デンマークは1973年に石油危機に見舞われた際、エネルギー自給率は約2%で、エネルギー供給の98%を、輸入したエネルギー源に依存していた。
デンマークには山らしき山がなくすべてが平野といった国土である。デンマークの最高峰、というか最高地点はミョレホイという場所で、標高はたったの171mである。このような国土となっているため、渓谷を堰き止めてダムを造って水力発電をするには、相応しい場所がないのである。
水力発電は再生可能エネルギーとして位置づけされるものの、同じ北欧でありながらノルウェーと異なる。ノルウェーは99%が水力発電によって電力を得ている。ノルウェーと比較するとデンマークはハンディーを背負っていることになる。
1973年当時、デンマークの電源は石炭火力発電と石油火力発電によって得ていた。石炭/石油が35/65の比率であった。
そして石油危機から間もない1976年5月、国外の産油国への依存度を低減することを目的とした「エネルギー計画 1976年」の政策を公表した。その骨子は、
①北海油田の開発
②発電余熱と天然ガスを利用した給湯計画の実施
③補助金制度を導入した省エネの奨励
④エネルギー税の導入といったものであった。
エネルギー自給率が低く石油の依存度が高く、1970年代の石油危機を契機として、自給率を高めるために北海油田の開発や効率化/省エネの推進などを検討することになったのである。
実は第一次オイルショック直後の1973年にエネルギー不足を補うためにデンマークでも電力会社は15カ所に原子力発電所の建設計画があった。
しかし、1979年に発生した米国スリーマイル島原発事故によって、世論は原子力発電に頼るのではなく放棄に傾き、1985年、原子力発電に依存しない公共エネルギー計画を議会が決議したのである。
1986年のチェルノブイリ事故の前年に、デンマークは原子力発電ではなく、再生可能エネルギーによる道を選んだのである。そこで登場したのが平地と長い海岸線を利用しての風力発電である。
1981年12月、『エネルギー計画1981年』ではエネルギーの効率的利用の促進、エネルギー源の分散化の促進などを発表するとともに、1982年4月には、北海油田の開発に力をいれることを決議し、15カ所の採掘の許可を出すまでになった。
1990年になると『エネルギー2000年』というものを策定し、地球が持続可能な発展を維持するため、デンマークの果たすべき目標として、
①エネルギー消費量を2005年までに1988年水準比15%削減
②二酸化炭素排出量を2005年までに同20%削減
③再生可能エネルギーを5?10%増加させる
を掲げ、そしてこの目標達成のための方策として次の施策を掲げた。
①エネルギー消費量の削減
②エネルギー供給体制の効率化の改善
③クリーンエネルギーへの切り替え
④研究開発の奨励
1992年になると北海油田の開発に成功し、石油の純輸出国となったのである。さらに1996年に、『エネルギー21』では、
①2030年までに海上風力発電所を合計400万キロワット建設
②2000年の設備量170万キロワットと合わせて電力消費量の50%を風力発電で賄うといった計画を立てたのである。
『自然エネルギー100%供給プロジェクト』を小さなサムソ島で、実施することをデンマーク政府が発表し、10カ年計画を1998年より開始した。
2005年8月頃には、風力発電機の導入は5,325基にも達し、2008年になるとデンマークのエネルギー自給率は130%になり、電力はノルウェーやドイツに輸出するまでになった。
エネルギー自給率2%であった国が、今や130%の自給率となったのであるから驚きである。
デンマークは小さな国なので、風力発電によって得た電力は不安定な電力となってしまうという問題を抱えているものの、陸続きの地を活かして欧州の巨大電力市場に風力発電した電力を販売することによって相殺しているのである。
デンマークは海外に輸出した風力発電で得た電力よりも多くの安定電力を海外から購入しているのである。国内で変動で処理できない約8割程度の風力で得た電力を海外に廉価で販売し、その代わりに安定した電力を海外から購入して自国用に消費しているという点があるがゆえに、風力発電を高めても、その変動を自国内で吸収するのではなく、欧州の全体の中で吸収するといった仕組みを活用しているのだ。
水力発電も保有できないハンディーをもちながら、原子力発電を保有していなくてもエネルギー自給率130%(2008年)を達成したその努力を見習わなければならない。もちろん、デンマークは555万人の人口であり、日本と比較すると規模が小さいという点はあるが……。
このデンマークの取り組みを参考にして、エネルギー自給率を78%までに高めた町がある。『北緯40°、ミルクとワインとクリーンエネルギーの町』として知られる岩手県葛巻町である。主な産業は酪農で、人口8,200人で面積の9割が山林で占める町である。1.1万頭の乳牛が飼育され、東北一の酪農郷である。葛巻町は、地域の資源を宝に、自然の恵みを生かした『ミルクとワインとクリーンエネルギー』に取り組み、地球規模での課題である『食料・環境・エネルギー』の問題解決に挑んだ町である。風力、太陽光、木質、メタンの4つのエネルギーを活かしての活動の成果がここにある。
葛巻には、15基の風力発電設備や太陽光発電設備を導入し、間伐材の8割は山に捨てられていたが、唐松の間伐材を使った木質系バイオマスガス発電設備、さらにくずまき高原牧場では乳牛の糞尿を利用してのメタンを発生してのバイオガス発電設備などを導入することによって電力自給率は180%、エネルギー自給率はなんと78%、食料自給率は200%にもなっているのである。
目の前に森林資源がありながら放置している町や村が多く存在する日本である。海外から石油などを購入するのではなく、目の前にある資源を活用することを考えないのであろうかと、デンマークの取り組みを学んだ葛巻町を見て、大いに考えさせられた。
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