1. はじめに
コロナ禍に引き続き覆われたこの1年であるが、米中摩擦が依然続く中、巣籠もり需要が引っ張って半導体市場は活況を呈する一方、主要半導体工場のいくつかの操業が中断する事態があって、特に自動車用半導体をはじめとして非常に逼迫する状況がいまなお続いている。
自動車工場が操業の一時的中止に追い込まれる事態は、世界的な政治問題となり、いまや世界の半導体製造を大きく担う台湾に増産要請が相次いだとともに、米国、欧州はじめ世界各国・地域で自己完結の半導体製造能力の強化を図っていく動きが盛んに続く現状となっている。
この1年の半導体市場の動きを振り返り、続いて、先端実装に関係する内容をジャンル分けして示していく。
2. 半導体市場のこの1年
2020年10月から2021年9月までに主に注目して、半導体市場の動きを取り出していく。それぞれの時点でのあらわし方である。
■2020年10月
*米国が中国・Huaweiに加えSMICへの輸出規制を厳格化
*「5G」に初めて対応する「iPhone」発表
*米国司法省が「検索で競争阻害」 とする独占禁止法違反でGoogleを提訴
*米国インテルがNANDフラッシュメモリ事業の韓国SK Hynixへの売却を発表
■2020年11月
*最先端の挽回を図るインテルはchiplet実装への取り組みなどの一方、先端生産を外部委託する動き
*アップルが3回目の新製品発表、こんどは注目&待望の自社開発プロセッサ「M1」搭載のMacintoshコンピュータ、「Mac」。
PowerPCからインテルに移行したのが2005年、それから15年経っての自前プロセッサへの移行
*Huaweiはこのほど低価格スマホ事業の売却を発表
*特に10月から目立つ中国の半導体関連プロジェクトの中断あるいは中止
■2020年12月
*2021年の世界半導体販売高は8.4%増の$469,4 billionと、これまでの最高、2018年の$468.9 billionを僅かながら上回る見方
*米国のGAFAはじめ巨大IT、そして新分野を引っ張る注目の各社を巡る様々な動き
*SMICの「エンティティー・リスト」入りの事態を迎える現時点
*「COVID-19」インパクトが圧し掛かってきて、当初の何もわからない段階から「第3波」の渦中に至る現時点
■2021年1月
*自前設計の動きが見られ、公正取引で一層厳しい視線が注がれるGAFAはじめ巨大IT関連の動き
*TSMCへの生産委託、そしてCEO交代とここ数日の間に相次いだインテルの動き
■2021年2月
*時あたかも活況の世界半導体市場の中で、自動車用半導体が不足、各国主要自動車メーカーが減産を迫られる事態に
*コロナ禍の需要増、米中摩擦などで半導体市場が世界的に逼迫
*TSMCが生産増強とともに我が国に後工程R&D拠点を設ける動き
*インテルの新しいCEOにPat Gelsinger氏が就いて、業界に向けた"革新の源泉"になろうと社員への訴え
■2021年3月
*Biden大統領が半導体supply chainの弾力性を高める手段を講じる大統領令に署名
*EUそして各国で同様の先端半導体の自己完結を図る動き
*中国の半導体業界団体、CSIAが米国・SIAに対し摩擦緩和に向けた半導体working groupの設立を働きかけ
*米国Texas州での大寒波による停電から、Samsungの工場が止まる
*要因が重なって世界中で深刻な需給不均衡と、自動車用半導体はじめ混乱の事態
*ルネサスエレクトロニクスでの火災が、世界のsupply chainに重なるインパクト
*インテルの最先端はもちろんファウンドリー対応を前面に押し出した"IDM 2.0"戦略
■2021年4月
*米国Biden政権が8年間で2兆ドル(約220兆円)規模のインフラ投資計画を議会に提案
*深刻さを増すグローバルな半導体の不足の問題を話し合うvirtual meetingをWhite Houseが主催
*TSMC創業者で前トップのMorris Chang(張忠謀)氏からの思いの丈を放ったと受け止める講演
■2021年5月
*TSMCから米国での工場展開とともにファウンドリー対応は台湾でと牽制するスタンス
