■現在の市場動向と御社の主力製品について特徴などお聞かせください
伊東 : はんだ付け業界においても、自動化に向けたロボットへの注目度が高まっており、その主な理由として「品質管理の確立」、「ワーカー不足」、「働き方改革」といった3点が挙げられています。
「品質管理の確立」とは、作業者によるはんだ付けでは品質管理が困難であるという理由で、仮に酸化や腐食が進んでいるNGワークが混在していても、作業者は一見良品のように仕上げてしまう傾向にあり、それが市場クレームのリスクに繋がっていきます。また、昨今の経営課題とされる「ワーカー不足」、「働き方改革」による省人化や作業環境の改善といった流れも後押ししています。
しかし、はんだ付けロボットが市場に普及する中で、理想と現実のギャップが発生しています。はんだ付けロボットを導入する場合、一般的には作業者が行っていた手はんだ付けのこて先やはんだ送りの各動作を分析し、ワークに合わせた条件出しを行っていきます。その各条件における最適な数値化を行い、プログラムを作成することでロボット化が実現し、理論的には高い生産性と高品質なはんだ付けが可能になるはずです。しかし、実際にはその通りにいっていないのが現状です。
そのため、合理化や品質向上を期待してロボット化を行っても、生産現場では日々不安定な品質に悩まされ、「今日付いても、明日付くか分からない」といった声が聞こえています。これは、はんだ付けの土台となるロボットの性能不足であり、はんだ付けロボットを追求した仕様になっていないのが原因だと思われます。
では、はんだ付けロボットを追求した仕様とはどのようなものであるかというと、繰り返しになりますがはんだ付けの“タイミング”が重要なポイントだと考えています。「はんだの酸化が少ない」、「フラックスの劣化が少ない」といった良好な状態を維持している“タイミング”で、はんだ付けできるロボット動作が必要不可欠になります。
我々は、この最適な“タイミング”のはんだ付けロボットを目指し、スカラ型ロボットを含めたハードウエアとソフトウエアの自社設計開発を行いました。
現在は、改良を積み重ねたシリーズ最新機種の『LETHER-α』が主力製品になっています(写真1)。
特徴としては、大きく3つの点が挙げられます。まず1つ目は、「はんだ送りダブルモータ機構」の採用になります。一般的には、シングルモータを採用するケースが常識のようですが、これでは糸はんだの送りタイミング/速度/量が不安定になります。その原因は、送りチューブ内のクリアランスにより発生する糸はんだの“たわみ”にあります。当社では、2つのモータを用いることで、この“たわみ”の影響を排除することに成功しています(写真2)。
2つ目は、「自由自在なこて先のアプローチ」になります。こちらも一般には、エアシリンダを用いたピストンストローク方式を採用しているケースが常識のようですが、単調な往復運動に限定されるので、我々の考える最適なこて先の動きが追求できないという問題がありました。当社では、ロボットアームの先端に直接こて先を装着することで、空間的に自由なこて先の動きを実現しています(写真3)。
そして3つ目は、「ロボットアームの軽量化」になります。「0.1秒は長時間」、「はんだは生き物」と呼ばれるくらい、高温の中ではんだの状態は瞬時に変化します。そのため、こて先の移動スピードは重要となり、はんだ付けに必要な加減速度や機敏性といった移動スピードを追求しなくてはなりません。当社では、アームにガラス繊維を含んだ樹脂系材料を採用するなど、軽量化を図っています(写真4)。
このように当社の製品は、今までのはんだ付け業界の常識を覆す、ロボットはんだ付けの集大成と考えており、詳しくは当社のホームページに実際のお客様ではんだ付け現場を撮影した動画集をまとめていますので、是非一度ご覧になっていただければ幸いです。
■今後の展開についてお聞かせください
二宮 : まずは新製品として、XY直交ロボットを使用した卓上型のこて式はんだ付けロボットとレーザ式はんだ付けロボットを来年リリースする予定です。卓上型のこて式やレーザ式に対する市場ニーズにお応えするかたちで、新製品の展開により、さらなる事業の拡大を目指していきたいと考えています。
また、12月18日(水)から開催される『2019国際ロボット展』、および来年1月15日(水)から開催される『インターネプコン』に、これらの新製品を参考出品する予定ですので、是非会場でご覧いただきたいと思っています。
伊東 : ロボット業界では、AI搭載モデルの普及が進んでいますが、はんだ付けロボット業界でもそういう動きが今後進んでくると予想されます。ただ当社では、AI搭載については人間である作業者の思考および動作のばらつきが、はんだ付けにおいてはデメリットになるなどの課題も多いことから慎重な考えをもっており、今後の継続的なテーマにもなってくると思っています。
それを踏まえ、来期からは今まで培ってきたノウハウや技術、解析力などを活かし、総合はんだ付けロボットメーカーとして、市場の幅広いニーズに対して色々な提案を行っていきたいと考えています。「ロボットは一度試したがうまくいかなかった」、「難しいワークなのでロボット化したい」といったご相談やご要望があれば、是非当社までお問合せをいただきたいと思っています。
本日はお忙しい中ありがとうございました。
- 会社名
- 株式会社 メイコー
- 所在地
- 株式会社 メイコー
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