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テクニカルレポート
2016.07.29
製造現場における 『節電・省エネ』に向けた仕組みづくり
電力の『見える化』と『デマンドコントロール』
双和電機(株)

 

東日本大震災に端を発した福島第1原子力発電所事故の後、全国で原発の再稼働が進まなくなる中、『電力不足』が長期化する可能性が強まってきている。

 今年の夏に向けての『節電・省エネ』が緊急の課題になっているが、当社では、一昨年来取り組んできた製造現場での『ある取り組み』が、結果的に『節電・省エネ・経費節減』につながっているので、本稿ではその取り組みについて紹介する。

はじめに

当社は、プリント基板実装を主な業務とする中小企業で、今年創業48年目を迎える。

 特徴は『多品種少量生産』で、月間約800種類、年間4,000種類以上のプリント基板実装をしている。生産ロットは数枚?100枚以下がほとんどで、4ラインある実装ラインでは毎日10数回の段取り替えが必要になる。

 ユーザーとしては産業機器関連がほとんどで、鉛はんだを使用する機種もまだ多くあることから、リフロー装置の温度設定を変更するだけでも時間がかかっており、無駄な電力消費もある。

作業場環境の改善

図1 リフローの『断熱』に使用したパーツ

図2 パーツ装着前のリフロー

図3 パーツの装着が完了

  当社では一昨年の夏(2010年7月)に、リフロー装置を2台入れ替えた。しかし、装置の外装温度が予想以上に高かったため、実装ライン周辺が非常に暑くなった。また、この年は猛暑だったこともあって、新規導入したリフロー装置周辺の室温は、エアコンをフル稼働させても30℃以下にすることができない、というような事態になってしまった。

 そこで急遽、このライン付近にエアコンを増設したものの、リフロー装置近くで作業する作業者にとっては『焼け石に水』といった状態であった。それでも、作業者には我慢をしてもらいながら、この年の猛暑はなんとか乗り切ったが、『次の夏までには何とか対策したい』と考えるようになり、いろいろ検討した結果の答えが、『断熱』であった。

 『リフロー装置全体を覆う断熱ジャケット』のような製品はすでに市販されていたようだが、装置全体を覆うことによる弊害(装置内の制御機器・部品等への悪影響)が予想されたこともあり、『炉体部分のみを断熱』することにこだわった。

 とりあえずやってみないことにはわからない、ということで、(失敗する可能性もあったため、まずは)古い装置で実験的に『断熱』を試みた(図1、図2、図3)。断熱材を接着剤や耐熱テープで固定するといったかなり乱暴な方法での実施であったが、2010年12月?2011年2月ごろまでかけて評価をした。

 まず、装置を改造することによって思わぬ品質問題を発生させないために、『改造前に設定していた条件の温度プロファイルがそのまま再現できる』ことを最低限の条件として掲げて評価したのであるが、これはまったく問題なかった。

 次に、もともとは『外装温度の低減』が目的であったことから、改造前後の外装温度を計測し、比較することにした。すると、改造前にはリフローゾーン天板付近で最大53℃近くあったものが、改造後は40℃程度まで下がり、最大で15.1℃低下、リフロー部平均で11.3℃低下することが確認できた。

 装置近傍でも輻射熱をほとんど感じないレベルにまで外装温度が低下したことにより、『作業現場の環境改善』と、エアコンへの負荷低減による『省エネ』がはかれるものと期待された。

 また、本来の目的ではなかったが、『断熱』することによって多少なりとも装置そのものの『省エネ』にならないかと考え、『電力計』を取り付けて、改造前後の電力使用量の計測も行った。すると、短期間での評価ではあったが、電力計を取り付けることによって電力使用量を『見える化』でき、その効果は一目瞭然であった。改造前後で、『電力使用量を約16%低減できる』という結果が得られたのである。

 

会社名
双和電機(株)
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