*IBMの世界初、2-nm半導体の披露
*米国の半導体会社および主要ユーザの分野横断alliance、Semiconductors in America Coalition(SIAC)が結成
*日米連携で打開を図るべく自民党そしてJEITAから具体化に向けた取り組み&提言
*米韓首脳会談にて韓国が米国での投資を発表し、各国・地域の競合にも似た状況模様
■2021年6月
*我が国でも、政府、経済産業省、自民党そして業界と、それぞれ成長戦略の検討&打ち上げ
*自国内での半導体製造およびsupply chainの強化が、国家事業の色合いを濃くして、各国各様に展開
*インテルは、今年2月に復帰就任したCEO、Pat Gelsinger氏が新体制を発表
■2021年7月
*本年の半導体販売高$500 billion突破の予測が繰り返されるとともに、2023年には$600 billionをも突破の見方
*インテルはTSMCへの米国政府の補助金に異議を唱える主張
*Morris Chang氏が、各国の半導体自給自足への動きに警鐘
*TSMCは日本での工場建設の検討をさらに明らかにし、Samsungも米国での新工場の検討
■2021年8月
*インテルが、今度は半導体生産に関するロードマップ説明のオンラインイベント「Intel Accelerated」を開催、2025年には業界を先導する内容の展開
*$1 trillionインフラ法案が米国上院を通過、
*自動車用半導体の不足が来年まで尾を引く見方が依然あらわされる
*Hot Chipsが、新型コロナのために昨年に続いて今年もオンライン開催
■2021年9月
*インテルが欧州で2つのfabsの構想打ち上げ、そしてSamsungの米国fabの立地選定
*欧州の台湾との関係強化および自給体制の構築に向けた「欧州半導体法」の制定を目指す動き
*一方、需要一巡の兆しも
*Biden政権が半導体、自動車の業界関係トップとのvirtual White House meetingを開催。
商務長官が不足の状況について45日以内の情報提供を求める
米中摩擦がかぶさる中での日進月歩の激しい動きとなっており、2021年2月あたりから自動車用半導体の不足が表面化、Samsungそしてルネサスエレクトロニクスの工場操業中断が輪をかける状況がうかがえている。
基幹産業の自動車に減産の事態を招いて、各国・地域が他に頼らない半導体製造の強化に相次いで取り組んでいる動きが頻繁にあらわれている。
大変逼迫した状況の半導体市場は、その旺盛な需要から2021年の世界半導体販売高が、これまでの最高の2018年を上回る勢いを示している。
米国・Semiconductor Industry Association(SIA)が毎月はじめに発表している月次世界半導体販売高を、2018年1月から示すと●表1の通りである。
2016年後半から2年あまりメモリ半導体の高値が大きく引っ張って史上最高を更新し続ける勢いの熱い活況が続いた半導体業界であり、2017年には年間半導体販売高が初めて$400 billionの大台を突破して、2018年では$468.94 billionと最高を記録している。
2018年3月あたりから火がつき始めた米中通商摩擦が、双方の応酬を重ねていって半導体の世界にも微妙な懸念要因となり、米国政府が中国テレコム最大手、Huaweiへの輸出制限を厳格化、そして中国最大の半導体ファウンドリー、SMICも含める様相となって、冒頭に示す2020年10月の動きに続いていく。
2021年各月の販売高は、2018年をそれぞれ大きく上回っており、このままいけば、年間販売高が史上最高を更新することになるが、2021年8月あたりからDRAM価格が下げに転ずる兆候が見られ、巣籠もり需要が一巡かとの見方があらわれてきている。
予断を許さない中、今後の動きに注目せざるを得ない現時点である。
- 会社名
- Gichoビジネスコミュニケーションズ株式会社
- 所在地
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