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スペシャルインタビュー
2022.07.15
独自の加工技術とノウハウで様々な材料にチャレンジ
〜色々なアイデアを生み出して研究者をサポート〜
ムソー工業株式会社
代表取締役 尾針 徹治 氏

試験片、試験治具、実験装置の3つのカテゴリーで事業を展開するムソー工業株式会社。創業以来70年以上で培われた独自の加工技術とノウハウで、様々な材料に挑戦してきた同社の概要と事業展開などについて、代表取締役 尾針 徹治 氏にお話を伺った。

 

■御社の概要や沿革などについてお聞かせください

 

尾針 : 当社は、1950年5月に私の祖父が東京都品川区で創業しました。祖父は、武蔵工業大学(現、東京都市大学)でものづくりを色々と教えていました。今でも工業系の大学には技術職員という方がいて、色々な研究室の先生方が実験をする際に必要となる部材を手配したり、大学の構内にある設備の使い方を学生に指導したりしています。そのような仕事をそのまま事業化したのが当社のスタートです。

そのため、今でいう大学発ベンチャーといった位置付けで、武蔵工業大学にちなんで武蔵工業研究所という組織名で立ち上げたようです。事業内容も、実験に必要な部材を町工場に依頼してつくってもらい、完成したものを大学にもってくるといった商社的な内容でした。

そして、1963年8月に株式会社に改組し、社名を“武蔵”を音読みにした現在のムソー工業株式会社に変更しました。法人化してからも、しばらくは商社的な対応を継続していましたが、徐々に生産設備を整えていき、自社でのものづくりもスタートさせました。大型の生産設備を導入するため、1979年4月に現在の大田区京浜島に拠点を移転し、1983年11月に同じ京浜島に第2工場を開設しました。

また、2000年6月に私の父が代表取締役に就任し、私は2006年3月に大学を卒業後、別の会社に就職していましたが、2010年に当社に入社しました。大学では心理学を専攻し、前職もまったく畑違いの職に就いていたため、先代などから技術やノウハウを学びつつお客様の依頼を受ける中で、独自に学んでいきました。

私自身、元々家業を継ぐ気はまったくなく、手伝うような気持ちでいましたが、仕事を覚えていくうちにどんどん面白くなっていき、そしてものづくりに欠かせない材料の研究開発にも惹かれていきました。また、この業界で少しずつ私のことを認めていただけるようになり、今まで自分の中で経験したことのないような、知恵を絞ってお客様の役に立つ仕事をしていく中で、この会社は無くしてはいけないと強く思うようになっていきました。そして、2017年8月に代表取締役に就任しました。

事業展開については、創業時から現在に至るまで一貫して研究者の方々が必要とされるものづくりに特化しており、特に引張試験や曲げ試験などで使用される試験片の加工はメイン事業で、様々な材料に対して常にチャレンジし続けています。それから、試験機に使用する試験治具の設計/製作、研究者の要望にマッチした実験装置の受託開発といった大きく3つのカテゴリーで事業展開しています。

その中で、試験治具の設計/製作については私が始めた事業になっており、以前はお客様サイドで図面を用意していただいた時だけ対応する状況でした。この事業は、2015年頃から私が独学で勉強しながら進め、最初は安全対策用のカバーを設置するといった簡単な案件からスタートしました。

そして、お客様に色々な案件をいただく中で、徐々に設計のスキルも向上していきました。そのため、この事業はお客様に育てていただいたと感じています。

 

■では、メイン事業となる試験片の加工について、概要や取り組みなどお聞かせください

 

尾針 : 試験片の加工では、まずお客様からお預かりした材料を、お客様の実施したい試験に合わせた形状に加工していきます。加工する形状は、非常にシンプルなものがほとんどですが、どんな材料に対してもそれを比較するために、100分の何ミリまで寸分違わず仕上げることが最重要ポイントです(写真1)。

写真1 試験片の一例

 

極端なものでは、ゴムのような柔らかい材料から、硬い石のような材料まで、普通は加工する工具や機械もまったく違うものを使用しますが、当社ではどのような材料でもまったく同一なものに仕上げるという難易度の高いご依頼もあります。

また、我が国は材料で勝負していることもありますが、最近では高機能材に注目が集まっており、高機能材をつくるには素材を複合していく必要があります。金属のものに樹脂が入っていたり、あるいは銅の上にセラミックスがのっていたりなど、様々な素材が混ざっていたり重なっていたりします。例えば、銅の上にセラミックスがのっていると、今までは銅とセラミックスを切削するそれぞれの専業メーカーでは、複合材料を同時に切削するのは非常に困難で、対応できる会社も限られているのが現状です。

当社は、70年間未知の素材に挑戦し続けてきた実績がありますので、長年積み上げてきた技術とノウハウにより、様々な加工難易度の高い素材に対応でき、それが当社の強みになっています。基本的には、材料の分析/評価などはお客様が実施しており、そうしたお客様に対してものづくりのサービスを提供しています。

また当社では、大型の工作機械も導入しているので、試験片のサイズについては小さなものから大きなものまで対応しており、特に大きなものでは造船向けの試験片の加工にも対応できるのが、当社のセールスポイントにもなっています。板厚最大100mm、幅1000×長さ3000mmまでの試験片に対応した実績があり、これはメガコンテナ船の部材として開発されたもので、当社で試験片を加工する仕事をお手伝いさせていただきました。

さらに、開発中の新素材だけにどのような素材で構成されているか情報開示がされず、加工条件を割り出すのに時間が掛かる案件、試験材料が高価なものになると予備を用意できなく失敗が許されない案件、納期が厳しすぎて他社に断られた案件などにも対応しており、これも70年のノウハウがあるからこそ対応を可能にしていると思っています。

会社名
ムソー工業株式会社
所在地
東京都大田区