しく向上させることに成功した。
今回の研究で見出した「主鎖内」の電荷輸送性を高める新たな分子デザイン手法を応用することで、さらに電荷移動度の高いポリマ半導体の開発が期待される。
- 会社名
- Gichoビジネスコミュニケーションズ株式会社
- 所在地
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