1. はじめに
昔の電子部品倉庫のイメージは、 暑い、大声、うるさい、作業者はタンクトップか上半身裸であった。
あるロットをちょっと取り出して、検査したいと若い技術担当が言ったら、倉庫責任者から罵声を浴びた。
実際、そのロットを取り出すという物理的作業がとっても困難で、倉庫担当から怖い顔でいじめられた。
フォークリフトが、液晶や電子部品の入った段ボールを突き刺すといった、信じられないトラブルも昔は、本当に起きた。
しかし、香港のゲートウエイポジションを有効活用した電子精密機器、電子部品対応特化倉庫では、ITでロット管理され、女性の担当者が、すっ、と特定ロットを取り出し、倉庫内で開梱することができる。
他のアジアの保税倉庫で、開梱し、部品を検査し、勝手に不具合品を廃棄したら、それだけで罰金や有罪になる可能性もある。
今回は、NECグループの生い立ちを持つ物流会社である、Nippon Express NEC Logistics Hong Kong Limited (NECLHK)/日通日電物流香港有限公司の特殊倉庫について報告する。
赤ワインの倉庫を除いて、倉庫にモノを置いても、付加価値は絶対に生まれないのであるが、このNECL HKでは、さまざまな、顧客の依頼に合わせて、顧客の付加価値が創出されるのだから不思議である。
また顧客対応する、営業部門の現地総責任者(総経理)は、日本人女性で、複雑な顧客要望に合わせて、倉庫の采配を振っているのだから、素晴らしい・すごいとしか、言いようがない。
倉庫に対するイメージを30年ぶり変えることができた。
① ゲートウエイとして香港のポジションを活用
② フリーポート香港のメリットを最大限に生かし、倉庫で顧客の付加価値を創出
③ 電子精密機器、電子部品対応特化倉庫 ESD対応
④ ITチーム、品質管理チームを倉庫内に保有
⑤ セキュリティ認証TAPA 最高位クラスA 保有
⑥ 倉庫スタッフ170名、全員正社員 うち女性40%
2. 電子精密機器、電子部品対応特化倉庫
香港九龍の西側、 空港から20kmの新界荃湾にある、10階建てのビル(●写真1)に3PL(サードパーティー・ロジスティクス)(※)NECL香港の倉庫がある。
半導体商社(十数社)、電子部品メーカー(数社)、NECグループ、時計メーカー、電子機器メーカーなどの日系40社以上が10階すべてフロアを使って、メーカーや商社の自前倉庫のように電子機器、電子部品を管理している(●写真2、●写真3)。
(※荷主企業から物流業務を包括的に受託し、もっとも効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築を荷主企業に代わって実施する)
写真1 NECL HK 倉庫外観
写真2 個装保管されている電子部品
写真3 倉庫内の様子
① ゲートウエイとして香港のポジションを活用
ハブ空港貨物取扱第2位と飛行機便数が多く、コンテナ本船の数も多い香港をゲートウエイとして利用すると、早くモノを移動させることができる。
香港はフリーポートであり通関も事後申請(輸入/輸出日から起算して14日以内)であるため、超特急で対応すれば、飛行機が着いた当日ないしは翌日には、倉入れできる。
電子部品は無税であるため、関税やその他税金をセーブしながら香港をゲートウエイとして隣接地域マーケットへの陸路即納体制が構築されている。
そのようなことは、日本も含めた他のアジアでは絶対にあり得ないことである。
② フリーポート香港のメリットを最大限に生かし、倉庫で付加価値を創出
酒やたばこなどを除いて、フリーポートである香港には、電子部品の保税庫は必要ないし存在しない。
このNECL倉庫は、コンテナ搬入エリアを除いて、温度:10~30℃、 湿度:30~70%RHで全フロア温湿度管理がされ、ダスト対策でコーティングされた床をもつ、電子部品に好都合な付加価値創出作業倉庫である。
