①半導体だけでは電子機器は完成しない
近年、新聞やテレビでは「半導体」という言葉を目にしない日がないほど、半導体産業への関心が高まっている。生成AI、データセンター、自動運転、電気自動車、ロボット、医療機器、宇宙機器など、これからの社会を支える技術の多くに、高性能な半導体が必要とされているからである。
半導体は、しばしば電子機器の「頭脳」に例えられる。しかし、どれほど高性能な半導体が作られても、それだけで電子機器が完成するわけではない。
半導体を動作させるためには、抵抗器、コンデンサ、インダクタなどの電子部品(受動部品)が必要であり、それらを電気的に接続するプリント配線板も欠かせない。さらに、電源を供給し、信号を伝え、発生した熱を逃がし、外部からの湿気や衝撃から保護しなければならない。
これらの部品や材料を一つに結び付け、目的とする機能を持つ電子機器として成立させるのが「実装技術」である。
従来、実装という言葉からは、プリント配線板の上に電子部品を載せ、はんだ付けする工程が連想されることが多かった。もちろん、部品を正確に搭載し、確実に接続することは現在でも実装技術の重要な役割である。しかし、今日の実装技術は、単なる組み立て技術の範囲を大きく超えている。
高周波信号をできるだけ損失なく伝えるには、配線の長さや形状、基板材料の誘電特性まで考えなければならない。
大電流を扱う機器では、配線抵抗や接続部の発熱が問題になる。AI用半導体のように消費電力が大きなデバイスでは、半導体内部で発生する熱を、パッケージ、基板、放熱材料、冷却装置を通して効率よく外部へ逃がす必要がある。
つまり、実装技術とは、半導体、電子部品、基板、材料、製造装置、検査技術を結び付け、それぞれの能力を最大限に引き出す「統合技術」である。
(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)では、この実装技術を「JISSO」と名付け世界に広める活動を行ってきている。すなわちJISSOとは、異なる技術をつなぎ、新しい価値を生み出す技術である。
この視点に立つと、実装技術は電子機器の製造工程の一部ではなく、電子産業全体を支える基盤技術であることが見えてくる(図1参照)。

図1 実装技術(JISSO)
②小型化から高機能化へ進む実装技術
これまで電子機器の発展は、小型化の歴史でもあった。かつての電子機器には、長いリード線を持つ抵抗器やコンデンサが使われ、プリント配線板に開けた穴へ部品の足を差し込み、裏面ではんだ付けしていた。その後、部品を基板表面へ直接取り付ける表面実装技術が普及し、部品と配線の高密度化が進んだ(図2参照)。

図2 MLCCの小型化推移
スマートフォンの内部を見ると、限られた面積の中に、多数の半導体や微小な積層セラミックコンデンサ(MLCC)などが高密度に配置されている。
こうした小型・高密度実装を実現するためには、小さな部品を高速かつ正確に搭載する装置、微量のはんだペーストを均一に印刷する技術、微細な接合部を検査する技術などが必要となる。
しかし、現在の実装技術が目指しているのは、単なる小型化だけではない。
電子機器の高速化に伴い、基板上の配線も単なる電気の通り道ではなくなった。周波数が高くなると、わずかな配線形状の違いや材料特性が、信号の反射や損失、ノイズの発生につながる。
基板は部品を支える土台であると同時に、信号を正確に伝える伝送路としての役割を担うようになった。
半導体パッケージでも大きな変化が起きている。かつては一つの半導体チップを一つのパッケージに収める方法が一般的であった。
現在は、複数の半導体チップやメモリを一つのパッケージ内に配置し、短い配線で相互に接続する技術が重要になっている。
その代表例が、HBM(High Bandwidth Memory)と呼ばれる積層型メモリや、複数の小さな半導体チップを組み合わせるチップレットである。大きな半導体を一枚作るのではなく、機能ごとに作られた複数のチップを高密度に接続し、一つのシステムとして動作させる考え方である。
このような構造では、半導体チップそのものの性能だけでなく、チップ間をどれだけ短く、速く、低損失で接続できるかが、システム全体の性能を左右する。
これまで半導体産業の進歩は、回路を細かく作り込む「微細化」によって支えられてきた。しかし、微細化だけで性能を向上させ続けることが難しくなる中で、複数のチップをいかに配置し、いかにつなぐかという実装技術の重要性が高まっている。
電子産業の競争軸は、「どれだけ小さな回路を作れるか」だけでなく、「異なる機能をどのように組み合わせるか」へと広がっているのである。
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- 特定非営利活動法人 サーキットネットワーク
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