■それでは、真空機器の事業について、概要などお聞かせください
小野邉取締役 : 現在、一番当社として特徴を出せているのは、私が今まで真空機器や真空装置の仕事で培った経験を活かしたヘリウムリークディテクタを用いた受託方式による漏れ検査サービスです(写真1)。ヘリウムリーク検査は、密閉容器や溶接部品、継ぎ手などのリークの有無を確認する検査方法で、数ある気密検査の方式の中でも、最も微小なレベルの漏れの有無を定量的な数値として認識することができる検査方式です。どのくらい微小な漏れかと言うと、条件によりますが1ccの気泡に相当する漏れが発生するまで1000年を要する規模の漏れの有無まで検査することも可能な検査です。
ヘリウムリークディテクタは、微小な漏れを検出できる反面、とても繊細で性能を維持するためには定期的なメンテナンスが必要な上、安価とは言えない設備です。お客様の中にはスポット案件のために検査機を所有できないという声も聞かれます。当社はある程度は自前で検査機を整備することができるため、このようなビジネスが成立しています。
ヘリウムリーク検査のニーズとして多いのは、開発部品の評価、量産部品の検査、仕様書や図面にヘリウムリーク検査が指定されている加工品などです。研究開発や品質管理の部門、そして営業部門に所属されているお客様から問い合わせをいただく機会が多いです。お客様ごとに部品の形状や材質が異なりますが、そこは経験の蓄積がありまして、対応する検査方法の提案から、治具の設計製作、検査結果の説明に至るまで、漏れ検査に馴染みが無いお客様に対しても、分かりやすくお伝えできるよう心掛けています。また、今は車で行ける距離に限定していますが、検査機材を持ち込んでお客様の装置のリークポイントを調査する出張検査も行っています。
その他の真空に関するビジネスでは、「真空機器」の販売と「各種の技術サービス」を行っています。真空ポンプをはじめ真空計、真空バルブ、フィルタ、配管部品について、お客様のニーズや条件を確認し、適合するアイテムをメンテナンス性まで含めて提案するように心掛けています(写真2)。
真空ポンプを販売する際には新品を提案することが基本ですが、お客様のご予算や納期の兼ね合いで、中古の真空ポンプを提案するケースもあります。当社では中古品の販売は、可能な限り性能確認ができたものや、オーバーホール済の真空ポンプを販売するようにしています。
真空機器の事業では検査や販売の他に、真空ポンプのメンテナンスにも対応しています。私自身今まで、数多くの真空ポンプの修理ニーズに関わって参りました。その経験を活かし、修理サービスの延長で故障の再発防止策の提案や、耐久性のあるポンプの紹介なども行うことがあります。
その他にオリジナルの加工部品や真空容器の設計および販売も行っています。これは、お客様の使い勝手を考慮し、カタログ規格品では対応しきれない部品/実験用器材/真空容器/治具などを、図面がない状態から形にしていきます。一例ですが真空装置内のプラズマ放電の確認をするためのシャッターを作ったりしたことがあります(写真3)。できる限り市販の入手性の良いパーツを駆使し、費用対効果の高い部品の提供ができるようアイデアを出し、お客様に納得していただけるものづくりに取り組んでいます。
■次に、電子部品のトランスに関する事業について、始められた経緯や概要などお聞かせください
小野邉代表 : トランスの事業は、現状コロナ禍ということもありますが、真空機器関連の事業だけでは不安なので、もう1つ会社にとって柱となる事業を始めなければと考えたのがきっかけになっています。なぜ電子部品を選択したのかというと、汎用性の高さとニッチな技術にあります。たまたま知り合いに長年トランスの設計と製造に従事していた経歴をもつ優秀なエンジニアがおりまして、本人から今まで培ったトランスに関する技術を活かした仕事をしたいという希望を伺っていました。トランスは幅広い需要がありますし、今後アナログ回路の技術者が不足するのではと感じていましたので、それならば是非当社にとお誘いし、トランスの事業を立ち上げることにしました。
この事業をスタートさせるにあたり、私自身、本格的にトランスの勉強や実地をしましたが大変苦労しました。トランスはノウハウの塊であり、最適な設計には経験が必須なため、一朝一夕には作れない電子部品です。トランスに関する知識を学ぶのに多くの時間を要し、また公的な検査機関を利用した耐久性試験と特性評価を行い、自社のトランスが世に出せる品質であるかを確認する必要もありましたので、トランス事業が対外的に本格展開するまでには、想定以上に長い準備期間を要してしまいました。
製品としての準備が完了した今では、設計力を強みとした事業として、お客様の回路に対して最適化されたトランスを提供していくことに価値を見出しています。トランスの性能は回路に用いるIC、抵抗、コンデンサ等の電子部品の組み合わせの影響を大きく受けてしまうため、手間はかかりますが、机上の計算だけではなく、お客様の電源回路を模した評価回路を組み、トランスを動かしながら最適な条件を探っていく作業を行っています。今まで実装後の評価で想定した特性や性能が出なかった経験をもつお客様には好評をいただいています。
まだまだ成長の途上にありますが、納品実績のあるお客様から量産のお話もいただいており、ゆくゆくは様々な分野の製品に組み込まれることを目標に邁進しています。
ラインアップについては、小型のトランスを主体に徐々に増やしています(写真4)。当初は出力電圧が数ボルトから200ボルト台のレンジでの対応でしたが、現状では3000Vp-pに対応する昇圧用トランスの製作も可能になりました。技術的な引き出しはまだまだたくさんありますので、これからも新しい製品の開発を行い、お客様のご要望に応えられるよう製作範囲を広げてまいります。
- 会社名
- 株式会社 ソナスリンク
- 所在地
- 横浜市緑区
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