電子回路基板の設計/製造や、実装関連の事業を展開する株式会社メイコー。今回はその中で、さらなる飛躍を目指すはんだ付けロボット事業にスポットを当て、事業の概要や市場の動向、主力製品などについて、産業システム機器部 部長 二宮 政士 氏、同 SRシステムグループ 課長 伊東 薫 氏にお話を伺った。
■御社の概要などについてお聞かせください
二宮 : 当社は、プリント基板の設計/製造および販売を目的に、1975年11月に名幸電子工業株式会社として創業したのが始まりになります。1991年4月には、現在の社名である株式会社メイコーに社名変更を行い、2000年12月に株式を東証ジャスダックに上場しています。
生産拠点としては、国内に神奈川工場、山形工場、福島工場、石巻工場の4拠点で、海外については、中国に広州工場と武漢工場、ベトナムのハノイにベトナム工場とタンロン工場の4拠点を設置しており、国内外合わせ8拠点体制で展開しています。
これらの生産拠点では、車載用やスマートフォン用などの様々な種類のプリント基板が製造されています。スマートフォン用では、高多層で薄くて軽い高密度基板が求められており、一方、車載用については、高い信頼性が求められており、最近では電気自動車等の普及から大電流や放熱にも対応したプリント基板が開発されています。
売り上げベースでは、車載用が全体の約50%を占め、スマートフォン用が約30%で、残りの約20%がその他になります。
当社は、今年で創業45周年を迎えており、中長期的にみてできるだけ早い時期に、さらなる売り上げの見込めるビジネスを順次展開していきたいと考えています。その中のひとつが、はんだ付けロボットにスポットを当てた事業展開で、今後は事業の柱の1つにしていけるよう取り組んでいます。
■はんだ付けロボット事業に関しての概要や沿革などをお聞かせください
伊東 : 元々、このはんだ付けロボット事業に携わるグループは、1983年に当社の電子機器部門が独立という形でグループ会社化し、メカトロ関連の設計/開発を担う当社子会社の株式会社シアックエンジニアリング(以下、シアックエンジニアリング)としてスタートしました。
創業当初は、まだロボット事業には携っておらず、大手プリンタメーカー様からの依頼を受け、プリンタのヘッド検査装置などを受託開発する事業をメインに行っていました。ただこの事業は、新規開発案件が多く、収益性の問題を抱えていました。
そのため、シアックエンジニアリングの当時の社長により自社製品のラインアップ化が提案され、今までの技術やノウハウを活かせるロボットの開発を検討しました。しかし、大手ロボットメーカーと競合するような分野ではコスト的にも対応が厳しいので、親会社がプリント基板メーカーということもあり、ニッチな分野を狙ってはんだ付けロボットに着目していきました。
ただ、はんだ付けロボットの製品化を目指すといっても、当時我々ははんだ付けの専門的ノウハウをまったくもっておらず、業界でははんだ付けロボットはすでに世の中に出ていたので、後発メーカーという立場からスタートしています。しかし、競合する他社とは事業形態や開発スタンスが異なっていたため、結果的にその違いが我々の独自性を生み出す結果に繋がっていきました。
具体的には、当時はんだ付けロボット自体は世の中に出ていましたが、はんだ付けの専用ロボットを開発しているメーカーはなく、ロボット自体はロボットメーカーから汎用品を購入し、独自開発のこて先や糸はんだの供給ユニットなどを後付けして市場に投入するというビジネスモデルが常識で、現在も同様な状況です。しかし我々は、メカトロ関連の設計/開発会社という強みを活かし、ロボット自体からすべて自社で設計/開発を行う方針を打ち立てました。その特徴の一例としては、ロボットを始めとして、こて先や糸はんだの供給などを制御する際に、ユニット毎にコントローラが必要だった従来の他社製品と異なり、コントローラが1つですべて対応できることで、結果的にこて先の移動とはんだ送りの動作を最適なタイミングで実現することに成功しました。このような製品はその当時、業界に存在せず、この一例を取ってみても当社製のロボットがはんだ付け“専用”機と呼ばれる所以となっています。
そして、この「タイミング」の追求が当社ロボットの重要な開発コンセプトとなっていきました。また競合メーカーは、手はんだ用のはんだゴテも販売していることもあり、はんだ付けの専門的ノウハウなどを色々もってスタートしていますが、先程も述べたように我々ははんだ付けに関する専門的なノウハウをもっていない状況からのスタートであり、この違いも我々にとって良い方向に転じてくることになります。
それは、開発したはんだ付けロボットではんだ付けを行った時、設置環境、お客様のワークの状態、使用する糸はんだ/フラックス、ワークの押え治具など、ロボット以外の要因で上手くはんだが付かないケースもあります。その際に、競合メーカーはそのはんだ付けの専門的ノウハウにより、ロボット以外の要素の改善により解決策を講じていくケースもあります。しかし、我々はそのようなはんだ付けの専門的ノウハウがないので、上手くはんだが付くようにロボット自体の改良を主眼にして対策を講じていきました。このスタンスが結果的に、はんだ付け専用ロボットとしての独自性および強みに繋がっていったと考えています。
沿革としては、1985年にオリジナル製品第一号となるスカラ型はんだ付け専用ロボット『LETHER-1』を開発しています。シリーズ名の“LETHER(レーザ)”は、ライト(Light)、エレメント(Element)、テクノロジー(Technology)、ハイエンド(High End)、ロボット(Robot)の頭文字を取って付けられています。この製品の特徴の一例として、精度や再現性を確保するために糸はんだを送るモータを2つ付けており、このような仕様の製品は業界でも例がなく、これがのちのちはんだ付けのポイントとなる、糸はんだを送るタイミングに効果的なことが判明し、それが我々の独自性にも繋がり、現在の主力製品に至るまで継承され続けています。
また、市場に展開されているロボットの中からスカラ型を選択した理由としては、移動スピードが速いということが1つのベースになっています。それから、バッチ(セル)式からインライン式といった生産体制に変更が発生しても、卓上型ロボットとは違って変更が柔軟に対応できる点などがあります。
シアックエンジニアリングとしての営業展開は、国内では家電市場を中心に実績を伸ばしていき、2000年前後からは海外にも進出を始めて最初は苦戦しましたが、特に世界の携帯電話の生産拠点が韓国に集中していた頃に、我々の製品の性能が認められ、携帯電話市場をメインに実績を伸ばしていきました。
そして、2016年にメイコーブランドによるはんだ付けロボット事業のグループを立ち上げ、商社様や販売会社様を中心にした国内市場へのアプローチをリスタートしています。
- 会社名
- 株式会社 メイコー
- 所在地
- 株式会社 メイコー
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