今回も『野菜』についての話題を紹介しよう。
野菜には独特の色や香り、苦味があるが、その主な成分はポリフェノールで、植物自身が紫外線などの外敵から身を守るために光合成によって作り出す成分であるという。
このポリフェノールには活性酸素から植物の組織を守る働きがあり、野菜や果物を食べることで、人にも良い影響をおよぼしているのではないかと様々な研究が進んでいる。
野菜はビタミン、ミネラル、植物繊維など、健康を支える様々な栄養素を豊富に含んでいるために野菜を豊富にとることを薦めている。1日の野菜摂取目標量は350gと言われている。
米国のNational Cancer Instituteは、1990年に、健康に役立つ約40種類の食品を選定した。この中には多くの野菜が含まれている。
にんにく、きゃべつ、大豆、生姜、にんじん、セロリ、ブロッコリー、ケール、トマト、玉ねぎ、ウコン、カリフラワー、茄子、ピーマン、柑橘類、茶、全粒小麦、玄米、大麦、エン麦、じゃがいも、きゅうり、あさつき、バジル、タラゴン、ハッカ、オレガノ、タイム、ローズマリー、セージ、メロン、ベリーなど。
日本で昔から食べられている健康野菜として注目されているものに、かぼちゃ、むらさきいも、パセリ、ほうれん草、モロヘイヤ、赤きゃべつなどがある。
健康野菜で特にゴーヤーが沖縄の伝統的な健康野菜である。シトルリンを多く含んでいるためか、沖縄は、100歳以上の人口比率が日本一を誇る(2005年国勢調査)という。
レタスやきゃべつなどの淡色野菜にはビタミンCが多く含まれ、緑黄色野菜にはカロチンを多く含み、豆類には良質なたんぱく質が含まれ、根菜類には植物繊維を多く含む。さらにトマトやきゅうりなどの夏野菜にはカリウムが多く含まれている。
野菜は元来、少量多品種であった。我が国で栽培されている野菜の大半は海外から輸入して品種を改良して定着させたものであった。日本で古来からある在来種は『大根』と『わさび』ぐらいであったともいわれる。
ところで、世界でもっとも広く消費される野菜として『トマト』と『とうがらし』ともいわれている。ちなみにとうがらしは世界で250万トン生産され、中でもインドが75万トンで世界一の生産規模となっている。カレー粉の中にトウガラシを入れて辛いカレーを作るのでインドの生産規模が大きいのもうなずける。
以下に、いろいろな野菜のルーツを探ってみよう。
●そらまめ
世界でもっとも古くから栽培されていた作物で、紀元前5,000年頃から利用されていた。原産地は中近東と考えられている。さやが空に向かって成長することから『そらまめ』。中国から伝わってきたため『唐豆』ともいわれる。現在は、中国が世界一の生産規模であり、第2位がエチオピアとなっている。戦前の日本では西日本一体、5万ヘクタール以上で栽培されていたという。現在、鹿児島が日本一の生産量となっている。
●かぼちゃ
かぼちゃの原産地は中南米といわれ、メキシコの洞窟では、紀元前7,000?5,500年の地層からかぼちゃの種が発見されている。荒地で栽培が可能なため、世界各地で栽培されている。
日本に伝来したのは1541年ごろで、現在の大分にあたる豊後国とポルトガルとの貿易が開始した際、豊後国の大名、大友宗麟にカンボジア産のかぼちゃが献上されたのが始まりといわれる。
かぼちゃの語源は、このカンボジアだという説が広く知られている。当時の品種は『日本かぼちゃ』の元となり、日本中で栽培されている。しかし、明治時代以降になって、甘みが強く、調理法が豊富な西洋かぼちゃが9割を占めるようになった。
10月31日に『Trick or Treat』(おかしをくれないといたずらするぞ)というハロウィンの欧米の行事では、かぼちゃの中味をくりぬいて蝋燭をいれた『ジャック・オー・ランタン』と呼ばれる提灯が登場する。
●レタス
きく科の野菜で、中国を経由して日本に伝播したのは7世紀のことで、薬草としてもたらされたものである。
幕末にアメリカから玉レタスがもたらされたが、普及しなかった。本格的に栽培が始まったのは進駐軍用の食材として特別に栽培されるようになってからのことである。当初の栽培地は、アメリカの大産地であるカリフォルニア州のサリナスの気候に似ていることから長野県の川上村が選ばれた。
レタスは発芽も生育も18?22℃が適温となっている。春は、茨城や群馬の平地、夏秋は長野、群馬の高冷地、冬は静岡、四国、九州の暖地という風に栽培に適した『旬』を選んで栽培されている。1965年代は20万トン前後だった生産量が、1975年代には40トン以上に成長している。2010年の生産量が36.2トンとなっている。
●生姜
生姜は熱帯アジアが原産で、日本には2~3世紀ごろに中国より伝わり、奈良時代には栽培が始まっていたという。生姜の栽培には、長い日照時間と地下を水分が循環できる環境が必要なため、河川が豊富で適度な湿度と気温がある地域が栽培に適した野菜である。
生姜は体を温める成分として『ショウガオール』『ジンゲロール』『ジンゲロン』を含んでおり、これらが血流の巡りを促し、熱生産を高め、体を自然に温めてくれるのである。
日本の生姜の産地としては高知県が有名である。これは四国が誇る四万十川と吉野川の清流域で育てられているためである。
●らっきょう
らっきょうは中国、ヒマラヤ地方が原産地である。明治初期に、福井県北西部に広がる砂丘地において砂が飛び散るのを防ぐために花らっきょうが栽培されるようになった。鳥取砂丘でも栽培されており、三大生産地の一つになっている。
カレーライスにはらっきょうは付き物である。実はカレーの本場、インドでは、辛さを和らげるため、酸味のあるピクルスを付け合せに使っていた。それを見てらっきょうの甘酢漬けができたのだという。明治時代になってじゃがいもが輸入されて栽培されるようになり、カレーにじゃがいもを入れるようになった。これもカレーの辛さを調整する役目をもっているために入れられるようになったという。辛いと感じる人は、じゃがいもをスプーンで潰して辛味を調整すればよいのである。
明治時代になってこのらっきょう以外にきゃべつ、じゃがいも、玉ねぎ、トマトなどの西洋野菜が輸入され、品種改良されて定着していった。日本に来た野菜は、必ず原産地のものより大きくして栽培されたという。ここにも、日本の品種改良のたゆまぬ努力があったのであろうか?
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