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テクニカルレポート
2026.05.26
AIを用いた基板外観検査の取り組み
(株)レクザム

基板外観検査装置『Sherlock』シリーズでは、2026年4月以降よりAIを用いた検査機能が新たに実装された。これにより、「部品の有無検査」「極性検査」「文字認識検査」の3種類の検査においてAIによる判定が可能になった。

社内工場で実施した検証において、AI導入前後を比較した結果、虚報(合格品を不合格と判定すること)の発生率が90%以上低減し、大幅な改善が確認された。本稿では各AI検査の概要について紹介する。

 

①部品の有無検査

角チップ抵抗などの部品が正しく実装されているかを検査するために一般的に用いられる方法として、従来はパターンマッチングによる物体認識が用いられてきた(図1)。

図1 従来のパターンマッチングとAIによる部品有無検査の概念比較

 

しかし、テンプレートとして登録した部品と実際に実装された部品との色味の違いにより、検出精度が低下するという課題があった。基板実装ではロットの変更や代替部品の使用が頻繁に発生するため、部品色の変化は避けられず虚報発生の要因となっていた。

こうした色の変化に起因する虚報の増加や、頻繁なデータ修正の手間を根本的に解決するためにAIを利用した部品有無検査の開発に着手した。

近年AIを用いたサービスや製品は広く利用できるようになっており、商業利用可能なAIプラットフォームも充実している。多数存在するAIモデルの中から基板外観検査で必要な精度と検査速度を両立できるAIモデルを選定し、多種多様な部品画像を学習させることによって検出精度を高めていった。

自社に基板の製造工場を持っている利点を生かして部品画像を収集し、出来上がった物体認識ソフトを自社工場でテストすることでAI導入の効果と課題を継続的に検証した。

テストの結果、角チップ抵抗などの学習対象とした部品に対しては高い検出精度を実現するとともに、認識位置精度においても誤差約20μmに収まるようになった(図2)。これにより、部品の実装有無だけでなく、正確な実装位置の検査も可能となった。

図2 AIによる部品認識位置精度のイメージ

 

②極性検査・文字認識検査

ダイオードなどの極性検査において虚報が発生する主な原因は、極性マークや印字のカスレによって視認性が低下することや、ロット変更に伴う印字文字の変化が挙げられる。従来の極性検査もパターンマッチングをベースに検査を行っているため、文字のカスレや印字の変化は検査精度の低下を招きやすく、特に印字変更によるマッチングスコアの低下は避けられず、その都度データ修正が必要であった。

AIを用いた極性検査ではAIを分類器として利用している。部品の有無検査では指定範囲内における部品の位置検出を目的にAIを使用していたが、極性検査では印字の存在を前提にして、その印字がどちらの方向を向いているか判定する用途で利用している。

文字を1文字ずつ判読するのではなく、文字列全体の中から方向が分かる文字の方向を判断する。「W」や「6」のように回転しても判読可能な文字は判定対象から除外し、回転しても判読可能な文字だけで構成された印字の場合には不合格として判定するように学習を行っている。

また、印字のカスレや検査画像の位置ずれに対応するために収集した画像に対して、位置や角度をずらした学習データを生成し、実際の検査環境を疑似的に再現した状態で学習を行った。

極性認識の妥当性評価には、単に合否判定結果を見るだけでなく、AIがどの領域に注目して判断したかを可視化するGrad-CAMを用い、適切な箇所から極性を認識していることを確認している。

図3に示す例では、「JAPAN」という文字列周辺に注目して極性判断が行われていることが分かる。一方で、「000」のように回転させても判読可能な文字や記号に強く反応している場合には、AIが本質的でない特徴を学習している可能性があるため、学習データや学習内容の見直しが必要となる。

図3 Grad-CAMによる極性判断時の注目領域例

 

学習した結果、印字文字や印字のカスレに対しても高精度に極性判定が可能となり、虚報の大幅な削減を実現した。あわせて、印字変更への対応力が向上したことで、データ再設定の作業負荷もほぼ解消された。

一方、文字認識検査における虚報の要因としては、文字のカスレや特殊なフォントによる判読ミス、さらには文字以外の模様やノイズを文字として誤認識することが挙げられる。

そのため文字認識では部品の有無検査、極性検査で用いた考え方を組み合わせて、「文字が存在する位置」と「その文字の内容」をそれぞれ判定する構成とした。既存のOCR技術も併用することによって高速かつ高精度な文字認識を実現している。

今後もAIを用いた検査手法の開発を継続し、さらなる虚報低減を目指していく。

 

 

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