今、日本の食料自給率は約40%で先進国の中では非常に低い状況にある。2030年までに自給率を50%まで向上させる目標を掲げている。東京には人口が集中し、東京都の食料自給率はたったの1%という。耕作する農地がなくなり、無理からぬ状況と推察するが、少し詳しくみてみよう。
東京23区で第4位の農地面積を有する江戸川区は、1980年には約400ヘクタールあった農地面積が、住宅などに転用されてしまい現在は80ヘクタールまでに減少しているという。主に農業に利用される生産緑地が約40ヘクタール確保されており、農地を減らさないようにしながら、農産物の生産が続けられているという。
東京都では、江戸川区で『小松菜』、足立区で『枝豆』、板橋区で『ぶどう』などが採れる。地産地消として、小松菜を直接、学校に納入し、学校給食に供されているという。また、もともと荒川の周辺には、伝統野菜として、寺島なす(墨田区東向島・八広付近)、本田うり(葛飾区)、三河島菜(荒川区)、葛西蓮根(江戸川区)などが生産されていた。
東京=江戸は、徳川家康が町づくりを始めて多くの人が集まり、一大消費都市となった。そのため、全国の米が江戸に集まることになった。
問題は生鮮野菜の供給であった。生鮮野菜の供給が間に合わず、江戸幕府は、江戸周辺に幕府直轄地を集中させ、野菜の生産地とした。
江戸城の東側は旧利根川(現在の江戸川)に面しており、豊かな土地に恵まれ、海に近く、気候も暖かいことから、葉物野菜の栽培に適していた。
さらに城の西側は、土地が深く、乾燥する大地で、根菜類の栽培に適していたという。本格的な野菜作りが始まったのは、深川、北砂、南砂である。
将軍家が使う野菜をつくる直営の畑として『御前栽畑』があった。寺島茄子は、御前栽畑で栽培された茄子のことで、昔は、江戸は農業の先進地でもあった。
関西から入った青ねぎは、江戸の風土に合わせて土寄せして育てたことで、白い部分が長い『千住葱』に生まれ変わった。
練馬では、五代将軍・徳川綱吉が尾張から種を取り寄せて練馬で大根を作らせた。これが『練馬大根』となった。そのほか、品川区の『品川カブ』などもある。江戸の地名がついた野菜には、以下のようなものがある。実に豊富である。
● 小松菜(江戸川区)
● 亀戸大根(江東区)
● 金町コカブ(葛飾区)
● 千住葱(足立区)
● 谷中しょうが(荒川区)
● 寺島茄子(墨田区)
● 滝野川ごぼう(北区)
● 品川カブ(品川区)
● 馬込三寸人参、馬込半白胡瓜(大田区)
● 練馬大根(練馬区)
このように、当時、100万人の人口を擁する江戸は、新鮮な野菜を調達する仕組みを作り、肥料には人糞を使って、その人糞の売買も実践されていた。鎖国政策を実施していたので、当時の江戸はすべてを賄うことができる循環型社会が構築されていたのである。
江戸の近場で生野菜を生産し、『地元でとれた食材を地元で食べる』とのコンセプトは、今や『地産地消』の考え方である。『新鮮』で、『作る人の顔が見えて安心』、そして『輸送距離が短く環境にもやさしい』(フードマイレージが短い)となる。
東京に近い千葉県は、『地産地消』を『千産千消』と称して農産物の拡販を狙っている。千葉県は、『食材の宝庫』ともいわれ、東京、横浜などに一大消費地を近場に抱える有利な場所に位置する。千葉県はさらなる発展図るために、『農工連携』『農商連携』が必要との認識で取り組みが始まっている。
2009年12月、改正農地法施行によって、借地であれば企業やNPO法人は農業に参入できるようになった。改正農地法では、市町村長が認めた耕作放棄地や遊休農地だけに限っていた企業への農地の賃借を、全国どこでもできるようにした。そのため企業の農業参入が加速してきている。
農地を買うことができる農業生産法人への出資比率の上限も1/4以下から1/2未満に引き下げ、新たに農業に参入した企業は、『野菜』は流通や食品メーカーが、『米』は地方の建設業による参入などとなっている。法改正後、2年で農業に参入したのは1,000法人を超したともいわれる。
農業従事者の高齢化に伴って全国的に耕作放棄地が増えたり、遊休の農地となったりして大きな課題を抱えている。しかし、一方で安易に安いからといって日本で耕作できる野菜などを海外から輸入して自給率を下げることは将来的には大きな問題である。
少しでも『農業の工業化』を進めて、食料自給率を上げなければならない。効率良く大量生産できる仕組み作りも必要であると思う。そういう意味では、千葉県は消費地に近い一大市場を保有しているのだからさらなる農業の工業化を進めて、江戸時代の頃のように関東地区への一大供給県として邁進してもらいたいと思う。
また、経験と勘による農業を実践するのではなく、工業界で実践されている具体的な数値管理をITなどを駆使してデータベース化して効率の良い栽培方法へと転換することも必要ではないだろうか。農業も既成概念にとらわれることなく、新しい発想も持ち込んでの栽培が必要だと思う。
山登りで山奥に入って不思議に思うのは、肥料も与えていないのになぜこのように森林が見事に成長するのかということである。
先日も山登りで静岡の越前岳に登った。雨の中でガレバを登った時、登山道が荒れ、迂回する必要があった。確保のために木を持ったところ、雨で地盤が弛んでいたせいか小さな木が抜けてしまい、もう少しで滑り落ちる所であった。
この時、木の根にこんもりと付いた土地のにおいを久しぶりに嗅いだ。土地が肥えた良いにおいであった。この時にふと思ったのが、肥料も与えられない山奥なのに、なぜ自然の木々は立派に育っているのかということだった。その一方で、野菜などを栽培する畑を見ると、肥料のみならず農薬を撒いて畑の土地を弱らせ、挙句の果ては、野菜自体を弱らせているのではないかと思ったのである。
無農薬の有機栽培を実践する農家も増えてきていると思うが、さらなる自然への回帰も必要ではないかと思った次第である。そのヒントはどうも、山奥深い『森林』にありそうだ。
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