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スペシャルインタビュー
2022.07.15
独自の加工技術とノウハウで様々な材料にチャレンジ
〜色々なアイデアを生み出して研究者をサポート〜
ムソー工業株式会社
代表取締役 尾針 徹治 氏

■次に、試験機に使用する試験治具の設計/製作について、概要や取り組みなどお聞かせください

 

尾針 : 基本的には、お客様の実施したい試験のニーズに応じた試験治具のカスタマイズを行っています(写真2)。以前は、試験片の形さえできていれば問題ありませんでしたが、最近では材料がどんどん強力になってきたり、実験のニーズも様々なものが出てきたりするようになってきました。例えば、水中で実験を行いたいとか、高温下で実験を行いたいなど色々ありますが、そうすると治具の方が先に破損してしまうケースもあります。

写真2 試験治具の一例

 

当社では、そのようなことのないように安全率を出して強度計算をしながら適切な形にしていき、さらに材料を選定して設計を行っています。これが、当社の強みでもあり、なかなか設計能力をもちながら社内で加工できる町工場は、あまりないように感じています。

通常では、設計は設計屋に任せて、そこから部品屋に流れていくと思いますが、設計を行って加工も行うというのが、当社のセールスポイントになっています。

また設計についても、お客様がある程度イメージした構想をご用意いただいている場合もありますが、まったくのゼロベースからお受けする場合もあります。その場合、まずはお客様の実験計画や実験スケジュールなどをヒアリングしていきます。

実際にお受けした事例としては、非常に薄いけれども強度のある材料を引っ張りたいという内容で、その時は材料の薄さが問題となり、試験片ではよく「チャック切れ」という現象を起こしますが、これは掴んで引っ張った時に掴んだ所からちぎれてしまう現象です。本来であれば、引っ張った時に真ん中で切れれば評価できますが、掴んだ所で切れてしまうと正確な評価ができません。

そこで「チャック切れ」をしないような設計を提案させていただき、当社の案をご採用いただいた結果、試験を無事に行うことができたという事例もあります。

このように、試験の企画段階からアイデアを色々とご提案できることも、当社の強みになっていると思います。

 

■御社の開発した実験装置についても、事例などお聞かせください

 

尾針 : それでは、東京大学と共同開発した『フライホイール型摩擦試験機』を紹介します(写真3)。摩擦試験機は、摺動タイプのものが既製品としてありますが、東京大学の教授から「回転する仕組みの摩擦試験機は、まだ世の中にないのでつくってほしい」という依頼をいただいたことが、当社がお手伝いするきっかけになりました。

写真3 『フライホイール型摩擦試験機』

 

この摩擦試験機は、摩擦がほとんどなくなる「摩擦フェイドアウト(FFO:Friction fade-out)」と呼ばれる超低摩擦現象の長時間安定再現のために開発が進められました。そうした実験機はまだ世の中にないものということで、「どれくらいの精度でつくれば摩擦フェイドアウト現象を再現でき、長時間安定させることができるのか?」といった試行錯誤の始まりでした。

それでも、満足いただけるものをつくるため、何度も大学の研究室に通い、一つ一つの課題や問題点を丁寧に明らかにしていきました。また、大学の先生にも加工現場に足を運んでいただき、その場で指示を仰ぎながら改良を重ね、ようやく完成させることができました。

現状では、従来いわれている摩擦係数を一桁下げる現象に成功しており、東京大学と東京都立産業技術研究センターで引き続き共同研究が行われ、これからその原理の解明が進められていきます。摩擦は、自動車を始めとする可動機構をもつありとあらゆる機械のエネルギー効率に影響するため、この研究成果は様々な分野への応用が期待されているようです。

この他にも当社では、お客様の様々な相談をお受けし、そのニーズにマッチする実験装置の開発にチャレンジしています。

 

会社名
ムソー工業株式会社
所在地
東京都大田区