開梱し(●写真4)、数量調整、ロット小分け、仕向け地用ラベルの貼り付け(●写真5)、検査(●写真6)、改造と組み立て(●写真7)、ソフトウエア書き込み(●写真8)、顧客オーダー数対応での、カバーケース色変更や梱包変更、出荷前充電、エイジング、再梱包(●写真9)など、倉庫内で付加価値が創出できる。
写真4 検査のために部品を開梱
写真5 電子機器の仕向け地別ラベル貼り付け
写真6 電子機器の再検査
写真7 電子機器の改造組み立て
写真8 電子機器のソフトウエア書き込み
写真9 電子部品の再梱包と出荷準備
仕向け地用対応ラベルを生産工場で貼らずに、倉庫で出荷先が決まってからラベル貼り付けするだけで、在庫数管理の最適化が達成される。
他の国の保税倉庫で開梱し、取り出し、数量変更、付加価値追加などは、保税倉庫のステータスによっては様々な制約を受ける。
このように香港の倉庫で在庫管理、付加価値創出後に、必要数だけをベトナム、タイ、マレーシア、欧米などに出荷することができるので、部品メーカーや電子部品商社の自前倉庫のような最適管理が実現する。
③ 電子精密機器、電子部品対応特化倉庫
規模は小さいがクリーンベンチによるダスト低減ゾーン+ESD管理エリア(●写真10)で、静電気対策を行った状態で、半導体IC部品の真空梱包を破って、移載、ICトレイからの小分け(●写真11)、選別などを行い、新しい乾燥用シリカゲルを入れて、真空再梱包もできる。
写真10 クリーンベンチとESD管理エリア
写真11 ESD管理エリアでのICトレイからの小分け
天井梁下高さが2.8mと倉庫としては低いが、その高さを逆に活用し、比較的軽く、小型梱包の電子部品の保管効率を良くしている。
もともと、香港は市内に空港があったので、建物の高さ制限があり、天井高さを制限し、フロア数を稼ぐ手法が、ホテルと同様に取られた。
通常倉庫のように、5mぐらいの天井があると、空間有効活用のために、フォークリフトを使って、棚を使ってパレット単位で、移動し、積み上げる。
フォークリフトを使うと、コーティング床がすぐにダメージを受けるし、通路の幅も広くなるので、結果的に、低天井の方が、電子部品倉庫には、向いている。
顧客電子部品メーカーが商社に部品を販売する場合でも、倉庫内の階を移動させるだけで取引売買が完了する。
また最近のIC部品不足の状況から、市場品流通前の正規品証明資料作成用の開梱、外観検査、メーカーラベル写真撮影などの要望も増えている。
またハンドリフトにパレット重量測定用電子スケールが付いていたのには、驚いた(●写真12)。
写真12 重量測定用電子スケール付ハンドリフト
④ ITチーム、品質管理チームを倉庫内に保有
NECのDNAをもつ、ITチーム、品質管理チームが、シリアル番号、Lot番号データ収集、在庫管理や、顧客ごとのデータに合わせた管理ソフト変更対応することが、香港内倉庫で対応できることは、素晴らしく、特筆できる。
⑤ セキュリティ認証TAPA クラスA 保有
製品の輸送・保管中の紛失・盗難を防ぐためのセキュリティ(保安・警備)規格 である、TAPA(Transported Asset Protection Association)の 最高位 クラス A認証を保有している。
香港では、ほとんどの倉庫がクラスAを取得しておらず、香港進出日系物流会社 約130社でも、ほんの数社だけである。
倉庫内には、監視カメラがあちこちにあり、各フロアのドアには、入出認証システムがある。
●番外編・香港物流アート
香港の美術館で、倉庫のパレットを使った、不思議な香港らしいオブジェ展示があった。
ITを活用した、新しい倉庫が、将来、さらにハイテク化し美術館のようになることも、思い浮かべることができそうである(●写真13)。
写真13 パレットを使った、不思議な美術館でのオブジェ
- 会社名
- Grand Joint Technology Ltd
- 所在地
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