1. はじめに
ムーアの法則は、LSIのパターン微細化により進展してきた。そのためにはパターニングのためのフォトレジスト工程の進歩が著しいが、今月はその進歩の経過をざっと眺めてみよう。
図1は、説明するまでもないが、フォトレジスト工程の概略である。どのプロセスも微細化にとって重要であるが、特に露光技術について取り上げる。
図1 フォトレジスト工程のプロセス・フロー
パターンの解像度は、次のレーリーの式で表される。
微細化を進めるために行われたのは、露光波長λを小さくすることである。初期の頃は、水銀ランプのg線、i線が用いられたが、エキシマレーザが使用できるようになり、微細加工が進んだ。エキシマとはExited Dimerの略で、Arのような不活性ガスをプラズマで最外核の電子を剥離して活性化し、ハロゲン原子と化合物を作り、それが基底状態に戻る時に発光するものである。まずクリプトンとフッ素の化合物であるKrF(λ=248mm)が用いられ、次いでアルゴンとフッ素の化合物ArF(λ=293mm)が実用になって、現在も主流の露光機(ステッパ)となっている。露光機のこれまでの経過を表1に示す。
表1 露光装置の変遷
2. 超解像技術
以前は、露光波長より微細なパターンはできないと考えられていた。そのため、X線の露光が精力的に検討されたが、適当な線源がなく、光学系の製作も難しくて実を結ばなかった。ところがArFの露光機を使用して次々に巧妙な技術が開発され、線源の波長の1/10である20mm以下の微細パターンが実現できることになった。近接効果補正、位相シフト、輪帯照明、液浸ステッパ、ダブルパターニング、トリップルパター二ングなどである。
図2は、OPC(Optical Proximity Correction、近接効果補正)の例である。SRAFは、Sub-Resolution Assist Featureの略で、解像度以下の細いパターンであるが、これにより近接したパターンが正常になる。マスクのパターンはウエハ上のパターンの4倍の大きさであるが、OPCやSRAFは、必要とするパターンよりはるかに微細であるから、描くためには微細な電子ビームが要求され、描画時間がかかり、コストアップの原因になっている。
図2 OPC(Optical Proximity Correction、近接効果補正)の例
図3に示すのは位相シフトである。2本の線の間隔が、解像度以下の狭いパターンの場合、普通に露光すると左図のように2本の線が太い1本の線になってしまう。そこで、図のように1本の線をレチクル(マスク)の厚さを変えて180°位相を変えると図のように2本の線に解像する。
図3 位相シフト
図4は輪帯照明とSMO(Source Mask Optimization)である。微細パターンに対して、2光束干渉が有効に働くように斜めに照明する提案が行われ、ステッパの光源に輪帯の遮光板が挿入された。ロジックLSIのようにパターンが規則的でない場合、マスクのパターンに応じた照明パターンをコンピュータで計算するSMOが用いられる(図のSMOは筆者が適当に作成したものである)。
図4 輪帯照明とSMO(Source Mask Optimization)
図5は液浸露光機の構成である。光学レンズとフォトレジストの間を水で満たす。水は屈折率が1.4で空気の1.0より大きいので光が屈折し、実効的に解像度が1.3倍程度向上する。水が外へ漏れては論外であるが、小さな泡や水の脈理ができても像に影響するので、装置メーカーで多くの努力が払われ完成装置となった。
図5 液浸露光機の構成
- 会社名
- 厚木エレクトロニクス
- 所在地
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